第3話:顔だけ教師VS伝説の教師
【場面】
私立清風女子高等学校
【登場人物】
主人公……宮本宗助
生徒……北村芽衣〈メイ〉
生徒……栗原由衣〈ユイ〉
生徒……渡会遥香〈ハルカ〉
教師……広瀬美咲
教師……有栖川麗司
校長……浜口敏行
教頭……迫田武弘
【その他】
「」は声に出したセリフ、()は心の声です。
ト書き1つ=1コマを想定して書いていますが、必要に応じて分割してください。コマ割りや間の取り方は製作者様の判断にお任せします。
ト書き1
教壇に立つ宗助、解答用紙の束を両手で持って生徒たちに言う。
宗助
「それじゃ、この前のテストを返却する。名前を呼ばれたら取りに来るように」
生徒たち
「はーい」
ト書き2
宗助、出席番号順に解答用紙を返却していく。
ト書き3
宗助、メイの名前を呼ぶ。
宗助
「北村」
メイ
「はーい」
ト書き4
満面の笑みを浮かべたメイが、宗助の前に立つ。
ト書き5
宗助、笑顔でメイに解答用紙を手渡す。
宗助
「北村。頑張ったな」
ト書き6
解答用紙を両手で受け取ったメイ、点数を見て目を見開く。
ト書き7
メイ、振り返ってユイに話しかける。
メイ
「ユイ! 私、87点!」
ト書き8
ユイ、驚きつつも喜ぶ。
ユイ
「マジ! 凄いじゃん!」
メイ
「えっへっへ。頑張ったもん」
ト書き9
宗助、呆れたような笑顔を二人に向ける。
宗助
「二人とも、盛り上がるのは終わってからな」
メイとユイ
「はーい」
ト書き10
宗助、ユイの名前を呼ぶ。
宗助
「栗原」
ユイ
「はーい」
ト書き11
満面の笑みを浮かべたユイが、宗助の前に立つ。
ト書き12
宗助、笑顔でユイに解答用紙を手渡す。
宗助
「栗原。お前が最高点だ」
ユイ
「えっ?」
ト書き13
解答用紙を両手で受け取ったユイ、点数を見て目を見開く。
ト書き14
ユイ視点。受け取った解答用紙を見る。
ユイ
「ひゃ……100点?」
ト書き15
クラス中から歓声が響き、拍手が起こる。
メイ
「ユイ! 凄いじゃん!」
ト書き16
ユイ、拍手する生徒たちを見渡し、照れくさそうに笑う。
ト書き17
宗助、笑顔で生徒たちに言う。
宗助
「今回のテストは皆いい点だった。自慢していいぞ」
ト書き18
宗助、解答用紙の返却を続ける。
ト書き19
宗助の手が止まる。
ト書き20
宗助視点。ハルカの解答用紙。点数は0点。
宗助
(渡会……)
ト書き21
宗助、ハルカの名前を呼ぶ。
宗助
「渡会」
ハルカ
「はい」
宗助
(本格的に嫌われたか……)
ト書き22
清風女子高の外観を描写。
※時間経過
ト書き23
宗助、職員室の椅子に座り、震えながらテスト結果の一覧表を見る。
ト書き24
宗助視点。一覧表には、一組の平均点(32.6)、二組の平均点(39.7)、三組の平均点(27.5)が書いてある。
宗助
(日本史があんなに高得点だったのに……)
ト書き25
宗助の隣に座る広瀬美咲(三年二組の担任)、心配そうに宗助に声をかける。
広瀬
「宮本先生?」
宗助
「えっ?」
ト書き26
広瀬、宗助の顔を覗き込む。
広瀬
「大丈夫ですか? 顔色が悪いですけど……」
宗助
「だ、大丈夫です」
ト書き27
広瀬、にこりと笑う。
広瀬
「三組、いろいろあって大変だと思いますけど、無理しないでくださいね」
宗助
「ありがとうございます……」
ト書き28
宗助、口元に手を添えて考え込む。
宗助
(北村と栗原に聞いてみるか)
ト書き29
昼食時。宗助、メイ、ユイの三人が屋上で弁当を食べている。
メイ
「だって、日本史しか勉強してないもん」
宗助
「へっ?」
ト書き30
宗助、唖然とした表情でメイとユイを見るが、二人は悪びれもせず話す。
メイ
「ユイもだよね?」
ユイ
「当たり前でしょ。他の教科なんかやる意味ないし」
ト書き31
宗助、おそるおそる二人に尋ねる。
宗助
「その……何で他の教科はやる意味がないんだ?」
ト書き32
メイとユイ、きょとんとした表情で宗助を見る。
ト書き33
メイとユイ、けらけらと笑う。
メイ
「宮本先生じゃないもん」
ユイ
「数学の青木の話なんか、聞いてらんないし」
ト書き34
宗助、笑い続けるメイとユイを見て、呆然とする。
宗助
(俺は、一人で舞い上がってただけだったのか……)
ト書き35
清風女子高を描写。
宗助
(けど、どうすれば……)
ト書き36
校長室。ソファに深く座る有栖川麗司、脚を組み、片手に持った書類に目を落とす。
※顔は見せない
麗司
「上がったのは日本史だけ……ですか」
ト書き37
麗司、テーブルの上に書類を乱雑に投げ出す。浜口の隣に立つ迫田がフォローする。
※顔は見せない
麗司
「話になりませんね」
迫田
「ま、まあ、彼はまだ二年目だから……」
ト書き38
麗司の背中から、机の上で手を組む校長の浜口を描写。
※麗司の顔は見せない
浜口
「こうなることは私も予想しておりました」
ト書き39
脚を組み、ふてぶてしく座る麗司を描写。
※首から下だけで、顔は見せない
浜口
「だからあなたを呼んだのですよ……有栖川先生」
ト書き40
麗司、テーブルの上の書類を指でトントンと叩く。
※テーブルと麗司の腕周辺を描写し、麗司の顔は見せない
麗司
「宮本宗助……この男の力では、これ以上の成果は出せないでしょう」
ト書き41
テーブルの上の書類。宗助の顔写真入りの履歴書が置いてある。
麗司
「顔がいいだけの男ではね」
ト書き42
三年三組の教室。宗助が教壇に立ち、黒板に板書している。
宗助
「で、この二・二六事件の首謀者たちは――」
ト書き43
教室の引き戸が開く音がし、宗助が振り返る。
ト書き44
宗助視点。教室後ろの入口から、浜口が入ってくる。生徒たちも一斉に注目する。
宗助
(校長……?)
ト書き45
浜口の後ろから、麗司が入ってくる。生徒たちがざわざわと騒ぎ始める。
ト書き46
麗司の全身。浜口とともに教室の後ろに立ち、不敵な笑みを浮かべて宗助を見る。
※麗司の顔を初めて描写
ト書き47
宗助と麗司の顔のアップ。視線がぶつかり合う。
ト書き48
宗助、浜口に話しかける。
宗助
「あの……校長先生?」
浜口
「あー。いいからいいから。続けてくれ」
ト書き49
宗助、怪訝な顔をしつつ振り返り、授業を続ける。
宗助
「昭和天皇の説得によって、このクーデターは失敗に――」
ト書き50
麗司、ポケットに手を突っ込み、不敵な笑みを浮かべたまま宗助を見続ける。
宗助
(誰だよ……あのオッサン……)
ト書き51
宗助、黒板に板書する。
※時間経過
宗助
(只者じゃなさそうだけど……)
ト書き52
麗司、くすりと笑う。
麗司
「校長……もういいでしょうか?」
浜口
「ん?」
ト書き53
浜口、額に汗を浮かべて麗司に問う。
浜口
「有栖川君……何をする気だね?」
ト書き54
麗司、くすくす笑いながら、ゆっくりと前に歩きだす。
麗司
「あの男に教えてあげるのですよ」
ト書き55
宗助に歩み寄る麗司の背中を描写。
麗司
「本物の授業ってやつをね」
ト書き56
教壇にやって来た麗司、宗助と向かい合う。
ト書き57
宗助、笑みを浮かべる麗司に問いかける。
宗助
「あの……あなたは?」
ト書き58
麗司、くすっと笑う。
麗司
「くだらん授業だ」
ト書き59
麗司、宗助に背中を向ける。
麗司
「宮本宗助……君の授業は実にくだらん」
ト書き60
宗助、額に汗を浮かべて尋ねる。
宗助
「ど……どういうことですか?」
ト書き61
麗司、笑みを浮かべて振り返り、宗助を見る。
麗司
「教えて欲しいかね?」
ト書き62
宗助、睨みつけるような視線を麗司に向ける。
宗助
「はい……教えてください」
ト書き63
麗司、くすくすと笑い、生徒たちに目を向ける。
麗司
「君の目は、黒板と教科書を往復している。生徒たちの顔を見ていない」
ト書き64
麗司、勝ち誇ったような顔を宗助に向ける。
麗司
「違うかな?」
ト書き65
宗助、図星を突かれ、下を向く。
宗助
(くっ……)
ト書き66
麗司、両手をポケットに突っ込み、宗助に近付く。
麗司
「授業とはライブだ。最も重要なのは、観客の反応――」
ト書き67
麗司、青白い顔をして下を向く宗助に、冷酷な視線を向ける。
麗司
「君の授業……まるでレコーディングだね」
ト書き68
麗司の顔のアップ。
麗司
「宮本宗助。俺が本物の授業を見せてやる」
ト書き69
麗司、教室の後ろを指差す。
麗司
「君は邪魔にならないところに立ってろ」
ト書き70
宗助、とぼとぼと教室を歩き、浜口の隣に立つ。
ト書き71
浜口、小声で宗助に話しかける。
浜口
「だいぶキツいこと言われてたけど、気にしなくていいよ」
ト書き72
宗助視点。シャツの腕を捲る麗司を描写。
宗助
「あの人……誰なんですか?」
ト書き73
浜口、神妙な顔で答える。
浜口
「彼の名は有栖川麗司。数多くの予備校や私立高校を渡り歩き、その全てで合格率を九十パーセント以上に引き上げてきた、いわば――」
ト書き74
宗助視点で麗司を描写。麗司が大きく柏手を打ち、乾いた音が響く。
浜口
「伝説の教師だよ」
ト書き75
麗司、目を瞑ってふうっと息を吐く。
ト書き76
麗司、カッと目を見開く。
ト書き77
麗司、生徒たちに話しかける。
麗司
「これから、本物の授業を始める」
ト書き78
宗助、ごくりと唾を飲み込む。
麗司
「教科書の167ページを開け」
ト書き79
麗司、驚きで目を見開く。
ト書き80
見開き。麗司視点で生徒たちを描写。全員が不満げな表情で横を向いている。
※ハルカはいつも通り、顎に手を乗せて外を見ている
ト書き81
麗司、額に汗を浮かべ、うろたえる。
麗司
「ど、どうした? 授業は始まってるぞ」
ト書き82
メイとユイが立ち上がる。
メイ
「帰る」
ユイ
「マジ最悪。何なのあのオヤジ」
ト書き83
メイとユイに続いて、ハルカを除いた生徒たち全員が立ち上がる。
ト書き84
メイとユイを先頭に、生徒たちが教室前の入口から出て行く。
麗司
「こ、こら……」
ト書き85
浜口の隣に立つ宗助、はっとした顔になる。
ト書き86
宗助、後ろの入口から教室を出て、生徒たちを追いかける。
宗助
「お、お前ら……」
ト書き87
宗助視点で、廊下を歩く生徒たちを描写。
宗助
「待て!」
ト書き88
生徒たちを追い抜いた宗助、先頭を歩くメイとユイに話しかける。
宗助
「授業中だぞ! いきなり帰るなんて――」
メイ
「あんな奴の授業、聞きたくない!」
ト書き89
生徒たちが宗助に不満をぶつける。
宗助
「聞きたくないって……」
生徒たち
「アイツ、先生を馬鹿にしたじゃん!」
「あのオヤジが担任になったら、学校辞めるからね!」
ト書き90
三年二組の教室から、広瀬が出てくる。
広瀬
「あの……大丈夫ですか?」
宗助
「す、すいません! お騒がせして!」
ト書き91
宗助、生徒たちに話しかける。
宗助
「不満があるのは分かる。けど、あのオジサンも頑張ってるんだ。あと二十分だけ、教室に座っててくれないか?」
ト書き92
生徒たち、ばつが悪そうな顔をする。
生徒たち
「まあ……先生が言うなら……」
ト書き93
宗助、生徒たちを連れて教室に戻り、麗司に謝る。
宗助
「す、すいませんでした」
ト書き94
ユイが振り返り、宗助に言う。
ユイ
「先生は悪くないでしょ! 悪いのはあのオヤジ!」
宗助
「そ……そんなことを本人の前で言うな」
ト書き95
麗司、顔を真っ赤にして生徒たちに話しかける。
麗司
「そ、それでは席に着け。授業を再開する」
ト書き96
麗司、板書をしながら考える。
麗司
(負けた……)
ト書き97
麗司視点で、浜口の隣に立つ宗助を描写。
麗司
(この俺が、顔がいいだけの青二才に……)
ト書き98
清風女子高の外観を描写。終了のチャイムが鳴る。
麗司
(これが、底辺校の実態……)
ト書き99
ハルカを除く生徒たちが一斉に席を立つ。
生徒たち
「先生ー!」
ト書き100
生徒たち、宗助のもとに殺到する。
生徒たち
「ウチら、頑張ったよ!」
「疲れたー! マッサージして!」
ト書き101
麗司、生徒たちに囲まれ、困った表情をする宗助を呆然と眺める。
麗司
(不本意だが、宮本宗助……)
ト書き102
麗司の顔のアップ。決意を込めた表情。
麗司
(貴様の力を借りなければならんようだな)




