第44話 商人貴族はジジイをも利用する!
「はい皆さん綺麗に整列なされていますね、
本日はそう、めったに無い聖女様による治療!
なんとお布施の金額は自由! こちらに関してはご無理の無い程度に!!」
2人目の貴族となるルマンディさん、
いやそんなに流暢に喋って客寄せじゃないんだから、
私は気にせずお客様を捌く、もとい治療希望者を治していく。
「お代はそちらの箱にさささっと入れて頂いて、
それが終わりましたらはいこちら、我がルマンディ商店のお守り!
種類も大きさも多数、冒険のお伴に、家族の安全に、金運アップに是非!!」
ちょっとどさくさまぎれに、
と言いたいけれども我が教会でもお土産は売っている、
それどころか修道院で工芸品を造っては聖女作とか言って売ったりも。
(なので、あまり文句は言えない)
はい魚の目を治してっと。
「ちなみに伝説の勇者パーティー『最強の五人』そのうち四人、
それぞれのサインが入ったお守りも特別価格で! 今だけですよー?!」
「えっガイア様、いつのまに」「今朝、俺達の寝室に新しいメイドが来てな」
なーに書かされているのよまったく、
あと何気にビジランテ様まで、そんなの書く暇あったら、
とっととこっちへ会いに来て欲しいわ、っと粉瘤を治療っと。
「ボクもサインした方がいーい?」
「誰も本物の妖精とは思わないでしょ」
「いえいえ目の前でサインして頂ければ」「ルマンディさん?!」「では早速準備を」「やめてー!!」
認識阻害みたいな精霊魔法が発生しているはずなのに、
なぜ聞こえてて反応できちゃの?! すごい地獄耳だわ、
一流の商人ともなるとお客さんのため息ひとつ聞き漏らさないのでしょうね。
「それでガイア様、他の2人はサインした後、どちらへ」
「賭博場だな、今朝書いたサインの分、全て賭けるどうだ」
「まったくもう」「俺も夕食が終わったら行く」「私の路銀は使わないで下さいね」
そして治癒魔法をかけながら、
会話の内容はルマンディ商店について。
「……という事で、街の業者がひとつだと値段で足元を見られる、
なので店が2つあれば価格競争で安く品質も良い物をと王都より移住、
その活動が認められて我がルマンディ家は一大商店を築き上げたのです!!」
つらつらと語ってくれた成り上がりストーリー、
これ絶対お話盛ってるでしょうって思いながらも、
お話が面白かったので最後まで聞いてしまった、お守りも売れてるし。
「それでルマンディ様は、ビジランテ様にお会いは」
「おそらくそれらしきお方とは、アサシン装束なゆえに」
「今朝の接触は」「とある筋を通じてとしか、申し訳ありません」
きっとあの弟子連中ね。
「あの聖女様、胸が小さいのは直せますか?」「無理ですね」
「夫によく性格が悪いと言われて、治せるならばと」「無理ですよ」
「最近、儂が怒りっぽいと」「高血圧ですね、治しておきます」
商売人が多いせいか、
路銀が順調に溜まって行く、
隣で貴族の当主様がホクホク笑顔なのが、なんといかちょっと罪悪感。
(みんなお守りも買って行っちゃうなぁ……)
と、ここでガイア様が。
「ビジランテ殿、ビジランテの弟子であるアサシンを闘技場に集めて、戦わせる事は可能か」
「結構な金貨の枚数を弾んでいただければ、会場だけでなく審判もこちらで融通致しましょう」
「いや、やりたいのは俺達の新しいパーティーメンバー選びなのだが」「ではお伝えしておきましょう」
また今度も優勝者が辞退とかイヤよっと。
「ティナ、ちょいと休憩」
「待って、次はお金持ちの方みたい」
貴金属をじゃらじゃらと身につけている、
期待しちゃうけど『ウチの息子の嫁に』とか言われそうで怖い、
ガイア様が護ってくださると言っても、話された瞬間はどうしようもない。
「実はな聖女殿、右乳首を脱臼してしまってな」
「えっ乳首って脱臼するんですか、手首や足首じゃなく」
「どうも向きが元に戻らなくてな、治療を」「はいはい」「おお、痒みが取れた!」
こんなので金貨1枚頂きましたとさ。
(ふう、私もおトイレへ行こうっと)
伝説のアサシン、
ビジランテ様にきちんと対面できるのは、いつの日か。




