第2話 早速ダンジョンで選別、ジジイの監視付き!
「このダンジョンだ」
四人の若き勇者が自己紹介を終え、
勇者用の馬車とかいう魔物を寄せ付けない乗り物で連れてこられたのが、
なんでも勇者様専用のプライベートダンジョンだとか、訓練用らしいけれども……
「エルディス様、このダンジョンに居るのは魔物でしょうか」
「ああ、五十年前に魔王を倒した時、生け捕りした魔物をここで育てていてな」
「なぜそのようなことを」「弟子や子供の訓練用、更に希少な魔物は高く売れるからの!」
私の問いに鼻息を荒くする伝説の勇者様、
84歳にしてはガタイが良いけれど、所々のしわは正直ね、
そのエルディス様が手をかざすとダンジョンの入口が開いた。
(石扉が左右に開いて、中から派手な色のゴブリン達が!)
早速、四人の若き勇者がそれぞれ倒してくれた。
「ティナよ、彼らに任せても構わぬか?」
「え、ええ、しかし私に出来る事があれば、何でも」
「むしろ何が出来る」「回復、浄化、光魔法、あと……」「十分だ」
大きく頷いた老勇者エルディス様、
一応、腰に大きな剣を付けていらっしゃる、
そして一緒に進む皆さん、中は壁に光る苔が繁殖しているようで、道はわかる。
「おいおい大師匠、やるのは俺だけで十分じゃねえか?」
「イザル、四人比べて貰うことに意味がある、それに皆を置いて行こうとするな」
「へっ、最下層以外、何百階潜ったと思ってるんだ、今更だぜ、ティナ! しっかり見てろよ!!」
やんちゃな感じの勇者、
17歳のイザルだが自己紹介の時、
いきなり『ほう、お前が俺のハーレムに加わるのか』とか言われてゾッとした。
(確かに聖女は勇者に弱い、それは認めるわ)
魔力の高い女僧侶や聖女は修道院や男子禁制の教会で長く育てられる、
そんな男を知らず男に憧れる女の子が、勇者様とパーティーを組むというだけで、
落ちやすい部分は確かなのだが、こんな『ハーレム当然!』みたいな男は絶対に嫌だ。
(中にはこれくらい強引なのが良いってもの居るでしょうけど)
会っていきなり『勇者様、私を正妻にして下さい』なんて言う聖女は、本の世界だけで十分。
「おい待て、女性は歩幅が短いのをわかってないのか?! ティナさん、お手を」
「あっはい、ニルド様、その、私なら大丈夫です」「いや、苔で滑ってこけたら大変だ」
「そういうニルドも入口で少し滑っておったぞ」「エルディス師匠、聖女様の前です、見なかった事に」
と言うかっこいい18歳の勇者ニルド様、
紳士的な所や周囲に気を配る態度といい、
まさに勇者の中の勇者、イケメンに初対面から私も見惚れてしまった。
(とはいえ、まだ中がどんな方かわからないので、慎重に)
ニルド様に対して慎重なのと同時に、
私も足元を慎重に歩かないといけない、
いざとなったら胸元に隠れた妖精エアリーが助けてくれるけれども……
「きゃっ! ティナさまぁ、横からスライムがぁ」
「ええっとフィオネさん、急に抱きつかれると私が驚きますが」
「危険を知らせてさしあげたのですよぉ、さあ、もっと私に密着なさって♪」
ねっとりとした目で見てくる女勇者フィオネさん19歳、
この中で最年長(保護者の見守りジジイを除く)なのだけど、
自己紹介でやたらと『守ってあげる』アピールをしていたのは、こういうことなのね。
(これは捕食者の目、しかも同性に向けた……!!)
英雄色を好むとは言うけれども、
さすがにそういう趣味に呑みこまれたくはない、
もちろん同性愛の存在自体は否定しない、私だって教会で、
『ざんねーん男の娘でしたー!』『何が残念だゴルァさっさとケツ向けろ!!』
という男性同士の本を嗜んだ事はある、
でも実際にこうして年上の女性に狙われると、
寒気がするし、やはり私にそういう気は無いのだと安心すらする。
「おいオムイ、早く来ないと置いていくぞ」
「大勇者エルディスさま、すみません、後ろの敵にも気を付けていたので」
「そんなもの前を向きながら後ろに剣を振って倒せ」「無茶です」「その程度の敵しかまだ出んじゃろ」
16歳のおどおどした勇者オムイくん、
私より年上なのに弟みたい、いや小動物系? かといって保護欲は湧かない、
この私に母性本能がとか、そういう話の前にまず男としてこれはどうなのって思っちゃう。
(でも、これを『かーわいいー』ってなっちゃう女性が居るのも、まあわかるわ)
極端に言えば駄目専とか、
私がこの勇者を育てるのよ! とか、
はっきり言って私はパスだわ、きっと、いらいらする。
(何よ、もう誰を選ぶか答えは出ちゃってるじゃないの)
悲しいけれど、消去法で。
とはいえ、もっと実戦を見ないといけない、
本当の意味で勇者として、一番戦闘力の高いのを選ぶというのも十分ありえる選択だもの、あくまで仕事、陛下からの使命として。
「あ、ちょっと待ってね、聖女服を直させて」
そう言って私はあえて外れた所へ、
皆の見えない位置で服を直すフリして胸元の中を覗いて……
「ねえエアリー、ここまでおかしな所、ない?」
「ここまではね」「じゃあ、ここから先に……?!」
「そうだよ、ボク、このダンジョンの最下層にとんでもない魔物の魔力を感じるんだ」
いったい何を飼っているのよ?!
「ねえティナさまぁ、何かお手伝い出来ることはぁ」
「ひっ?! な、なんでもないわ、ちょっと位置が気になっただけで」
「まあそれはぁ、この私が直してさしあげないとぉ」「もう平気よ、さあ行きましょ……きゃあっ?!?!」
フィオネさんに焦って足元の苔に滑った私!!
「おおっと大丈夫かい?!」
急いで抱き受けてくれたニルド様、
あらやだ、悪い気はしない……って私だってチョロい?!
「遊んでないで行くぞ」
さすが伝説の勇者エルディス様、
確かな足で階段を降りて……って姿が消えた?!
「おわわわわわ!!!」
「大師匠!」「師匠っ!」「お師匠様?!」「エルディスさま!!」
まずいわ、あれ落ちてる、
怪我をしていたら回復魔法を……
と思って下を覗き込むと、そこには……!
「おお、ワシの身体が浮いておるぞ」
あっ、エアリーが妖精の力を使っちゃった!!
(まあいいわ、後で誤魔化そう)
こうして私は、
徐々に強くなる魔物を倒す勇者一行を見ながら、
一緒に訓練ダンジョンの奥深くへと潜って行ったのだった。




