第8話 魔道具作り
俺は種火の魔道具を作る事にした。
前に作ったナイフバーナーのサイズを3センチに変更し、温度を1000度に設定して、形状を球にした。
これで完成だ。
一万分の一魔力があれば、大体3センチの炎が出る。
1魔力で1千万回起動できるはずだ。
俺は、3秒も点けっぱなしにすると魔力が3倍食うことを知っている。
実際には、ゴブリンの魔石では、体感で10魔力ほど入ったから、一回の充填で3百万回ぐらいかもしれない。
既存の魔道具の効率がどれだけいいかは分からないが、何にも工夫しないで俺が種火を唱えると、10魔力になる。
仮に魔道具屋が工夫して、十分の一の消費魔力になったとしても、1魔力になる。
俺は、1回の充填で十分の一になっても、10回しか使えないことを考えると、3百万回の俺の魔道具では勝負にもならないだろうと思った。
ソースコードをアップロード。
魔石への書き込みを念じる。
ゴブリンの魔石に書き込みを終え、魔力を充填して触れた。
すると、3センチほどの火が出てきた。
成功だ。
だが、消費は0.01魔力ぐらいだった。
恐らく既存の物より効率は良いはずで、これは魔法システムへの賄賂なしの効率だな。
試しに一つ売りたいが、どうなんだろうなと思いながら、俺は作り方を教えてくれた魔道具屋に行った。
「魔道具が出来たから、買い取ってくれないか?」
「素人の作った物なんか買い取れるわけがない」
「無限に種火が熾せるんだ」
「はったりなら、もっとましな嘘を言え」
「試してみてもいいぜ」
「何か絡繰りがあるに違いない。そんなに言うのなら、見せてもらおうか」
俺は作った魔道具を魔道具屋に渡した。
疑いながらも、魔道具屋はその魔道具を受け取ってくれた。
彼の目は完全に職人のそれで、すぐに分析に取り掛かっている。
「ふん、ゴブリンの魔石から作った魔道具か。貧乏人らしい材料だな」
魔道具屋で魔道具を起動し、置き時計をちらちら見ながら炎を20秒ほど眺めていたが、魔道具屋は感心していた。
「ふん、なかなかやるじゃねぇか。感心したぞ。お前を弟子にしてやっても良いと思ってるだよ」
40秒が経ち、炎はまだ消えない。
魔道具屋の目は驚きに見開かれ、声が漏れている。
「馬鹿な。これが現実だなんて信じられん。子供に負けるだなんて、俺は今まで何を成し遂げてきたんだろう」
1分が過ぎても、魔道具の炎はまだ消えない。
魔道具屋の目には必死さが見て取れ、彼は大声を出して詰め寄ってきた。
「おい、小僧。いったいどんな呪文を書き込んだんだ? はっきり教えるまで、この店から一歩も出さないからな!」
俺は答えない。
2分が過ぎ、魔道具屋の背筋が伸びた。
魔道具屋の表情は媚びる物になり、気持ち悪い。
「先生、どうか私を先生と呼ばせて下さい。その豊かな知識と技術を、ぜひともお教え頂きたいのです」
「もう少し確認してからにしてくれ」
10分が経った。
魔道具屋がうなだれているのが見える。
寝込まないと良いけどと思った。
「ははははっ」
魔道具屋から乾いた笑いが出てきて、アピールは十分かなと思った。
「もういいだろう。金貨10枚程度で引き取ってもらえればと思っている」
「先生、それはあまりにもお安いご提案です」
「服を見れば分かるだろうけど、今、金ねぇんだ。とりあえず買い取ってくれよ」
「承知いたしました。家宝としてお納めいたします。金貨10枚、お持ちいたします」
俺は魔道具屋に駆け足で奥に入り、金貨10枚を持って現れた。
「本当にいいのですか。後で返せと言っても、返さないかもしれませんよ」
「いいから、いいから」
「そうですか。先生はもしかして老賢者で、幻影の魔法でもお使いになっておられるのでしょうか」
「見た目通りだけどな」
「いけませんな。人さらいにでも捕まったら大変です。どうです、今晩、私の家においでになりませんか」
「遠慮しておくぜ」
俺は逃げるようにその場を後にした。
逃げないと嫌な予感がした。
「あっ、先生。お待ちください……」
魔道具をちょくちょく売りに行く予定だったが、あの様子だと危ういなと思った。
実力行使されても返り討ちに出来る自信はあるが、殺人で指名手配は勘弁してほしいと俺は思った。
スラムに帰ると、マイラが帰って来ていた。
「タイト、やばいかも知れないんだよね~。今日の上納金が払えないかも~! お願い、助けてよ~!」
「何だ、その程度のことか。ここに金貨10枚ある。十分だろ」
「金貨1枚もあれば、10日は十分だっしょ~!」
「ええと、銅貨が100枚で銀貨1枚、銀貨が100枚で金貨1枚ってことだよな?」
「そうだけど、どしたの?いろいろ賢いのに常識知らないなんて、ちょっと不思議だよね~?」
「屋敷から出たことがないんだよ」
「え~、でも今日さ、貴族の底力マジで知っちゃったんだよね。金貨10枚も稼いじゃうなんて、すごくない?!」
「元貴族だ」
「え~、それなんてどうでもいいじゃん!とにかく、ありがとね~!」
マイラに抱きつかれ、ほっぺにキスをされた。
子供にやられても嬉しくないが、まあ仲良くなれたと思っておこう。




