第55話 ジジイは放置でエアリーとお話!
「うぅ、ティナ、治癒魔法を」「知りません!」
「俺としては頭痛だけでも取って貰えると」「苦しんでいて下さい!」
「我は二日酔い除去の魔法を持っておらぬゆえ」「残念でしたねえ……」「自業自得だな!」
エアリーの厳しい言葉が投げられた馬車内、
ビジランテ様の運転で貿易都市を目指し走らせている、
そして転がっているジジイ3人、案の定、二日酔いね。
(お神酒と強いお酒を混ぜるから……)
例えれば光魔法と闇魔法を混ぜたようなもの、
と言うと打ち消し合うイメージもあるかも知れないけれど、
混沌に混じり合った結果、とんでもなく悪酔いしたっぽいわね。
「さてエアリー、ジジイは放っておいて」「放置だな!」
「結局、私は読めなかったけど『妖精の本』って、いったい何が書いてあったの?」
「つまり、妖精は人間を幸せにするって内容だったぜ」「うん、私は幸せよ」「ボクもー」「ふふふ」「あはは」
などと笑い合っていると、
地獄にでも居るような表情のエルディス様と目が合った、
思わず瞬時に逸らして、っと……もうちょっと詳しく内容を聞きたいわ。
「それで、お仲間の居場所は?」
「具体的な場所と言って良いのかな、エルフの里が近くにあるって」
「あー、私のあの教会も、元はエルフの森を護るための教会って伝説が」「じゃあエルフが先に居なくなっちゃったのかあ」
もしくはエアリー&マザーツリーが見つからなくて、
エルフの方が『妖精が居なくなった』と思って去っちゃったとか?
でもそれだとエルフは妖精を護るのが仕事みたいになっちゃうわね。
(あっ、ガイア様がお水を飲もうとして、こぼしちゃった)
それを見てスクウィーク様が呑ませるが、
残念、それはお酒でしたーって吹いてる、もういいや。
「エルフと妖精の関係は?」
「遠い親戚、持ちつ持たれつ、だからエルフは妖精の森を知っていても教えないんだって」
「仲が良いのね」「ていうかエルフは妖精に絶対服従らしいよ」「そんなに」「祖先みたいな立場らしいぜ」
エルフ族……
うちの教会にハーフエルフが来た事はあったわね、
そうめったに見ない種族、それもそのはず、魔法で人に化けられるらしい。
「じゃあこれから行く貿易都市で、エルフの情報も聞くべきね」
「そこから、エルフからボクの仲間の情報を聞けるかも、楽しみぃ」
「他の情報は?」「エルフの精霊魔法と妖精の精霊魔法は、かぶってるのもあるけど別らしいぜ」
細かい魔法とかも載ってたのかしら?
「エアリーの知らない魔法とかあった?」
「聞いた事のない名前のはあったけど、使えなかった」
「そう、どうやって憶えるんでしょうね」「教えてもらうらしいよ、同族に」
そうなると、
ますます妖精を探さなくっちゃ。
「私に出来る事は何でもするわ、頑張りましょう」
「うん、ボクもティナの力になれることは何でもするよ!」
「じゃあ、おやつに干しブドウをどうぞ」「わーい」「我にも水を……」「仕方ないわね」
スクウィーク様にお水を、
ついでにエルディス様とガイア様も、
飲んでいる最中に、さりげなく回復魔法をかけてあげる。
「ふう、楽になったぜ」
「俺もだ、スッキリした」
「我もあまりにも付き合い過ぎた、90の身体には堪えるのである」「ほどほどにしろよ!」
さてさて、
回復させた所で……
「エルディス様、エルフと会った事は」「大昔、抱いた事がある」
「……ではガイア様は」「ドワーフならあるな、そのドワーフがエルフに弓を作ったと」
「スクウィーク様は」「ランダのかつての弟子に、ハーフエルフが居たのである」「ええと、緑髪のお婆さんですよねランダさん」
お借りした妖精の本は、
きちんと手元に戻ったのかしら。
「わかりました、お三方はエルフにコネは無いと」
「探せば良い」「50年前ならまだ集落があったかもな」
「あったかもも何も、妖精の集落へ行く途中に寄ったのである」「くわしく!」「記憶が曖昧でのう」
後でビジランテ様にも聞かないと。
「エアリー、お仲間に会える日は遠くないわね」
「うんボク、ティナを信じるよ、そして恋人を作る!」
「モテるといいわね」「お嫁さんにして連れてくるよ」
エアリーが婿に行かなきゃ良いけれども。
「それでティナよ」「はいエルディス様」
「体調が戻ったので酒を呑んでもよ」「駄目です!」
「俺も頼む、もう悪酔いは」「我慢して下さい」「厳しいのである」「まだお神酒が完全に抜けてなければ、また悪酔いしますよ?」
馬車の中が大惨事に、
だけは避けたいのだけれども!
(早く着かないかしら、貿易都市ナベック)
なんだか、
新たな出会いが待っている気がするわ。




