第15話 ジジイとの宴、そして若き勇者を慰める
「まったく、あれを破廉恥って言うのね」
「酒に寄った伝説の勇者と戦士は、ああなるんだな」
「エアリー、お酌はしたわ、あんな裸芸の観賞まで付き合ってられないわよ」
夜の宴会が最高潮に盛り上がっている中、
義務は終わった、とお酌はアレクスさんと交代して、
夜風をあたりに中庭へ……と思ったら稽古している戦士が結構いる。
(明日の戦士トーナメントに出るんでしょうね)
午前は2試合っていうから、
人によっては早く寝た方が良いのにな、
そう思って見回すと、見知った勇者がひとり居た。
「おらおら、勇者様なんだろぉ? もっと来いよ!」
「ぐうっ、か、勝ってみせるっ!」「甘いな」「ぐあっ」
「なんだよ、さっきから一勝も出来ないじゃないか」「くそう、くそう」
オムイくん、
良いように遊ばれているわね、
あまりにも可哀想すぎるから、1度くらいなら……
「エアリー」「ほいさっさ」
私の意思を汲み取ってくれて、
オムイくんに無詠唱で魔法を……
防御、加速、おまけに幸運魔法まで!
(あくまで闘いにおいての幸運ね)
別にかけたからって、
商業ギルドの福引で当たったりはしないわよ、
まあエアリーなら細工は出来るでしょうけど、それはまた別の魔法。
「でいやあっ!!」
「うおっ?!」「やった、一本取った!」
「なんだその動きは?!」「わ、わからない」「いつも出せよ」
大喜びのオムイくんに、私はタオルで拭いてあげる、
ってこれ誰のかしら戦士みんなで使っているからいいわよね?
綺麗なのが積んである中から……するとお水をガブ呑みしている。
「……ふう、ありがとう」
その様子を見てさっき戦った相手が察した表情になったが、
私がオムイくんにわからないようにゴメンねのポーズを取ると、
察してか少し頷いて、他の相手の方へ行ってくれた、話の分かる戦士様で良かった。
「明日、戦えると良いわね」
「うん、絶対に認めさせるんだ」
「……どうしてアレクスさんが気になるの?」
少し顔を紅らめて夜空を見上げる。
「最初にここへ来た時、すごく親切にしてくれて」「面倒見は良さそうね」
これだけ男戦士が居れば、
自然とそういう役回りになったんでしょうね。
「でも、ある日、手合せをしたら圧倒されちゃって」
そりゃあ3歳も差があれば、
いくら男と女といえども、ねえ。
「それで惚れちゃったの?」
「どっちかというと、それでアレクスさんが、僕に対して急に厳しくなっちゃって」
「あー……」「やさしくして欲しかったら私に勝てって」「そういうことね」「お前チョロいな!」
エアリーの声に、
怒るどころか恥ずかしそうに……
急に塩対応されて、逆にそれで惚れちゃったみたいなものね。
(ある意味、ハニートラップ的な? 発破の掛け方だわ)
でもまあ16歳勇者(男)と19歳戦士(女)じゃ、
体格差もあって逆転には鍛錬と時間が必要でしょうけど、
それが間に合わなかった感じね、これに関しては相手も成長しているでしょうし。
「もしチャンスが来たら、応援してるわ」
「……でも、さっきみたいなのはナシで」
「気付いていたの?!」「一度、経験したから」
ああ、勇者の訓練ダンジョンで!
このあたりはちゃんと気付いているのね、
そして、きちんと実力でアレクスさんを倒したいと。
(うん、頑張れ男の子!)
私は回復魔法をかけてあげる。
「どういう結果になっても、明日、戦えなかったとしても、
勇者として生きていくのに、闘い抜いて行くのにきっと必要なことよ、
そしてオムイくんは勇者様、みんなが期待しているからこそよ、もちろん私も」「ボクもボクもー」
照れながら笑顔になるオムイくん。
「ありがとう、慰めてくれて……頑張るよ」
「だからといって、私はつきあってあげないわよ?」
「えっ、再戦あっても見てくれないの?」「そういう意味じゃなくて」「察し悪いなー」
最後のエアリーの声に『ごめん』と呟くオムイくん、
そういう所なんだけどな、と思いつつ邪魔しちゃ悪いので退散、
いやほんと、この恋の行方はどうなるのか……何もないのが最有力だけれども。
(さて、寝ましょ寝ましょ)
明日の午前、トーナメント前半の観戦は、
起きられたらで良いっていわれたのだけれども、
私も私で、ちょーっとやってみたい事があるのよねえ。
「エアリー、明日の朝、つきあってくれる?」
「別に良いけど、朝食はしっかり食べさせてくれよ」
「さっき宴会で沢山食べたじゃないの」「あれはあれ、明日は明日」
果物を多めにお願いしなくちゃだわ。




