第60話 元執事ジジイの真骨頂!
「ウェーブエコー!」
コンベルさんの魔法が泥スライムを一掃する、
広範囲魔法で周囲の敵があっという間に崩れ去っていく、
この魔法、本当に楽よね、本来は燃費が悪いらしいのだけれども……
「おお、すぐに魔力が回復します、さすが聖女様!!」
「ど、どうも」「なにせティナは大聖女クレアの弟子だからな!」
「それはそれは、さぞかし素晴らしいお方だったのでは」「ええまあ、多分」
エルディス様の謎フォロー?
が入ったけれども半分はエアリーのおかげ、
とはいえ回復が早すぎる気がする、敵が弱いから?
(ううん、使用魔法は同じだから魔力量を調節するなんて、できないはず)
とはいえそもそも、
この魔法自体が初めて聞くわ。
「スクウィーク様、ウェーブエコーという魔法は」
「うぬ、初めて聞くが広範囲魔法なのは間違いないのである」
「えっ、ご存じないのですか」「しかし魔力を多く消費するのは感じ取れるゆえ」
ますます謎だわ、この老紳士。
「おっと、この先は沼が深いぞ」
先頭を行くリアライさん、
もうすっかり腰までズブズブね。
「エアリー、行ける?」「……うん」
なんだか元気が無いわね、
大丈夫かしら、と思いつつ、
みんなの身体が少し浮く、精霊魔法『フェアリーフライ』だわ。
「こ、これは、これはー!!」
「あっコンベルさん、浮き過ぎ」
「私では、どうすることも……っと安定しました」
精霊魔法が効きやすい?!
魔法防御力が弱いのかしら、
そもそもが冒険者を始めたばかりみたいですし。
(70歳のルーキー、ねえ)
まあ夢は齢を取らない、
ということにしておきましょう。
「おお、このエリアからは泥ゴーレムが、ふんっ!」
リアライさんが大盾でしっかり防ぐ!
「ではここからは、ウェーブショック!!」
あっ、ゴーレムが振動して破裂した!
いやこれ強すぎるでしょう、さすがに辺境伯元執事、
エルフの森があった領地ってことは魔物も多かったってこと?
(もっと体力のあった、若い頃に冒険者になっていたら……!!)
でもジジイならではの円熟味も感じる。
「なんだ、これでは敵が強いのか弱いのかわからないぞ」「エルディス様、ここはコンベルさんを褒めましょう」
「あとリアライ氏もなかなかの動きだ」「ガイアさん、前衛としては合格ですか」「まあ及第点だな、まあまあ、そこそこ」
「スクウィーク様は」「うむ、確かにコンベル殿の魔法は凄まじいが、魔力回復あってのこと、すなわちこのパーティーでこそだ」
この流れ、
ひょっとしてひょっとしたら、
うん、ひょっとするかも知れないわね。
(一応、もうひとりの仲間にも聞いてみよう)
胸の中に問いかける。
「エアリー、どう?」
「……疲れた、腹へった~~」
「あっそうよね、魔力吸い取られ過ぎよね」
慌てて干しブドウを浄化して与える、
さすがにグッタリしている、大人しいはずだわ、
常時、浮遊魔法も全体にしてくれているのだから……
「ふう、助かった」「休憩する?」
「……ボク、ちょっと怖い」「どうして?」
「あの執事、だっけ」「コンベルさんね、元執事」
何が怖いのかしら?
「あの人間、人間じゃない!」
「えっ、つまり、どういうこと?」
「年齢が……歳が400歳を、超えている!」
えええええ?!?!?!
「つまり、どういうこと?」
「人間じゃない種族、ひょっとしたら」
「もしかしたら?」「……アンデッドかも」
まさかの、魔物?!
確かに人に化けるモンスターは居るみたい、
昔、公爵家のお妃が人に化けたサキュバスだったって事件があったのは有名な話。
(辺境伯家だって、執事がインキュバスだったって話があっても、おかしくないわ)
これは確かめてみないと、
信頼し切ったところで最深部へ潜ってから、
さあボス部屋って所で振り返られて魔法攻撃とか、目もあてられないもの。
「コンベルさん」「はい何でしょうかティナさま」
「一応、回復魔法を……ついでに浄化魔法も……はいっ」
「平気ですがありがとうございます、お心遣い、感謝致します」
……平気ですが、って、
普通に考えれば体力も状態異常も大丈夫ですよって意味になるけど、
疑った見方で考えると、そんなことされても正体はバレませんよみたいな。
(かといって隠匿解除みたいな魔法をかける雰囲気でも……)
スクウィーク様に相談しようかしら?
ひょっとしたら、その目を通じて見ている、
あの奥様方、正妻側室が『それ魔物ー!』て騒いでいるかも?
「あのスクウィーク様」「何であるかな?」
「奥様方と連絡は取れるのですか?」「誰かが見てはおるのであろう」
「こちらから連絡は出来るのですね」「向こうからも凄く時間がかかるであろうが」「魔法で?」「冒険者ギルド経由になるゆえ」
物理なのねそこは!
本当にいざとなったら、
お婆さん本人がやってきそう。
(こうなったら……スクウィーク様と模擬戦をして貰うとか?)
なんて思いながら更に深く深くへ潜っていくと……
「おーい、ついに来た、サソリエリアだ、うおっ!!」
跳び掛かってきたのを、
リアライさんが大盾で防ぐ!
「私に任せて貰おう」
すっかり気配を消していたビジランテ様が、
颯爽と現れてサソリの群れを斬って斬って斬りまくる、
ある程度の大きさがあるからきちんと倒せてはいるけれども……
(ていうか、魔法で飛んでても自分の意思できちんと動けるのね、今更だけど)
浮遊効果だけエアリーから貰っている感じ、
行きたい方を念じればそっちに動けるんだけど、
ビジランテ様はさすがアサシン、空中での動き方をもうマスターしている。
「エルディス様」
「きりがないな、さっさと通り抜けよう」
「はい……エアリー、飛ばして」「ボク、頑張ってみる」「ごめんね」
そんな訳で、
最大の難所をある意味、
スルーする私達なのでした。
(この先はラミア群らしいけど、ひょっとしてボスも……!!)




