第67話 ジジイはみんなボケはじめていた!
「今回は客があまり来んな」
「当たり前ですエルディス様、住民が11人の村ですよ?」
「なあティナ、もう表に出ても良いんじゃないか?」「エアリー、誰か来たわ」
随分ゆっくりとやってきたご老人、
杖をついて歩くも左右におじさんが居て、
歩くのをフォローしている、両目はなんだか白目をむいているっぽい。
「あ、貴方はメルソン様!」
「……その声はビジランテか」
「お久しぶりです!」「ということは、来ているのはクレアか」
なんだかよくわからないけど、
少なくともビジランテ様や私のお師匠様の、
お知り合いらしい、でもエルディス様達は知らん顔。
「すみません、クレア様の弟子、ティナと申します」
「そうか、もう50年以上経っておるからな」「あの、お知り合いで」
「ティナさん、この方は初期の準メンバーです」「えっ、エルディス様たちの?!」
大きく頷く白目のお爺さん。
「まずは治してくれぬか」
「あっはい、エアリー行ける?」
「めっちゃ魔力がかかるな、終わったら即休憩だぜ」「誰も並んでねえぞ」
というガイア様のツッコミはさておいて、
ご老人、メルソン様を治療する、うん、これは時間がかかるわ、
魔力も……でもコンベルさんの精霊回復魔法、その魔力も加わって……!!
「……おお、ひ、光が……見える、見えるぞ!!」
白目が普通の目になった!!!
「私の顔も、でしょうか」
「おお、まだ幼い少女ではないか」
「15歳です!」「ボクも見えるー?」「よ、妖精」「腹へったー」
貿易都市で買った苺を浄化して食べさせる。
「ティナさま、後ろの控室で」
「コンベル様、あそこ埃が凄いから、ていうかこの教会よく立ってるわね」
「そうか、もうこんなにもボロボロに」「メルソン様、以前は」「綺麗だった、村人も二百人は」「今は11人だそうですよ」
周囲を見回すメルソン様。
「おお、お主はエルディスか」「さて、誰じゃったかのう」
「ではお主はガイア」「俺もこんな弓使い、憶えちゃいねえな」
「えっメルソン様って弓使いだったのですか!」「そうだ、なあスクウィーク」「……我より年上は誰一人、憶えていないのである」
じゃあこのメルソン様って90歳超え?!
「やはり50年以上の年月は残酷だの、皆、ボケはじめておる」
「いえメルソンさん、違う意味でボケているのかと、すっとぼけというやつで」
「そしれにしてもビジランテ、お主の名前は憶えておるが、職業やなぜ仲間だったかがさっぱり思い出せん」
こっちもボケてたーーー!!!
「あの、ティナさま」
「もしかしてコンベル様も?!」
「はい、魔力の補強を」「あっ、同じ苺で良い?」「もちろんでございます」
1箱あげちゃおっと、
こっちは浄化しなくていいんだっけ?
一応してあげますか、ってメルソンさんも一緒になって食べてる。
「うむ、美味だ、木苺とは桁違いだ」
「それよりメルソン、お代はどうした」
「おい」「ははっ」「お弟子さんですか」「まあな」
一旦教会から出たかと思うと、
大きな弓を持ってきてくれた!
そして矢も太くて鋭いのを、十数本。
「ふむ、懐かしいのう」
「スクウィーク様、記憶が」
「こやつが大昔、エルフの職人に造らせておった気がするゆえ」
気がする、って、
まだすっとぼけで行くのね。
「ということはメルソン様、エルフの集落に心当たりは」
「もう30年近く人里へは降りてなかったが、エルフなぞそこいらにおるのでは」
「コンベル様」「ハーフエルフはどこでも稀に見ますが、同胞、純潔エルフはめったに」
やはり、ね。
「ではメルソン様、妖精の棲家に心当たりは」
「……ある、グランジュラ大森林の中心に多くのエルフが棲み、その更に中心に」
「そのグランジュラ大森林の場所は」「かなり遠いが詳細までは憶えておらん」「地図に載ってますよ」
というビジランテ様のフォロー、
いやほんと、ボケ老人もとい高齢ジジイはまったくもう、
などというこの村で私たちは一泊するのよね、貿易都市で食料大量に積んできて良かったわ。
「ではメルソン様、私の師匠のお話を」
「そうだな、今、わしは92歳だが、まだ30代の頃に……」
正確に53年前とすると39歳の頃の話ね、
まったく、こういう所の計算はしっかりしているのね、
まあいいわ、他のお客さんもなかなか来ないし、じっくりお話を聞きましょ。
「それでクレアはビジランテの頭を、髪を掴んで『ハゲますよ?』と」「こっわ!」
お話をまとめると、
王都から旅立って半年くらいはこのメルソンさんも弓使いで参加したものの、
ダンジョンでは大弓は邪魔になるということで戦力外になってしまったらしいのです。
(あとなんとなくわかる、この人、小煩そう)
きっとエルディス様達が、
煙たがったのでしょうねえ。
という感じで元準メンバーに貴重なお話を聞けたのでした!
(ちなみに夜は比較的綺麗な空き家をお借りします!)
メルソンさんは夕方の帰り際、
島エルフ&島妖精についても聞いてみたけど、
何も知らない様子でした、まあいっか、これから行くんだし。




