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第2話:イケメンでも上手くいかないことはある

【場面】

私立清風女子高等学校~近隣の繁華街


【登場人物】

主人公……宮本宗助

生徒……北村芽衣〈メイ〉

生徒……栗原由衣〈ユイ〉

生徒……白石真里菜〈マリナ〉

生徒……津崎聖子〈ショーコ〉

生徒……渡会遥香〈ハルカ〉

教頭……迫田武弘


【その他】

「」は声に出したセリフ、()は心の声です。

ト書き1つ=1コマを想定して書いていますが、必要に応じて分割してください。コマ割りや間の取り方は製作者様の判断にお任せします。


ト書き1

早朝。靄のかかった公園を描写。


ト書き2

公園の中、ジャージを着て走る宗助を描写。


ト書き3

宗助、呼吸を荒くし、公園のベンチの前で立ち止まる。


ト書き4

宗助、膝に手を置き、呼吸を整えながら考える。

宗助

(こんなに走ったの……何年ぶりだ?)


ト書き5

宗助、ストレッチをしながら考える。

宗助

(これを週五日って……相当キツいな)


ト書き6

自宅アパートに戻って、朝食の準備をする宗助。シリアルの袋の裏面、成分表示を確認する。

宗助

(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン……)


ト書き7

宗助、シリアルを計量しながら考える。

宗助

(きれいになるのって、大変なんだな……)


ト書き8

朝の清風女子高の校舎を描写。


ト書き9

宗助、周囲の女子生徒たちの注目を集めながら廊下を歩く。

宗助

(北村芽衣と栗原由衣……)


ト書き10

宗助、罵声を浴びせてくるメイとユイを想像し、不安に顔を曇らせる。

宗助

(昨日の《《宮本》》の正体が《《宮田》》だって分かったら……)

メイ(想像)

「ええっ! 私、触っちゃったよ!」

ユイ(想像)

「マジ最悪! キモ過ぎるんだけど!」


ト書き11

三年三組の教室の入り口前に立つ宗助を背中から描写。

宗助

(けど、行くしかない)


ト書き12

宗助、目を伏せて深呼吸する。


ト書き13

宗助、教室の引き戸を開ける。


ト書き14

宗助視点で教室内を描写。全員が着席し、宗助に目を向けている。

 ※津崎聖子(ショーコ)は休み、渡会遥香(ハルカ)は窓の外を見ている


ト書き15

宗助、普段の教室(席はガラガラ、少数の生徒がスマホ片手に談笑)を回想し、唖然とする。

宗助

(これって……)


ト書き16

最前列に座るメイが宗助に笑顔で話しかけてくる。隣に座るユイがプッと吹き出す。

メイ

「おはよー、宮(・)本(・)先(・)生(・)」


ト書き17

宗助、額に汗を浮かべながら挨拶を返す。

宗助

「あ、ああ。おはよう」


ト書き18

宗助、無言で教壇の前に立ち、生徒たちに目を向ける。

宗助

「え……えっと……」


ト書き19

ユイがからかうように言う。

ユイ

「先生、最初に出欠でしょ?」


ト書き20

宗助、慌てて出欠票に目を落とす。

宗助

「そ、そうだな。すまない」


ト書き21

宗助、出席番号一番から名前を読み上げる。生徒たちが元気に返事をする。

宗助

「足立。飯田。江本……」

名前を呼ばれた生徒たち

「はーい」「はーい」「はーい」


ト書き22

宗助の顔のアップ。目が潤んでいる。

宗助

(ヤバい……泣きそうだ……)


ト書き23

宗助、白石真里菜〈マリナ〉の名を呼ぶ。マリナは甘えたような声で返事をする。

宗助

「白石――」

マリナ

「は~い」


ト書き24

座っているマリナを描写。わざとらしく胸を机に乗せ、頬杖をついて宗助に妖しい視線を送っている。


ト書き25

宗助、他の生徒とは明らかに違う反応を見せるマリナに一瞬たじろぐ。

宗助

(白石真里菜……)


ト書き26

宗助、出欠確認を続ける。

宗助

「田川。谷本……」

名前を呼ばれた生徒たち

「はーい」「はーい」

宗助

(学校では大人しくしてるが……あまり良い噂は聞かない)


ト書き27

宗助、ショーコの名を呼ぶが、返事はない。

「津崎――」


ト書き28

宗助視点で、空席となっているショーコの席を描写。

宗助

(今日も休みか……)


ト書き29

宗助、ショーコの姿をイメージ。

宗助

(家庭環境が良くないって聞いたけど……)


ト書き30

出欠確認が続き、最後の生徒、ハルカの名を呼ぶ。

「渡会――」

ハルカ

「はい」


ト書き31

座っているハルカを描写。窓際の席で、手に顎を乗せ、ボーっと外を眺めている。

宗助

(渡会遥香……)


ト書き32

宗助、出欠票から顔を上げ、生徒たちに言う。

宗助

「それじゃ、朝のホームルームを始める。学校からの連絡は――」

宗助

(この子も、学校では大人しくしているが……)


ト書き33

昼前の清風女子高の校舎を描写。

 ※時間経過


ト書き34

三年三組の授業風景。宗助、教壇に立って板書をしている。日露戦争前後に関する授業。

宗助

「で、日清戦争で得た遼東半島の所有権を巡って――」

メイ

「先生ー」


ト書き35

宗助、振り返ってメイを見る。

宗助

「北村、質問か?」

メイ

「そうじゃなくって――」


ト書き36

メイ、満面の笑みを浮かべて話す。

メイ

「語呂合わせで教えて欲しいなって」


ト書き37

宗助、予想外の発言にたじろぐ。

宗助

「ご……語呂合わせ?」


ト書き38

メイの意見に、隣に座るユイが同調。

メイ

「ウチらバカだからぁ、普通の方法じゃ覚えられなくって――」

ユイ

「分かる! 私もそっちがいい!」


ト書き39

クラス中が同調し始め、宗助が焦る。

 ※セリフはなく、「だよねー」などといった書き込みのみ

宗助

(まずい。語呂合わせなんて知らないぞ)


ト書き40

宗助、額に汗を浮かべて言う。

宗助

「わ……分かった」


ト書き41

宗助、ぎこちない笑顔を生徒たちに向ける。

宗助

「明日から、テストに出すところは全部語呂合わせを考えてくる。それでいいか?」


ト書き42

生徒たち、歓喜の声を上げる。

生徒たち

「お願いしまーす!」


ト書き43

宗助、笑いながら話す。

宗助

「その代わり、テストはちゃんと頑張るんだぞ」

生徒たち

「はーい!」

宗助

(教師やってて良かった……)


ト書き44

時間が経過し、授業終了。教室から出て行こうとする宗助を、メイとユイが呼び止める。

メイとユイ

「先生ー!」


ト書き45

宗助、振り返って二人を見る。二人とも手に弁当を持っている。

宗助

「どうした?」


ト書き46

メイとユイ、弁当を見せながら宗助に話しかける。

メイ

「お昼、一緒に食べよ!」

ユイ

「先生はお弁当?」


ト書き47

宗助、狼狽えながら答える。

宗助

「あ、ああ。今日から作ることにしたんだ」

メイ

「本当? すごーい!」


ト書き48

メイとユイ、宗助の腕を掴んで引っ張る。

メイ

「ウチら、いい場所知ってるんだよ」

ユイ

「静かなところ。先生にも教えてあげる」


ト書き49

宗助、額に汗を浮かべながら答える。

宗助

「わ、分かったから、引っ張らないでくれるか」

宗助

(チャンスだ)


ト書き50

宗助を中心に歩く三人を後ろから描写。

宗助

(クラスのことを聞き出そう)


ト書き51

屋上へ移動。ドアの付近に立つ三人を描写。

宗助

「屋上って……立入禁止じゃなかったか?」


ト書き52

メイとユイ、悪びれる様子もなく歩きだす。

メイ

「いっつも開いてるもん」

ユイ

「悪いことするわけじゃないし」

宗助

(……ま、いっか)


ト書き53

三人、向かい合って座り、弁当を開ける。宗助の弁当を見たメイが驚く。

メイ

「わっ! 先生、何そのお弁当!」


ト書き54

宗助の弁当のアップ。米は少なめで、蒸した鶏肉、トマト、ブロッコリーが入っている。

宗助

「何って……変か?」

ユイ

「ボディビルダーの食事みたい……」


ト書き55

宗助、苦笑しながら答える。

宗助

「ある人からアドバイスを貰ってな。健康のために、こんな弁当にしたんだ」

メイ

「すごい……」


ト書き56

ユイ、笑いながら卵焼きを箸で掴む。メイは心配そうに宗助を見る。

ユイ

「ウチらじゃ無理だわ」

メイ

「先生、普通のご飯が食べたくなったらいつでも言ってね」


ト書き57

三人で食事をしながら、宗助が話を切り出す。

宗助

「ところでさ――」

メイとユイ

「ん?」


ト書き58

宗助、躊躇しつつ話す。

宗助

「点呼のときの話だけど……ちょっと、白石の様子が気になったんだよな」


ト書き59

メイとユイ、顔を見合わせる。


ト書き60

メイ、小さく溜息をついて話す。

メイ

「やっぱり、先生も気付いてたんだ」

宗助

「やっぱり?」


ト書き61

ユイ、宗助に目を向けて話す。

ユイ

「先生はマリナが一年だったときのこと、知らないでしょ」

宗助

「な……何かあったのか?」


ト書き62

メイとユイ、歯切れが悪い様子で話す。横川(若いイケメンの体育教師)を回想。

ユイ

「うん。ウチらが一年だった頃、横川って若い男の先生がいたんだけど――」

メイ

「マリナに手を出して、クビになっちゃったのよ」


ト書き63

宗助、ごくりと唾を飲み込む。

ユイ

「一応、マリナは被害者ってことになってるけど――」

メイ

「みんな知ってるよね。マリナが横川先生を誘ったって」


ト書き64

宗助、呆然と今朝のマリナの様子を思い出す。

宗助

(あの視線……そういう意味だったのか……)

メイ

「先生、気を付けてね」

ユイ

「先生がいなくなったら、ウチらも学校辞めるから」


ト書き65

宗助、慌てて話題を変える。

宗助

「それと、津崎のことも気になるんだけど」

メイ

「津崎って?」

ユイ

「ショーコでしょ」


ト書き66

宗助、話を続ける。メイが上着のポケットからスマホを取り出す。

宗助

「ああ。休みがちだし、ちゃんと卒業できるか――」

ユイ

「あの子は大丈夫よ」


ト書き67

メイ、スマホを操作し、宗助に画面を向ける。

メイ

「ほら」


ト書き68

メイのスマホの画面。猫耳のついたパーカーをかぶり、マスクを着けた少女がゲーム配信をしている。

宗助

「これ……もしかして津崎か?」


ト書き69

メイとユイ、口々に答える。

メイ

「そう。格ゲーガールSHOKO」

ユイ

「けっこう有名だよね。再生数も多いし」


ト書き70

宗助、ぽかんと口を開けて、スマホの画面を見続ける。

宗助

(かなり上手いぞ……)

メイ

「ウチらもたまにダンス動画とか上げるけどさぁ」

ユイ

「全然伸びないよね」


ト書き71

宗助、呟くように言う。

宗助

「あいつ……プロゲーマーにでもなるつもりか?」

メイ

「あー! そうかも!」

ユイ

「いいよね。ゲームで生きてけるなんてさ」


ト書き72

宗助、再び話題を変える。

宗助

「それと、もう一人だけ聞いていいか?」

メイ

「うん。いいよ」


ト書き73

宗助、今朝のハルカの様子を思い出しながら尋ねる。

宗助

「渡会だけど――」

メイ

「ああ、あの子はダメ」


ト書き74

宗助、ぎょっとする。

宗助

「ダメ? 何が――」

メイ

「話したことないもん」

ユイ

「ていうか、誰とも話さないよね」


ト書き75

宗助、質問を続ける。

宗助

「誰とも? 一回もないのか?」

メイ

「用があるときは話すけど……」

ユイ

「いっつも『うん』とか『分かった』だけ」


ト書き76

宗助、眉間に皺を寄せる。

宗助

(誰とも話さずに、二年間も……)

メイ

「同じ中学の子もいないしさ」

ユイ

「ホント、謎過ぎるよね」


ト書き77

宗助、マリナ、ショーコ、ハルカの三人の顔を思い出す。

宗助

(このままってわけにはいかないよな……)


ト書き78

場面変わって、放課後。廊下を歩く宗助、教頭の迫田に呼び止められる。

迫田

「宮本先生!」


ト書き79

振り返った宗助に、迫田が話しかける。

迫田

「今から帰るところかね?」

宗助

「あ、いえ。今日は街を見回る日なので……」


ト書き80

迫田、笑顔で手を振りながら去っていく。

迫田

「そうか。ナンパされないように気を付けたまえ」

宗助

「はは……ありがとうございます」


ト書き81

校門を出た宗助、ふと顔を上げる。


ト書き82

校門から通りを挟んだ向かいで、マリナがバイクに乗った不良風の男と話している。

宗助

(あれは――)


ト書き83

宗助視点。マリナ、ヘルメット(半キャップ)をかぶり、バイクの後ろに座る。宗助、慌てて声をかける。

宗助

「し、白石!」


ト書き84

宗助に名前を呼ばれたマリナ、笑顔で手を振る。

マリナ

「先生! ばいばーい!」


ト書き85

宗助、走って近寄ろうとするも、マリナと不良風の男は一足早くバイクで去っていく。

宗助

「白石! 待て!」


ト書き86

宗助、遠くなっていくマリナの後ろ姿を呆然と眺める。


ト書き87

宗助、頭を掻きながら振り返る。

宗助

(仕方ない。詳しい事情は明日聞くか)


ト書き88

繁華街に移動した宗助、ゲーセンの前にオタク風の男たちが集まっているのを見かける。

宗助

(ん?)


ト書き89

宗助視点。人だかりの中、ショーコが格ゲーの筐体に座ってゲームをしている。

宗助

(津崎?)

オタク風の男たち

「SHOKO様、今日もヤバいな」

「さっきのコンボ、普通できねえだろ」


ト書き90

宗助、人だかりで近付けないため、ショーコを大声で呼ぶ。

宗助

「つ、津崎! 宮本だ! お前、学校休んで何やって――」


ト書き91

オタク風の男たち、ショーコを守るように立ちはだかり、宗助を睨む。

オタク風の男たち

「何だこいつ?」

「SHOKO様がプレイ中だぞ。静かにしろよ」


ト書き92

宗助、反論するも、大勢に囲まれる。

宗助

「俺はその子の担任だ。悪いが、連れて帰らせてもらうぞ」

オタク風の男たち

「はあ? 何言ってんだよ」

「そう言ってナンパする気なんだろ」


ト書き93

オタク風の男たちが、大声を出し始める。

オタク風の男たち

「帰れよ! イケメン!」

「SHOKO様は俺たちの女神! 他の女引っ掛けてろよ!」


ト書き94

宗助、たまらず退散する。

宗助

(仕方ない。こっちも明日だ)


ト書き95

宗助、帰り道で公園に寄る。日が落ち、あたりは薄暗くなっている。

宗助

(疲れた……)


ト書き96

宗助、何かに気付いて顔を上げる。

宗助

(あれは――)


ト書き97

宗助視点。公園のベンチに腰掛け、ハルカが一人で煙草を吸っている。

宗助

(渡会?)


ト書き98

宗助、ハルカの元に走り寄る。

宗助

「渡会!」


ト書き99

息を切らして近付いてきた宗助を見て、ハルカが小さく笑う。

宗助

「お前、何やって――」

ハルカ

「何って……ボーッとしてるだけ」


ト書き100

宗助、大声を出す。ハルカ、悪びれる様子もなく、火のついた煙草を宗助に見せる。

宗助

「そうじゃなくて! それ――」

ハルカ

「これのこと?」


ト書き101

ハルカ、くすくす笑いながら宗助に話しかける。

ハルカ

「先生……私、停学?」


ト書き102

宗助、引き締まった表情で答える。

宗助

「いや、学校には話さない」

ハルカ

「どうして?」


ト書き103

宗助、ハルカの顔を真っ直ぐに見つめて言う。

宗助

「罰を与える気はない。お前が止めてくれれば、それでいいんだ」


ト書き104

ハルカ、一瞬だけきょとんとする。


ト書き105

ハルカ、くすくす笑いながら立ち上がる。

ハルカ

「先生……変わったね」


ト書き106

ハルカ、宗助に背を向ける。

ハルカ

「けど……私は、前の先生の方がよかったな」

宗助

「ど……どういうことだ?」


ト書き107

ハルカ、振り返り、睨むような鋭い視線を宗助に向ける。

ハルカ

「熱血教師は嫌いなの」

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