第22話 さすがにジジイも予想外!
「ひっ、ひんっ! ひあうっ!!」
「ほらどうした、立たないのか、オムイ!」
「ストップストップ、勝者、アレクス! もう終りだ!!」
勇者剣を投げ捨て地面に丸くなっているオムイくん、
それを容赦なく、ハルバードを逆に持って柄の部分で叩き続けるアレクスさん、
もう完全に勝負あったと止めに入る審判の衛兵、しかしアレクスさんは、しばくのを止めない。
「私に勝つのでは無かったのか!」
「も、もう許して、うわっ、うわあああああん!!!」
「アレクス選手、もう相手は戦意喪失だ、これ以上するなら失格負けにするぞ!」
えっ、そんな展開でまさかの大逆転?!
「……仕方ない、もう少しトラウマを植え付けたかったのだが」
「えぐっ、ぐすんっ、ああう……うぁぁぁぁあああああぁぁぁぁ……」
「これでわかったか、いかに私に勝とうとした事が、無謀だったかということを」
こわっ、恐ろしい躾けだわ、
でもこれで、さすがにオムイくんもあきらめたでしょう、
下手すると勇者として再起不能、これだけの人の前ですものね。
(おそらく、心がぽっきり折れて、プライドもズタズタに)
これを見て侯爵家の坊ちゃんも拍手している。
「これで我が嫁、あれくすちゅわぁ~んは無事、未来の侯爵夫人に、ね~~~~~!!!」
いやそんな、
可愛らしく合意を求めても、
肉塊は肉塊なんですけど、頭上のトカゲも心なしかドヤ顔に見える。
「ほんっと情けない、こんなので魔王討伐の旅に、本当に出られると思っているのか?
これでは遅かれ早かれ死ぬな、いや、最初に会った魔物にあっけなく殺されかねない、
どうだ、自分の実力を思い知っただろう、何か言う事はあるか?」「うううぅぅぅ……ごめんなさぁい」
さすがにこれ以上は、
と止めに入ろうと思ったら、
勇者エルディス様に長芋で止められた、ふかしたてのほかほか。
「あれは戦士の領分だ、聖女が入る場所ではない」
「しかしオムイくんは勇者で」「だったら止めるなら俺だ」
「妖精なら止めに入って良いか?」「エアリー!」「まあ見ておけ、おそらく話はこれからだ」
一応、審判に腕を上げられ勝ちが確定するアレクスさん、
さすがにもう戦いは無いわよね? ガイア様との直接対決とか……
そしてオムイくん、立ち上がろうとするけど地面に這いつくばっている、可哀想。
(誰も手を貸さないわね、せめて私が遠距離回復魔法を、と思ったら……?!)
アレクスさんがしゃがみこんで、
オムイくんの髪を掴んで強引に顔を上げさせる、
これ以上、どんな酷い言葉を……涙が止まらず酷い顔のオムイくん。
「うぐっ、うぐああっ……」
「お前、これからどうやって生きていくつもりだ」
「そ、それは……ううっ」「ほんっと、どうしようもない、呆れを通り越すな」
ふううーーーっ、と、
やたら大きなため息をついたアレクスさん、
その息でオムイくんが吹き飛ばされそうなくらい。
(婚約者の坊ちゃんは笑ってる、もう手に入れたのが確定したって感じね)
そしてオムイくんには、
これを乗り越えて立派な勇者になれって感じかしら、
だとしてもこれは、あまりにもやり過ぎだわ、オムイくんの選んだ道とはいえ。
「ごめん……なさい」「謝罪か、最も悪手だな」「そんなぁ……」
「仕方ない、本当に仕方ない、情けをくれてやろう、お情けだ、お前、私と結婚しろ」
「は……はい……はい? ……は、はっ、はいいいいいぃぃぃぃいいいいい?????」
え、ええっ、どういうことおおおおお?!?!?!
「こうなったのも私の責任だ、このままではお前はすぐに死ぬ、
どうしようもないから、仕方ないから婿に貰ってやる、一生面倒見てやろう、そのかわり未来永劫、
死ぬまで私に絶対服従だ、いいな、お情けで、仕方なく、同情で、結婚してやる」「……いいの?!」
うん、本当に、
様々な意味で『えっ、いいの?!』だわ、
すると返事なのか、アレクスさんの方から熱い口付けを……!!
「ええっとエルディス様、ここまでわかっていらしたのですか?」
「いや、ワシも84年生きて来て、さすがにこれは予想外だ、驚いた」
「こういう恋愛も、あるんですね」「あの貴族と結婚するのが嫌なだけじゃねーか?」「こらエアリー、聞こえるから!」
聞こえたからどうかはわからないけれども、
わなわなと震えながら立ち上がる侯爵家の坊ちゃん。
「ゆ、ゆ、ゆるさーーーん! 我があれくすちゅわぁあ~ん、は、すでに婚約を」
隣のガイア様が、
まあまあといった感じでなだめる。
「これは2人の問題、しかもオムイは王命で勇者として魔王討伐の旅へ、
それにアレクスが同行するとなると、こればかりはいかに上位貴族でも止められませぬぞ」
「そんな、そんなぁ」「一応、侯爵家当主には謝っておきますが、坊ちゃん、あきらめてくだされ」
膝から崩れ落ちた坊ちゃん、
一方、審判の去った闘技場の中心で、
アレクスくんとオムイくんは……あーあ、まーだやっている。
(ひょっとしてこれ、オムイくん、気絶してない?!)
白目剥いていそう。
「あのガイア様」
「どうしたティナ嬢ちゃん」
「ガイア様はこの結末、予想は」「当然……まったくの予想外だ!!」
なにこのバッドエンドなハッピーエンドっていう感じは。




