第78話 エルフ島の帰りにジジイが魅せる!
「世話になった、色々と助かったぞ」
「いえいえ、こちらも感謝ですじゃ、大したもてなしも出来ず」
「これだけ酒を貰えたんだ、少なくともワシは喜んでおる」「また来て下され」
翌朝、ジジイ共が修復させられた船で大陸へと戻る、
お酒積んでご満悦のエルディス様がエルフ族長リラント様とお別れの言葉を交わしたが、
そのお酒は私が妖精&コンベル様と治療活動をして頂いた貝殻(現地通貨)で勝手に買われた物なのよね。
(まあ良いけれども、他に使い道無いしぃ)
あと人魚さんに大きな真珠をいっぱい頂いた、
ガイア様によると色々と使い道があるらしいわ、
単純に商業ギルドで売っても結構な量の金貨に替わるとか。
「聖女様も、お元気で」「はい、それでは」
みんなで船に乗り込む、
ちなみに人間の港に常駐しているエルフのルビシー様も一緒、
でないとこの船がエルフ島へ戻ってこれないからね、一隻しか無いらしいし。
(あっ、海面では人魚の皆さんたちが手を振ってくれている!)
律儀にお見送りね、
治療したスミィくんもお母さんのシュガルさんに抱えられて、
隣の男性は旦那様かしらね、私も手を振り返す、さて船内へと……
「島の外へ出るのは緊張するわ」
「ティニア、新しく付けて貰ったコンベルさんの胸ポケットはどう?」
「まあまあね、悪くは無いわ、朝ごはん頂戴」「はいはい、浄化パパイアをどうぞ、エアリーも」「わーい」
一応は食料もそこそこ乗っけてるけど、
行きの勢いだと今日中には着きそうだわ、
食べ終わって落ち着いた妖精2人を舵まで呼び寄せる。
「ではコンベル様」「はい、では」
舵につけられている魔石に手を重ねて、
その上に妖精が……反応して光って一気に加速する!
「きゃあっ?!」「こ、これは凄い重圧が!」
「なんだなんだ、爆発でも起こしたか?!」「エルディス様、魔力伝動が凄いだけかと」
「これはすげえな、船は持つのか?!」「ガイアよ、ある程度は我が魔法で護ろう」「スクウィーク様、ありがとうございます」
と私が頭を下げておく、
いざとなったら私が魔力調整しなくちゃ、
港に着いて船の損傷があれば、また直してあげないと。
(……ふう、速度が安定したわ)
ということで、
エルディス様達はまた酒盛りかしら?
「よし、では到着まで寝るぞ」
「あっ、朝まで呑むとか言ってましたものね」
「俺もだ、海の上じゃ活躍の場もあるまい」「我も防御魔法を続けながら眠るのである」
さすがスクウィーク様、器用ね。
「オレは一応、前方で見張ってるぜ」
「ビジランテ様、ありがとうございます、あとルビシー様は」
「さっき棚に入って寝ちまったぜ!」「よく見てるわねエアリー、じゃ、後は私たちの腕の上でくるといでいて」
ということで船は順調に海上を走る、
暇なのか私とコンベル様が重ねた手の甲の上で、
ティニアさんといちゃつきはじめるエアリー、ちょっと目に毒。
(でもまあ、エアリーにやっと番いが……)
とか見ていると!
「ティナさん、前方に巨大な魔物が!」
「えっ?!」「このままだとぶつかります!!」
前方を覗くと、
確かに何か居て腕をうねらしている!
「ほう、あれはクラーケンオクトパスであるな」
「スクウィーク様!」「手足が18本ある巨大なイカとタコを合わせたような魔物である」
「こ、このまま行けば」「相討ちで喰われるやも知れないのである」「よし、俺に任せろ」「エルディス様!」
眠っていたエルディス様が急に立ち上がり、
船首まで出て勇者剣を構える、いやそれ本当に大丈夫?!
「こうなればエルディスに任せて大丈夫だろう」「ガイア様!」
「そのまま突っ込め、エルディスを信じろ」「は、はいっ、それでは」
速度を落とさずそのまま固唾を呑んで、
エルディス様の後ろ姿を見つめる……ぐんぐん近くになる魔物、
やがて腕をうねらせて構えるその胴体に……ぶつかる、衝突しちゃう!
「はあああぁぁぁーーーっっっ!!!」
剣を一振りすると、
それだけで超巨大なクラーケンオクトパスが、
縦に真っ二つに分かれて海面に、左右に倒れた!
「えっ、剣って横に斬ってませんでした?」
「細けえ事はいいんだよ、そのデタラメさがエルディスだ」
「ガイア様、よく御存じで」「戻ってきたぞ」「ふう、さて寝なおすか」
……緊張感が一気に解かれる、
ほんっと、このジジイ勇者、さすが『トドメの勇者』だわ、
一番大切な時、最後の最後で頼りになる……見事に魅せて貰ったわ。
「な、なに、今の剣は」
「ティニア、あれが勇者様の力よ」
「ありえないわ」「少しは敬意を払ってね」「少しでいいぞ!」「エアリー……」
こうして船は、
大陸の港へ一直線に戻るのであった。




