第10話 ジジイの長話に付き合う!
馬車は王都をようやく抜けた。
「さて、ここからかなり時間がかかる、ワシの話でもしよう」
「えっエルディス様、隣町ですよね?」「とはいっても鉱山の麓、そもそも王都ができすぎる」
「ではいつ頃」「夕方には着くだろう、馬が潰れて良いならワシが手綱を握れば昼過ぎには」「やめてあげて下さい」
どうもお年寄りは無茶しがち、
考え方が古いと言いたいけれども、
実績が伴っている以上、無下に扱う訳にもいかない。
「昼食の箱がきちんと人数分ありますね、あと馬の餌も」
「うむ、ところでオムイよ、ワシ以外のパーティーメンバーを述べてみよ」
「それは50年前の『最強の五人』ですよね」「おう」「あの、パーティー名が『最強の五人』なんですか?」「そうだティナよ」
てっきり称号かと、
通りでパーティー名を私が知らなかったはずだわ、
二つ名だと思っていたのが正式名称だったのだから。
「勇者の中の勇者、彼が攻撃する時、魔王は必ず倒されるという大勇者エルディス様」
「おう、自分の大師匠についてはよくわかっているようだな」「一応は血が繋がっていますから」
「そういえばエルディス様、あの勇者4人中、3人繋がっていると」「おうティナ、繋がってない1人は破門になったな」
あの唯一まともだった……愛の逃避行をしたけど。
ていうかあの百合勇者、エルディス様の血が流れていたのね、
今となっては関係ない、と言いたいけれど教会の後輩を紹介したのだったわ、おそらく同好の士を。
「そして次にお会いするのが、どのような硬い敵も、
霧のようなつかみどころの無い敵もありとあらゆる武具で倒す、
タンクから特攻まで全て行えるオールラウンダー戦士、ガイア様」
大きく頷くエルディス様。
「ヤツの場合は決して便利屋とか器用貧乏とかではない、
長い年月をかけ、全ての戦士武器や戦士戦術を極めた、
本当の意味で、全ての戦士としての力がある、弟子が多種多様なのもそのせいだ」
なんだかガイア様の話をウキウキでしていらっしゃるわね。
「続いて全ての攻撃魔法を極めただけではなく、
新しい魔法まで開発して世に広め、自分しか使えない禁呪も持つという、大陸一の大魔導師スクウィーク様」
「大陸で、何か魔法による大事件が起こると真っ先に疑われるのもあやつだ、まあ以前の行いのせいだうがな!」
な、何をやったのかしら?
国王陛下の話によれば、その弟子も仲間に入れないと、
そういえば私の師匠とも、文通していたらしいけどお葬式に時に一緒に焼いたとか、大量の手紙を。
「いつどこから来たのかわからない闇と影のアサシン、
その素早さは誰も追いつけず、またまともに姿を見た者は仲間以外誰も居ないと言われる、
黒装束のビジランテ、この名前すらも本当かどうかわからないそうですが」「奴は単なる下っ端、パシリで席を外す事が多かっただけだ」
そんな凄腕アサシンをパシリだなんて!
でも、そんなお方にまず弟子と呼べる方がいらっしゃるのかどうか、
現在の所在地とかエルディス様、掴めているのかどうか少し不安になるわ。
「最後にそれら4人を支える大聖女様、
時には光魔法で攻撃を、時には回復魔法で完全ある癒しを施し、
現在も伝説として語り継がれ、その弟子は1000人を超えるという聖女クレア様」「うむ、正直怖かった」
えっ何がー?!
まあ教会内でも色々と伝説は聞いたわ、
悪人を自白させるために壊しては癒し、壊しては癒しを繰り返したとか。
「リーダーは大師匠のエルディス様だったのですよね」「おう、弟子に、孫弟子にも嘘はつかん」
「私もそう聞き伝えられております」「しかしティナよ、本当の意味でのまとめ役はティナの師匠だったぞ」
「まあ、唯一の女性でしたし」「クレアを怒らせると地面が割れる、とまで我々の間で噂になっていてな」「怖いですね」
教会では『堕天使が暴れまわる』とか言われてたそうよ、言わないけど。
「とにかくだ、その中でまずはガイアの話をしよう、
ワシの相方にしてライバルにして親友にして定期的に対決を……」
「それよりボクの仲間について教えて!」「なんだ妖精」「エアリーだよっ!!」
まずは自分の気になる話を聞かないと、
気が済まないみたいね、まったくこの子は……
とはいえ、ずっと1人で居たもの、仲間の存在はとても気になる所でしょう。
「妖精の集落では男がめったに生まれない、婿不足を嘆いていたな」
「えっ本当?! ボク、男だけれど」「もし生き残っていたら歓迎されるだろう」
「早く会いたいなぁ」「随分と昔の話だぞ、もし居てもババアかもな」「ジジイが言うんだ!」
こらエアリー、という感じで軽くはたく私。
「まあ人間が乱獲したからな、焼いて食えば魔力が無限になるとか不死になるとか」
「えっそうなの?!」「スクウィークによればほとんど嘘らしい、せいぜい少し魔力が回復するだけだとか」
「試したの?!」「いや、魔法で分析しておった、着替えは加えていなかったぞ」「だったらボク、安心するー」
私もエアリーのことは、
妖精については実際のところ、
あまり詳しくは知らない、だってエアリー自身が知らないのですもの。
「ちなみにその集落で妖精が言っておったのが」「なになにー?」
「世界中にある『母なる樹マザーツリー』のうち7本と出会うと、何でも望みが叶えられると」
「それ、本当に?!」「ああ、そのために旅立って帰らない妖精が多かったらしい、何でも人間にすらなれるとか」
エアリーが人間に!
妖精のお仲間が全滅したのであれば、
それはそれでアリなのかも知れないわね。
「それ、やってみたい!」
「だがのう、1本の場所はわかっていても、残りまでは」
「そもそも7本も残っているのかという問題が」「オムイ、確かにそれはある」
現にエアリーを護っていたというのも、
出た瞬間に枯れてしまったって話だから……
それがこの世界に残されていた、最後の一本ということもありうる。
「まあ妖精村は必ず寄る、そこまではつきあってやろう」
「ほんとにぃ?!」「だがなあ、最近は物忘れも多くてなぁ」
「かんべんしてよぉ」「他のメンバーにも聞いておいてやろう、さて、妖精の話はもういいな? ガイアとの最初の出会いはだな……」
こうして道中は、
勇者エルディス様のお話で退屈しないで済みました!!




