第1話:イケメン教師、爆誕
【場面】
私立清風女子高等学校~宗助の自宅アパート
【登場人物】
主人公……宮本宗助
生徒……北村芽衣 〈メイ〉
生徒……栗原由衣 〈ユイ〉
美容家……スカーレット・雅
教頭……迫田武弘
校長……浜口敏行
【その他】
「」は声に出したセリフ、()は心の声です。
ト書き1つ=1コマを想定して書いていますが、必要に応じて分割してください。コマ割りや間の取り方は製作者様の判断にお任せします。
ト書き1
昼下がりの私立清風女子高等学校(以下、清風女子高)の全景を描写。
ト書き2
教室の一室。派手な髪、制服を着崩した女子たちが、スマホを片手に談笑している。
※セリフはなく、『ウケるー』『ヤバくない?』などといった書き込みのみ
ト書き3
主人公、宮本宗助(黒の野暮ったい長髪、お洒落ではない銀縁眼鏡、猫背、青白い顔)が授業資料を抱え、溜息をつきながら廊下をとぼとぼと歩いている。
ト書き4
宗助の回想。テストの問題を描写。
(問)次の中から、江戸幕府を開いた人物を選び、記号で答えなさい。
㋐徳川家康
㋑フランシスコ・ザビエル
㋒ナポレオン・ボナパルト
㋓ガイウス・ユリウス・カエサル
宗助
(あの問題で正解率が四割って……)
ト書き5
背中を丸めて歩く宗助を後ろから描写。
宗助
(次のテスト、どんな問題出せばいいんだよ……)
ト書き6
宗助、壁にぶつかる。
宗助
「あたっ!」
ト書き7
宗助がぶつけた鼻を押さえていると、背後から冷ややかな笑い声が聞こえてくる。
ト書き8
振り返った宗助の視線の先。北村芽衣〈メイ〉と栗原由衣〈ユイ〉が、冷ややかな視線を向けている。
メイ
「あたっ! だって。ダッサ」
ユイ
「ウチらの担任、マジ最悪よね」
ト書き9
メイとユイ、笑いながら去っていく。
メイ
「あいつの名前、なんだっけ?」
ユイ
「宮田とか宮村とか……そんな感じじゃなかった?」
ト書き10
宗助、去っていく二人の背中を見ながら考える。そこへ教頭の迫田武弘が現れる。
宗助
(宮本なんだが……)
迫田
「宮本先生!」
ト書き11
宗助、名前を呼ばれて振り返る。
宗助
「教頭先生。どうされました?」
迫田
「いやあ、探したよ」
ト書き12
迫田、宗助に言う。
迫田
「校長が君を呼んでるんだ。一緒に来てくれないか?」
宗助
「えっ? 僕を?」
ト書き13
宗助、迫田の後ろについて、校長室へ歩いていく。
迫田
「それがどうも、かなり大事な用件らしくてね」
宗助
「はあ……」
宗助
(何もやらかしてないはずだけど……)
ト書き14
校長室の前に着いた迫田と宗助。迫田が校長室のドアをノックし、中にいる校長の浜口敏行が返事をする。
迫田
「校長。宮本先生をお連れしました」
浜口
「おお。入ってくれ」
ト書き15
迫田がドアを開け、宗助に先に入るように促す。
迫田
「ほら。先に入って」
宗助
「し、失礼します……」
ト書き16
宗助視点で校長室内を描写。浜口が椅子に座り、その隣には美容家のスカーレット・雅(派手な女装をした男性)が腕を組んで立っている。
宗助
(え……?)
ト書き17
浜口、笑顔で宗助に話しかける。宗助は雅の異様な風貌に圧倒されている。
浜口
「急に呼び出して悪かったね」
宗助
「い、いえ……」
宗助
(誰……?)
ト書き18
浜口、雅に手を向け、宗助に問う。
浜口
「宮本君は、こちらの方を知っているかな?」
宗助
「いや……存じておりません……」
宗助
(知ってるわけねえだろ……)
ト書き19
紹介しようとする浜口を、雅が手で制止する。
浜口
「この方は――」
雅
「待って。自己紹介するわ」
ト書き20
雅、ドレスの胸元から名刺を一枚取り出し、宗助に手渡す。
宗助
(何であんなところから……)
ト書き21
宗助、差し出された名刺を両手で持ち、目を落として読む。
宗助
「美容家……スカーレット・雅〈まさ〉……?」
雅
「雅〈みやび〉よ」
ト書き22
雅、宗助の周囲を回りながら、至近距離からジロジロと見つめてくる。
宗助
(な……何この人?)
浜口
「雅先生は著名な美容家でね。雑誌に連載を持ってて、テレビにも出たことがある――」
ト書き23
雅、振り返って浜口に目を向ける。
雅
「そんなことより、先に趣旨を話したら? この子、戸惑ってるわよ」
浜口
「お、おお。そうだね。宮本君、座ってくれ」
ト書き24
宗助がソファに座る。浜口、机の上で手を組んで話しかける。
浜口
「君も知っているだろうが、我が清風は県内最底辺の私立高校だ」
ト書き25
イメージ映像。ネット掲示板。
浜口
「男子がいないから、妊娠せずに卒業できることが唯一の利点……なんて言われている」
ト書き26
イメージ映像。キャバクラの店内。
浜口
「卒業生の半分は水商売や風俗産業に就職……十月頃になると、校門の前をスカウトの連中がうろついてる始末だ」
ト書き27
浜口、前のめりになり、真剣な目を宗助に向ける。
浜口
「宮本君。この状況、何とかしたいと思わんかね?」
宗助
「え、ええ。そりゃあ――」
ト書き28
浜口、背もたれに体を預け、溜息をつく。
浜口
「しかし……再生への道は険しい」
ト書き29
イメージ映像。ギャルの集団。
浜口
「相手は年頃の少女。我々が何を言っても、気持ち悪いの一言で終わりだ」
宗助
「確かに……」
ト書き30
浜口、目を輝かせて言う。
浜口
「そこで! 雅先生に相談したのだよ!」
宗助
(何でだよ……)
ト書き31
不敵な笑みを浮かべる雅の全身を描写。
浜口
「雅先生は凄腕の美容家……男も女も、美しく変身させるプロだ」
ト書き32
宗助、呆然と雅を見上げる。
宗助
(変身させるって……)
ト書き33
宗助、はっとして浜口を見る。
宗助
「も、もしかして!」
雅
「その通りよ」
ト書き34
雅、宗助の隣に座り、妖しい笑顔で見つめる。
雅
「校長は気付いたのよ。十代の女の子に話を聞いてもらうには、相応の容姿が必要だということにね」
ト書き35
呆然とする宗助に、雅が話し続ける。
雅
「そこで、白羽の矢が立ったのがアナタ」
ト書き36
宗助、浜口に目を向ける。
宗助
「な、何で僕が――」
雅
「素材がいいのよ」
ト書き37
にやりと笑う雅の顔のアップ。
雅
「気付いてないみたいだけど、アナタ、磨けば光るタイプよ」
ト書き38
呆然とする宗助に、浜口が話しかける。
浜口
「『清風女子高等学校再生計画』……まずは君の容姿を変える」
ト書き39
宗助、はっとして雅に目を向ける。雅はくすくすと笑う。
宗助
「も、もしかして整形――」
雅
「聞いてなかったの? 素材がいいんだから、そんなことしなくていいわ」
ト書き40
雅、テーブルの上に置いた巨大なトランクを開ける。中には大量のメイク道具。
雅
「それに、整形は私の流儀に反する」
ト書き41
雅、トランクの中から一本の鋏を取り出す。
雅
「その人が持っている美しさを引き出す……それが私のやり方よ」
ト書き42
宗助、ごくりと唾を飲み込む。
雅
「時間が惜しい。始めるわ」
ト書き43
カット用のケープを巻き、パイプ椅子に座った宗助を背中側から描写。
雅
「まずは髪ね」
ト書き44
雅、話しながら宗助の髪を切っていく。
雅
「お洒落でなくてもいいの。大事なのは清潔感……どんなにブサイクでも、清潔感があれば嫌われることはないわ」
ト書き45
雅、宗助の眉毛を整える。
雅
「眉毛は顔の印象を決めるパーツ……女性はここで男性の性格を見抜くのよ」
ト書き46
雅、宗助の顔にファンデーションを塗る。
雅
「顔色は健康度のバロメーター……メスは無意識のうちに、健康的なオスに惹かれるものなの」
ト書き47
浜口と迫田、雅の手によって変身していく宗助を興味深そうに見つめる。
迫田
「校長。これは――」
浜口
「うむ。予想以上の仕上がりだ」
ト書き48
雅、宗助から少し距離をとり、満足げに呟く。
雅
「できたわ」
ト書き49
迫田から鏡を手渡された宗助、自身の顔を見て驚く。
宗助
(だ……誰だこれ……?)
ト書き50
雅、腕を組んで話す。
雅
「速水涼介風よ」
宗助
「それって確か、アイドルの……」
ト書き51
笑顔の雅とイメージ映像。ステージ上で歌う大人気アイドル、速水涼介。
雅
「ええ。顔の骨格が近いから、寄せてみたわ」
宗助
「は、はあ……」
宗助
(嘘だろ……)
ト書き52
浜口と迫田、満足げに並んで拍手をする。
浜口
「素晴らしい! あなたにお願いして正解でした!」
ト書き53
迫田、にやりと笑い、浜口に目を向ける。
迫田
「校長。せっかくなので……」
浜口
「ん?」
ト書き54
迫田視点で宗助を描写。
迫田
「宮本先生に、校内を一周してもらってみては?」
ト書き55
浜口、ぱあっと顔を明るくする。
浜口
「おお! それがいい! 早速――」
雅
「ちょっと待って」
ト書き56
雅視点で、不安そうにしている宗助を描写。
雅
「彼はまだ完成していない。表情、姿勢、筋肉量、服装……解決しないといけない問題が山積みよ」
ト書き57
迫田、興味深そうに宗助を見る。雅、胸元からUSBメモリを取り出す。
迫田
「しかし、我々から見れば十分すぎるほど――」
宗助
(またあそこから……)
ト書き58
雅、取り出したUSBメモリを宗助に見せる。
宗助
「それは……」
雅
「計画書よ」
ト書き59
雅、笑顔で宗助に話しかける。
雅
「美容の道はまだ始まったばかり……今日から、ここに書いてあることを全て実践しなさい」
ト書き60
宗助、おそるおそるUSBメモリを受け取る。
宗助
「わ……分かりました」
ト書き61
雅、振り返って浜口と迫田に笑顔を向ける。
雅
「それでは、実験を始めましょう」
浜口
「実験?」
ト書き62
雅視点で宗助を描写。
雅
「見たいんでしょう? 生まれ変わった彼に、生徒たちがどんな反応をするか――」
ト書き63
校長室を出て、廊下を歩く宗助を正面から描写。
ト書き64
スマホをいじっていた二人組の生徒、廊下の中央を歩く宗助に気付き、はっと顔を上げる。
ト書き65
廊下を歩く宗助を横から描写。生徒たちがざわつき始める。
生徒たち
「誰……?」
「超カッコいいんだけど」
「速水涼介に似てる……」
「それ! 私も思った!」
ト書き66
廊下を歩く宗助を後ろから描写。
生徒たち
「誰かのお兄ちゃん?」
「だよねー。うちの学校、あんな先生いないし」
ト書き67
宗助、周囲の喧騒に驚愕しながら歩く。額に汗を浮かべて、視線を横に向ける。
宗助
(マジかよ……)
ト書き68
宗助、壁にぶつかる。
宗助
「あたっ!」
ト書き69
宗助がぶつけた鼻を押さえていると、背後から明るい笑い声が聞こえてくる。
ト書き70
振り返った宗助の視線の先。メイとユイが、満面の笑みを向けている。
メイ
「あたっ! だって。かっわいい~!」
ユイ
「ねえ。けっこう勢いついてたけど、大丈夫?」
ト書き71
宗助、鼻を押さえながら、呆然と二人を見る。
メイ
「この学校の先生?」
ユイ
「迷ったの? ウチらが案内しよっか?」
ト書き72
宗助、深呼吸し、二人に礼を言う。
宗助
「あ、ありがとう。大丈夫だよ」
ト書き73
メイ、宗助の腕にしがみつく。
メイ
「遠慮しないの!」
ユイ
「新しい先生でしょ? 一緒に回ろうよ」
ト書き74
宗助、おどおどしながら二人に挟まれて歩く。
宗助
(何で……こうなる?)
メイ
「ねえ。先生、いくつ? 彼女とかいるの?」
ユイ
「その前に名前でしょ」
ト書き75
宗助、二人に目を向ける。
宗助
「その……宮本だ」
ト書き76
メイとユイ、顔を向け合って笑う。
メイ
「宮本って、ウチらの担任と一字違いじゃん!」
ユイ
「けど、全然違うよね」
ト書き77
メイ、きらきらの笑顔を宗助に向ける。
メイ
「ねえ、先生! 宮田の替わりに、ウチらの担任になってよ!」
ト書き78
宗助、額に汗を浮かべながら苦笑する。
宗助
「か……考えとくよ」
宗助
(悪気はない……んだよな?)
メイ
「三年三組だから!」
ト書き79
歩く三人を背中から描写。
メイ
「私、先生が担任だったら絶対遅刻しないよ!」
ユイ
「私なんか、毎日先生の机を掃除しちゃうかも」
ト書き80
夕方の清風女子高を遠くから描写。
宗助
(明日……教室に入りづらいな……)
ト書き81
自宅アパートに帰ってきた宗助、荷物を下ろしながら呟く。
宗助
「疲れた……」
ト書き82
宗助、ネクタイを緩めながら冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
ト書き83
宗助、パソコンデスクにどかりと座り、缶ビールを開ける。
ト書き84
宗助、缶ビールを一口飲んで、ふと何かに気付く。
宗助
(そういや……)
ト書き85
宗助、ワイシャツの胸ポケットから雅にもらったUSBメモリを取り出す。
宗助
(マサ……じゃなくて雅先生からもらった……)
ト書き86
宗助、USBメモリを再生。パソコンの画面に、夥しい量の指示が書かれたテキストファイルが表示される。
宗助
「げっ!」
ト書き87
宗助、雅の言葉を思い出す。
雅(回想)
「表情、姿勢、筋肉量、服装……解決しないといけない問題が山積みよ」
宗助
(こういうことか……)
ト書き88
宗助、パソコンの画面をじっと見る。
宗助
(食事、運動、生活習慣に肌のケア……めちゃくちゃ細かいな)
ト書き89
雅の指示を読んでいた宗助、はっとする。
ト書き90
パソコンの画面のアップ。『日常的な飲酒は控えること』と書かれている。
ト書き91
宗助、開けたばかりの缶ビールをじっと見つめる。
宗助
(どうしよう……もう開けちゃったし……)
ト書き92
宗助、缶ビールに口をつける。
宗助
(ま、いっか。明日からで――)
ト書き93
宗助、メイとユイに言われたことを思い出す。
メイ(回想)
「私、先生が担任だったら絶対遅刻しないよ!」
ユイ(回想)
「私なんか、毎日先生の机を掃除しちゃうかも」
ト書き94
宗助、ゆっくりと缶ビールから口を離す。
ト書き95
宗助、再び缶ビールをじっと見つめる。
宗助
(あいつら……俺に期待してるんだよな……)
ト書き96
宗助、ぐっと目を瞑る。
ト書き97
宗助、缶ビールを持って立ち上がる。
宗助
(明日からじゃない――)
ト書き98
宗助、台所の流しでビールを捨てる。
宗助
(今日からだ)
ト書き99
宗助、姿見の鏡を見つめる。
宗助
(見た目だけじゃない)
ト書き100
宗助、本棚から三年三組の集合写真を取り出す。
宗助
(あいつらにとって――)
ト書き101
三年三組の集合写真のアップ。中央に、変身前の宗助が座っている。
宗助
(理想の教師になる!)




