第38話 ジジイは酒が呑めれば何でも良いらしい!
今夜の宿は村と街の中間というか、
なんとか宿と酒場が一件ずつある町で一晩休んで、
翌朝出発で夜には商業都市に到着予定、という状況で夕方に到着した今、私たちが観ているのは……!
「ティナよ、ワシらの像じゃ」
「はい、5人揃っていますね、でも」
「若くて今と違うであろう、我も今では別人である」
スクウィーク様の言っていることもわかるけど、
私が言いたいのは師匠、大聖女ティナ様の像だわ。
「俺の像、少し欠けておらぬか?」
「ガイア様、それよりティナ様の顔が」
「ああ、いつもこうしてローブのフードを深く被っていたぞ」
それで像でも顔が下半分しか見えないのね、
覗き込んでもわからない、私の記憶の答え合わせが、
とも思っていたのだけれども……ちなみに肖像画も全て顔が微妙に違ったりする。
(そっちは本人の意思らしけど)
ちなみにエアリーもあまり憶えていないらしい。
「で、こっちは顔が完全に隠れているぞ?」
「おうよエアリー、アサシン装束とはそういうものだ」
「エルディス様、このお方に会いに行かれるのですよね?」
そう、アサシンのビジランテ様。
「嬢ちゃん、何か気付かないか」
「ガイア様、その、思ってたより小さい?」
「当時でビジランテは15歳、今の嬢ちゃんと同い年だ」「やっぱり」
とはいえあれから50数年、
会っても立派なジジイよね。
「ビジランテは人前ではめったに顔を出さぬ、
むしろ人前に出る事も珍しい、よく単独調査もしておった」
「スクウィーク様、まさか仲間にも顔を」「さすがにそれは皆、見ておる」
勇者パーティー像の周りを飛び回るエアリー。
「なあなあ、サブメンバーの像は?」
「エアリーよ無理であろう、あと4体となると予算が倍かかる」
「それで良いのか魔法使いジジイとしては」「そもそも勝手に造られたからのう」
この5人並んだ像を見ながら思う、
もし今回の討伐が成功したとして、
アサシンさんはさておき、メンバーが今のままだったら……
(師匠が、クレア様が私に挿げ替えられるだけになったりして)
さすがに勇者・戦士・魔法使いは老人に直さないと、
あとだったら私の肩にでも良いからエアリーを乗せて欲しいわ、
とかなんとか思いながら勇者パーティー像を見終わって町の案内地図へ。
「おう、あの宿まだあるようだの、50年前と同じ場所だ」
「いや隣だ、一度建て替えたと思うぞ俺は何度か通って泊まっているからな」
「案外、宿の主人がビジランテかも知らぬゆえ」「えっ、そんな事が?!」「ティナよ、あやつは神出鬼没である」
すぐ近くに酒場があって、
と私はひとつの建物に気が付いた!
「教会もあるのですね!」
「ただ50年前は老人の神父が1人居ただけだ」
「もうとっくにおらん、今はたまーに派遣が来るだけと聞いた」
「案外、その派遣がビジランテかも知らぬゆえ」「おいおいマジかよ」「エアリーよ、あやつは変幻自在である」
とにかく宿の確保が先だわ、
こういう要所にある宿って油断するとタッチの差で埋まるのよね、
ということで行くと、確かに築50年以上には見えない宿、それでも築10年くらいかしら。
「エアリーはしっかり隠れていなさい」「あいあいさー」
胸元に綺麗に収まってっと。
ちなみに馬車も引手さんと一緒についてきています、
入るとおばさんが受付に、いかにもやり手という逞しい感じの方。
「いらっしゃい」
「ワシら5人だが頼めるか」
「この時間だからね、ここ本館は1人部屋が2つしかないよ」
さすがにそれは5人では窮屈そう、ん? 本館??
「別館があるのか」
「空き家になった一軒屋を再利用、値は張るよ」
「構わぬ、そこに5人は」「ベッドは4つしかないよ?」
うーん、ここは個室を貰おうかしら?
とはいえご老人の世話をするのに私が隔離されるのは、
仮とはいえ大切なパーティー、ぽっくり行かれても困る。
「では馬の引手さんは個室で、私たちは別館で」
「良いのかい神官様」「あっ、私聖女です、ひょっとして教会って泊まれますか?」
「たまに来る神父さんもウチで泊まってるよ、もうめったに来ないけど」「そうですか」
ということで宿代はそこそこ、いえ結構した。
「馬車はどっちに泊めても良いよ、ここの隣でも別館でも」
「ところでおかみ、ワシはこの町は50年ぶりだが場所が変ったか?」
「そうね、隣の馬小屋も古くなって、建て替える時に場所を交換したさね」
ということで引手さんに馬車を任せ、
私たちは地図で教えて貰った別館へ、
と思ったらみんなが先に向かったのは……!!
「おお、酒場はまったく変っておらぬ」
「ボロボロじゃねーか!」「エアリーよ、俺達は呑めれば何でも良い」
「そうであるな、埋まっていたら裏庭で飲むだけである」「いやそれは別館で呑もう?」
馬車の床呑みといい、
このジジイもとい勇者パーティーの皆さん、
ほんっと、呑めれば何でも良いみたいだわ……スクウィーク様も含めて。
「50年前のストックは、まだあるかのう」
「スクウィーク済まない、あれはもう俺が全部呑んだ!」
「なあに、金ならまだたんまりある」「エルディス様、ですからそれ支度金!!」
ここでも路銀稼がなきゃ。




