第7話 ジジイからの提案!
魔王討伐へ行くための勇者選定、
4人の若い勇者と訓練用ダンジョンで共に戦い、
もう彼しかいない、と選んだ相手にまさかの御断りをされて愛の逃避行へ。
(残されたのは難有りしか居ない)
ハーレムが当然という俺様勇者、
完全に百合目的で目がいやらしい女勇者、
小動物系で女性に染められたい駄目な弟系勇者。
(もういっそ、逃げたい)
最悪、勇者なしパーティーでも、
しかし国王陛下が招へいしておいてそれはまずいわね、
冒険者ギルドで『魔王討伐の勇者募集』とかしても、どんなのが釣れるのやら、だわ。
「……よし、ではこうしよう」
提案があると言いながら少し考え込んでいた勇者サムエル様、
隣でその父である大勇者エルディス様も渋い表情でそれを見ている。
「聖女ティナよ、ウチの勇者3名、誇りの勇者イザル、
風雅の勇者フィオネ、支援の勇者オムイ、それぞれを旅出させよう」
「えっ、3人まとめて私に押し付けるのですか?!」「そりゃひでえな!」
胸元の妖精エアリーも思わず叫んじゃった。
「……今、心の声が聞こえたがまあ良い、そうではなく、魔王討伐の旅だ、
ティナ殿とは別で、別口で、別ルートで、別パーティーでだ、それで強くなって貰い、
本当に頼もしいと感じられるようになったら、合流して貰おう、お前たち、それで良いな?」
若き3勇者も反応する。
「良いけどティナの、ハーレムの席は空けておく保証は無いぜ?」
「ふふ、少しずつ、少しずつ、ティナさまをこちらの世界へ引きずり込めば良いのですね?」
「あの、それでサムエル師匠、僕たち3人で組めと?」「任せる、最初は組んでのちに分かれても構わん」
それが現実的ね、
いきなり1人1人パーティーを探せと言われても時間がかかる、
なら最初は多少歪つでも、勇者3人のパーティーで始めたほうがまだマシだわ、でも誰が舵を取るのやら。
「父上、良いですね?」
「ああ、陛下にも『勇者を魔法討伐に出す』という約束が守れる、
しかしだな、『聖女ティナに強力するという約束もあってだな、問題はそこだ」
確かに私個人でも、
これからパーティーメンバーを探すのは大変だわ、
なによりつてが無い、あるとしたら各教会関係だけれでも……
「あの、他の勇者は」
「ティナよ、誰でも良いか?」
「いえ、誰でもという訳では、でも他に候補が居れば」
にやりとほくそ笑む勇者エルディス様。
「ひとりだけ、居るには居る」「本当ですか?!」
「ここに居る3人、逃げたニルドも含め、全員が束になっても倒せん相手だ」
「そんなお方が、なぜ隠してらしたのですか、でしたら最初に」「いや、奥の手中の奥の手だ」
私の胸から『もったいぶるなよ……』の声が。
「私が納得できそうなお相手でしょうか」
「実績は十分、それどころか伝説級だろう」
「何か問題でも」「まあそれは、あえて言うならひとつだけ、まあそれは良い」
いや良くないからぁ!
まったくもう、本当に、もったいぶらないで欲しい。
「まさか、遠く離れた所にいらっしゃるとか」「いや、すぐ近くだ」
「では呼んできていただけますでしょうか」「もう来ているぞ」「えっ?!」
「ここに居る」「もしや、まさか……ひょっとしてひょっとすると、勇者サムエル様?!」「えっ俺?!」
あっ、素の声で焦ってる!
「違うわい、息子はここでやらなければいけない事が山ほどある、陛下のご機嫌取りとかな!」
「と、いうことは……」「うぬう、もうこうなったら仕方ない、84歳だがまだワシは戦える、ワシが行こう」
「ひえええええぇぇぇぇぇぇ……」「見たであろう、グレートリッチを倒した様子を」「確かに、それは見ましたが」
階段でコケたのも見ました!
しかも、下りも上りも、滑り易かったとはいえ。
「途中までのお試しでも良い、ワシに任せよ」
「……本当に、行ける所までですよ、って長旅は平気ですか?」
「妻が死んでからはする事があまりなくてな、むしろ良い暇つぶしじゃ」
魔王討伐を暇つぶし……
これはやはり、そこまで長く一緒に行く気はない?
確かにどのくらいの月日が、年月がかかるかわからないから、新たなパーティー探しの補佐と思えば!
(何より名声は間違いなくあるわね)
50年前、この大陸を救った勇者様ですもの。
「さあどうするよティナ」
「あの、断ったら誰が、他の候補は」
「いつも何かクチャクチャ食べている勇者シルヴァか、常に何かを揉まずにはいられない勇者サックリか、気が付けばどこかの隙間に」「もう良いです」
つまりはもう奇人変人しか残っていないと。
(うーーーん、まあ、繋ぎであるのならば!!)
とりあえず、
仮っていうことでね。
「わかりました、エルディス様、よろしくお願いします」「うむ!!!」
こうして、
まさかまさかの勇者様と組むことになったのでした。
「大丈夫かオイ!!」
エアリー、心の声をありがとう。
(84歳の勇者様、か)
介護にならないと、
良いのだけれども……。
「では早速、国王陛下に報告だ!!」
びっくりするでしょうねえ、それはもう。




