第12話 前途多難なジジイ勇者!
「ふう、済まなかったな昼食の途中で」
「いえエルディス様、農民の方にお礼で芋や野菜を頂いたので」
「大師匠が済みません、もう年齢的に前には、というか現役時代からトドメ担当で」「「お前が言うな!!」」
なぜかエルディス様と、
妖精のエアリーの声が被ってしまった、
ちなみにエアリーは私の魔法を増強してくれているので、立派な戦力なのよね。
「でもエルディス様、オムイくん、みなさんと戦えたのはそれで収穫です、
というか後で聞いた話ですがあの規模でしたら『まれによくある』ことで、
もちろん被害は最小限に抑えられましたが、農民の皆さんでも何とかなったそうですよ」
もちろんお礼は言われた、
ついでに薄く広くだけれども、
魔物避けの浄化魔法をかけてきました!
「まあオムイの言った通り、ワシは最終手段とでも思ってくれ」
「では急いで前衛を揃えないといけませんね、次の街で戦士様を」
「あとアサシンだな、ヤツの居所は誰かが知っておるだろう、ワシは知らん」
前途多難だわ、
見るとオムイくん、
なんだか窓の外を見てそわそわしている。
「どうしたの、おトイレ?」
「い、いや、そうじゃなくて、もうすぐ会えるなあって」
「コイツのライバルだ、勝って仲間にしたいんだろう」「う、うんっ!」
急に張り切った顔になった、
きっと仲良しなんでしょうね、
彼とは別ルートになるにしても、お互い魔王討伐のために頑張って欲しい。
(勝てば仲間に、かあ)
勝手に友情物語を思い描く私、
それを補完する訳ではないけれども、
私はオムイくんに少し気になったことを尋ねてみる。
「そのライバルには勝ち越せているの?」
「えっと、言ってなかったっけ、1度も勝ててないんだ」
「うーんと、それ、ライバル?」「でも、それでも僕が1度でも勝ったら、何でも言う事きいてくれるって!」
なるほどね、
それで仲間にするために張り切っているんだ。
「負ける事が絶対ないから言ってるじゃないかそれ?」「エアリー!」
「それでも、でもこれからチャンスがあるから、次の1回勝てばいいだけだから!」
「エルディス様、勝てそうでしょうか」「まあ心意気は買ってやってくれ」「そうですか」
オムイくんも前途多難、
これ、やっぱり私がお母さんしないと駄目?!
私にとってある意味、お母さんみたいなエアリーは……って妖精だし。
(あぁ、まだ見ぬ戦士様、よろしくお願いします……)
そんなこんなで夕方、
馬車は鉱山の麓にある無骨な街へ、
賑わってはいるものの、いかにも力仕事の街といった感じ。
「男が多すぎる街だ、独りでは出歩くなよ」「あっはい」
確かに男性が多く見えるが、
お店には女性もちらほら見える、
とはいえ少し年齢を重ねた、俗に言う『おばさん』が多い。
(それでも、いやむしろその方が、鉱山で働く男性の癒しになるのかも?)
もちろん、ここで働いている男性の奥さんって線も多そうだけれど、
教会でも聞いたことがある、結構なお歳を召したシスターの方が落ち着くとか、
相談をし易いとか……特に母性を求める男性には、心のオアシスになるのだと思う。
(あっ、衛兵らしき人もパトロールはしているみたい)
一応は治安維持には気を使っているのね、
これだけの規模だからそれはまあ当然ではある、
馬車は街の奥へ奥へ、すると巨大な石造りの建物が!
「見よ、あれが闘技場だ」
「なぜこんなものが」「労働者に娯楽は必要だ、空いた日はガイアの弟子たちが訓練しておる」
「私も何度かあそこで」「負けたのか」「だからエアリー」「今度、いえ、今回は勝つ!」「ラストチャンスだからの」
あっそうか、
オムイくんも魔王討伐の旅に出ちゃうから、
連れて行くのはエルディス様の言う通り、これが最後のチャンスなのね。
「あ、っ奥にある隣の大きなお屋敷は」
「あれがガイアの家兼道場だ、門番がワシらの馬車に気付いたようだな」
「慌てて中に」「呼びに行ったのじゃろう」「だったらボクも隠れるよ!」「ええエアリー、中へ」
胸元に仕舞って、っと……
そうしてみんなが馬車から降りると、
傷だらけの太ったお爺さんが出てきた、貫録からして、この方が……!!
「おうガイア! 来てやったぞ」
「うむエルディスよ、今すぐに勝負じゃあ!!!」
「え、えっ、ええっっ、えええええぇぇぇぇぇ……」
戸惑う私の声が震えながら、第二章へと続く。




