第1話 聖女ティナは勇者のジジイに会いに行く
「という訳だ伝説の聖女クレア最後の弟子、聖女ティナよ」
「はい陛下っ、各地に出現した『魔王』を全て倒して参りますわ」
「15歳でこの重荷、大変だと思うがかつて魔王を倒した伝説の勇者パーティーには、15歳のアサシンが……」
グラナイア大陸の中心にあるストラリウ国、
そこで生まれた私は聖女として持て囃された、
たった4歳で伝説の聖女クレアに弟子入り、も、半年後に師匠は無くなる。
(な~んにも憶えてないのよねぇ……)
思い出すたびに別の聖女の姿が浮かび上がる、
直系の弟子が聖女だけで200人居て、代わりに教えてくれていたから……
しかしみんなは知らない、なぜ私が魔法を使え、それが全て強力かつ魔力が尽きないのか。
「……ということで聖女ティナよ、まずは我が国に居る勇者エルディス殿に会ってこい」
「はい、伝説の勇者様ですね」「そうだ、50年以上前、魔王討伐を成し遂げた我が国の誇りだ」
「そこで出発の報告を」「それだけではない、エルディス殿の子孫や弟子に勇者が居る、見繕ってパーティーを組むのだ」
すでに魔王討伐の核となる勇者様を用意してくれている……
これほどありがたい事はないわね、どんなかっこいい、いや違うわね、
強くて素晴らしい勇者様が待っているのか、今から楽しみで仕方がないわ。
「その、エルディス様に話は」
「してある、なあに、気の良い隠居ジジイだ、何も怖がる事は無い」
「かつての勇者様ですものね」「今や単なるジジイだ、ジジイに会いに行く程度の気持ちで良いだろう」
こうして陛下との話は終わり、
王城を出ると人気の無い建物の陰で、
隠れて胸元を少し広げる、そこから出てきたのは……!!
「ティナ、何でもジジイに会いに行くんだって?」
「伝説の勇者様よエアリー、くれぐれも失礼の無いようにね」
「大丈夫だよ、ボクまた隠れているからさ」「ところで妖精って、どのくらい長生きなの?」「さあ」
再び私の胸元へと入って隠れる妖精エアリー、
私の幼少期から一緒の、唯一の肉親と言っても良い存在、
物心ついた時にはすでに居た、今や滅びたとされる伝説の妖精……。
(小さな小さな男の子に、羽根が生えただけに見えるけど!)
しかし私の魔力が無限なのは彼のおかげ、
使っている沢山の魔法も実は名前の違う『精霊魔法』で、
それを無詠唱で普通の魔法と見せかけて使っている、という秘密は教会でも隠し通せた。
「……あったわ、このお屋敷ね」
王城からさほど離れていない場所に、
大きな庭付きでそびえ建っている勇者邸、
王都の観光名所にもなっている、庭では勇者の弟子、いえ孫弟子、ひ孫弟子が剣を素振りしている。
(あれって確か、お金取っているのよねぇ)
別に悪い事ではない、
教会が信徒から捲き上げているお金に比べれば、
などと思いながら私は勇者の門を叩く、といっても来客用。
(通常門、弟子用の門、来客門ってあるのよね)
入口の案内板にそう書いてあった、
この建物、普段は遠くから見る事はあっても、
こうして中に入るのは初めて……少し緊張する。
「はい」「国王陛下から言われて来ました、聖女ティナと申します」
「お話は伺っておりますわ、どうぞこちらへ」「失礼致します」「ささ、奥へ」
メイドさんに案内されて奥へ、
まずは来客の間かしら、立派な壺やら絵が飾ってある、
魔物の素材らしき角や爪も……おそらく冒険者ギルドへ持って行けば高く売れるでしょうね。
「お紅茶をどうぞ」
「ありがとうございますわ」
「甘い物とかは大丈夫でしょうか」「はい、聖女になると食の制限はなくなりますから」
実質、私は生まれもって制限がない、
だから良いのだが普通は聖女になって初めて肉や過度の砂糖が許されるため、
タガが外れて食べまくる場合が多く、聖女がみな、ふくよかなのはそのせいだったりする。
(私は食べ過ぎると、エアリーがうるさいから……)
むしろ私のお母さんみたい、オスらしいけど。
などと考えながら待っていると、扉がノックされ別のメイドが入ってきた、
今度は年配のお綺麗な、そして深々と頭を下げる、私もつられて頭を下げた。
「聖女ティナ様、準備が整いました」「あっはい」
「ご当主様がお待ちです、『勇者の間』へご案内致しますね」
そして案内された場所は、
まさに国王陛下の謁見の間と同じような場所、
座っているのも玉座だが、そこに居たのは比較的若く見えるおじさんだ。
「よく来てくれた聖女ティナ殿、我は勇者サムエルだ」
「えっ、エルディス様は」「父なら横だ、もう父は84歳、とっくに隠居だ」
「そうでしたか、私は大聖女クレア様の弟子、ティナと申します」「話は聞いている、あちらを見よ」
横の壁際を見ると、
若くいかにも勇者と言った装備の方々が4人居る、
男性3人に女性1人、そしてその横で腕を組んで壁にもたれているお爺さん……
(あのお方が、伝説の勇者エルディス様なのね)
そのエルディス様が口を開いた。
「クレアの弟子か、直弟子か? 計算が合わん気もするが」
「あの、私が4歳の時に弟子に、その4歳のうちに亡くなりましたが」
「そうか、まあ生きている間に取ったらなギリ弟子で良いだろう、そんなことよりもだ」
伝説の勇者様が腕で合図をすると、
4人が一斉に一歩前へ出た、立派な装備、
お金をかけているだけではなく希少な素材を高度な職人が造り上げているのが、聖女の私でも見てわかるわ。
「息子が、サムエルが選び抜いた魔王討伐パーティーの候補だ、4人の3人はワシの血が入っておる」
こうして端から自己紹介が始まった。
(あら、最初の方、イケメン……!!)
いけない、
真剣に選ばないと。




