第16話 ジジイと別行動で教会へ!
「はいはい次の方どうぞー」
「こら横入りしないの、きちんと並んで!」
「俺は急病人だぞ!」「まーたそんな嘘を、まったくもう」「本当だエルマ、急いで受けたい病人だ!」「ふんっ!」「ぐはぁ!!」「あーあ蹴られて……正しい次の方!」
早朝から私は何をやっているかというと、
ここ鉱山の街で教会に来て皆さんの治療です、
本来は高いお金で高級ポーションを買ったりヒーラーにお願いする所を、なんと料金自由!
(若手の聖女がよくする修行です)
本来なら治療効果は若手ゆえ怪しいのだけれども、
私はほら、国王陛下から魔王討伐を依頼された聖女じゃない?
……まあ本当の事を言えばエアリーの精霊魔法のおかげなんだけれども。
「おお、もう治らないと思っていた腕の筋が!」
「はい良かったですね、力加減の感覚を取り戻して下さい」
「ありがてえ、ありがてえ」「お代はそちらのザルに」「おう、これで良いか」
まあ、そこそこ淹れてくれた、
ちなみに私の補佐をしてくれているのは、
熟女メイドで若い頃は投げ武器を得意としていた元戦士のエルマさん。
(列の整理と護衛をしていただいているわ)
あと、元から教会で働いているお爺様方も、
後ろの方の整理をしてくれている、でも力技で強引に割り込まれるとね、
それがさっきの、偽急病人……エルマさんに蹴られて素直に最後列へ並びに行った。
(いざとなったら、何でも投げるらしい)
現役時代はそのしなやかさと、
的確な命中率で『スナイパー女戦士』と呼ばれたらしい、
それにしては見事なハイキックだったわね、しかもメイド服、長いスカートで。
「あっ、お金の無い人は果物でも大丈夫ですよー、はい、次の方ー」
「すまねえ、右足の甲が潰れちまって」「はいはい……はいっ、もう大丈夫ですよ」
「無詠唱で! 本当だすげえ、ちゃんと歩ける」「お代はこちらへ」「ウチの息子で良いか」「いりません」
冗談に付き合うと時間が長くなる、
塩対応とかそっけないとか言われてもいいの、
ひとりでも多くの方を助けられれば……ってちょっとストップ。
「失礼」
下がって隠れて、
胸元に隠れているエアリーに、
浄化したキンカンを渡してあげる。
「んぐんぐ、んまぁ~~~い」
「まだまだ大丈夫? いけるかしら」
「これ食べたら大丈夫になる、任せてよ」
不自然な感じが無いよう、
お水を飲んでみせて、っと……
「水分補給が終わりました、次の方」
「おいおいどけどけどけ、なんでも治す聖女って本当か?!」
ドカドカと入って来た貴族服の坊ちゃん、
丸々太ってあまりお上品とは言えない姿ね、
なんでしょう、教会では、特に聖女の前では国王以外、皆平等なのですが。
「一番後ろにお並び下さい」
「ティナ様、この鉱山を取り仕切っている侯爵家の坊ちゃんです」
「耳打ちが聞こえているぞメイド! そうだ、我が侯爵家はこの教会に多大な寄付をしておる!!」
そして取り出した巨大トカゲ。
「ティムモンスターですか」「ああ、動きが鈍い、治してみせろ!」
「……まず順番はお守りください、そしてそれは単なる食べ過ぎです、放っておいて大丈夫ですよ」
「いや治せ」「自然に治ります」「今すぐ治せ!」「逆さにして振って見れば」「治せないのか?!」「ですから勝手に治りますよ」
遅れて来た執事が、
慌てて耳打ちをする。
「……なんだ王命か、くそっ」
「その態度、陛下にご報告しますよ?」
「ま、まあ良い、今日は闘技場で我の婚約者、その晴れの舞台を見届けるからな!」
トカゲを頭に乗せて出て行った、
あの肥満こそ自分で治しなさいよっていう、
というか、あの貴族がひょっとして例の、アレクスさんを嫁に貰おうっていう貴族?!
「エルマさん、あれがもしかして」
「はい、もうすぐ20歳になるアレクスを身請けしたいと」
「アレクスさんは受けるの?」「流れ的には、いたしかたない、と」
師匠である伝説の戦士様も、
やっぱりお貴族様には逆らえないのかしら、
自分が住んでいる領主様だとしたら、なおさら。
(そういえばアレクスさんも、嫁入りに否定的な事は言っていなかったかも?)
そこまで詳しく本人に聞いてはいないけど、
この後、同僚であるアレクスさんへの求婚組が優勝できなかったら……
今はその話はいいわ、長蛇の列、午前中に治せるだけ治しちゃいましょ。
「はい、改めて次の方、どうぞー」
結果、そこそこ路銀が稼げましたー!!




