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第五十話 専属薬師

 アイネルを走らせること二時間半、アレクの牧場が見えてきた。


 アレクの牧場を訪れるのはいつぶりであろうか。毎日の濃さ故に、とても長い間アレク夫妻の顔を見ていないようにさえ思えていた。


「カズトくん! あ、いや、領主様。今日はどうされたのですか??」

 外で農作業をしていたアレクが俺達を見つけ、声を掛けた。


 俺はアイネルから降り、アレクに近付いてこう答えた。

「アレクさん、お久しぶりです。領主様だなんてやめてください。今まで通り、カズトと呼んで欲しいです」

「そうかい? じゃあカズトくん。おかえりなさい」

 アレクはいつもの優しい微笑みで俺を迎えてくれた。


「早速で申し訳ないのですが、牧場で作っている堆肥を分けていただきたいのです」

 俺はこの世界にきた当初、アレクの牧場で手伝いをさせてもらった期間があった。その時に堆肥作りも手伝っていたのだ。


「堆肥を?? 使い切れないほどあるから別に構わないけど、何に使うんだい?」

「それが実は──」


 俺はアレクに『ミノタウロス』のことを正直に話した。そして牧場の堆肥が対『ミノタウロス』戦での切り札となるかもしれない、と。


「そうか。『ミノタウロス』まで姿を見せ始めたんだね。──カズトくんの頼みとあらば、出来る限りの協力はさせてもらうよ。だから遠慮なく言っておくれ」

「──はい。感謝します」


 俺とアレクがそんな会話をしていると、遠くからアイネルに乗り近付いてくる人影に気付く。まだ遠く離れているため、その顔をはっきりと確認することは出来ない。


「あれは……?」

「ああ、あれは薬師さんだね。家畜用の薬を定期的に届けてもらっているんだ」


 真っ直ぐにこちらへと近付いてくる。しばらくして俺は、その人影に見覚えがあることに気付いた。

「あれは……アイリス??」

「そうだね、顔見知りかい?」

「王都への途中でグリズリーに襲われていたのを助けたことがあって……ミズイガハラへ行くとは言ってましたが、まさかここで再開するとは」

「あはは。あの子は牧場に来た時も家畜達に追いかけられているんだよ。もしかすると動物に好かれる何かを持っているのかもしれないね」


「アレクさん、こんにちはー」

 アイリスがアイネルから降り、アレクへ挨拶した。

 アイリスは相変わらず幸薄そうな顔をしている。


「こんにちは。いつも遠くまですまないね」

「お話の途中みたいですので、あちらで待たせていただきますね」

 アイリスは畜舎を指し、そちらへと向かおうとした。

 アイリスは俺の存在に気付いてはいるものの、誰であるかまではわかっていないようだ。


「いいえ、もう話は終わりましたよ。──アイリスさん、こちらでどうぞ」 

「あ、そうでしたか。ありがとうございます……ってなんで僕の名前を!?」

 アイリスはここでようやく俺の顔をみる。


「──カズトさん!? どうしてここに??」

 アイリスは驚きのあまり、その瞳を見開き黒目を大きくさせていた。


「あはは! アレクさんのところには一時お世話になっていたことがありまして。ただまあ今回は別件なのですが。──差し支えなければこのまま同席させてもらってもよろしいですか?」

 俺は薬師の仕事に興味があった。この世界の調剤技術がどんなものかを知る良い機会だと思ったのだ。


「ええ、僕は一向に構いませんが……」

 アイリスはアレクのほうを見つめた。


「ああ、僕も構わないよ」

 こうして俺はアイリスの仕事振りを見学することが出来た。


 アイリスは調子の悪そうな家畜に対し、自ら調合した薬を与えて行った。それは自然の中にある食物や動物を加工して調合したものらしい。

 ただ加工と言ってもそのまま砕いて利用することもあれば、煮出して有効成分を抽出するなど、色々と工夫をより良い薬を作り出しているとのことであった。


 実際にアレクからの評判もよく、アイリスはその幸薄そうな顔からは想像も出来ないほど良い腕を持っていたのだった。


 これならいけるかもしれないな……そう思った俺はアイリスにあるお願いをする。

「アイリスさん、あなたの腕を見込んでお願いがあります。ミズイガハラ専属の薬師になってはもらえませんか?」


「──え?」

 アイリスは突然のことに驚き、思考が停止してしまっているようだ。


 しばらく停止したのち、アイリスが再び動き出す。

「そ、それは大変ありがたいお話です。で、ですが街の専属の薬師ともなると、領主様の許可が必要なのではないでしょうか??」


「ええ。そうですね。──ルッカさん、問題ないですね?」

 俺は同行していたルッカに尋ねた。


「はい。カズト様の仰せのままに」


「と、言うことで問題ないそうです。改めて、いかがでしょうか??」


「え? え??」

 アイリスはあまりのことに理解が追いついていない様子であった。

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