第四十七話 水路①
翌日から俺達は上水道の整備に取り掛かることになった。領主になったとは言え今までと大きく役回りが変わることなく、俺が全体の指揮を執ることとなった。
街の北西部の城壁外を流れる川を利用して、整備していくこととした。
具体的には川沿いに二台の水車を設置し、水を汲み上げて水路に流し込む計画だ。
「ではまずは川を半分堰き止めてください」
俺がそう指示すると、ファティマの配下達は水車を設置する少し上流に丸太の杭を打ち込み、川の半分を堰き止めた。
「なかなか大胆なことをするのう」
当然のごとくファティマもこの計画に参加していた。と言っても、ファティマの役目は時折配下の仕事ぶりを確認する程度で、どちらかと言うと珍しいもの見たさに参加しているように思えた。
「川にそのまま水車を設置しようとすると流れに邪魔されてしまうので、一度流れを止める必要があるんです」
「ふむ。なるほどのう」
そして次に土台作りだ。土台は川の流れを受け続ける部分であるため、なるべく頑丈なものとしたい。
そこで俺はコンクリートを使うことにした。
セメントに砂と砂利、そして水を混ぜ、硬化させればコンクリートとなる。このコンクリートは高い強度を持っているのはもちろんのこと、耐久性や防水性も兼ね備えた画期的な材料である。
木材が建築物の主流であるこの世界において、コンクリートは正にチートレベルの材料であろう。
だが、コンクリートにも弱点がある。コンクリート単体では引っ張られる力に弱いのだ。
例えば土台にしたコンクリートの上に置かれた水車が水の流れを受けた時、水車は倒れようとする。
この水車がコンクリートと緊密に繋がれていた場合、コンクリートには引っ張られる力が発生してしまう。
その力に対応するために、一般には鉄筋コンクリートとして、引っ張られる力に強い鉄筋をコンクリートの中に配置してあげるのだ。
しかしこの世界で鉄筋をつくるとなると、それだけで一大事業となってしまう。
そこで鉄筋の代用として考えたのが竹だ。竹は引っ張られる力に強く、かつ加工が容易であるため、鉄筋の代用としてはこの上ないほどに適している。
この世界の気候が竹に合っているようで、いくつかの山が竹山となってしまうほどありふれたものであり、材料の入手も問題ない。
そして山で採取した竹をしっかりと乾かし、半割にする。この時、コンクリートと密接にくっつかせるために半割竹の所々に鍵状の凹加工を施しておく。
その後、竹の表面へ瀝青を全面に塗りたくる。と言うのも、コンクリートの内部は水分を多く含んでいるため、竹を生身のままコンクリートに埋めてしまうと、竹が腐食してしまう恐れがあるのだ。
「次はこの竹を用いて籠をつくります。これがコンクリートの骨になりますので、とても大切なものになります」
俺は事前に準備しておいた腐食防止を施した竹を指し、籠の作り方を説明していった。
「ふむ。こんなものが骨となるのか」
ファティマは不思議そうな表情を浮かべながら竹を手に取り、そしてその竹を手でしならせるようにしてまじまじと眺めている。
腐食防止を施した竹を、竹同士が20センチメートル程度の間隔が開くようにして籠状に組み上げていく。
これで竹筋の完成だ。
次は型枠の設置となる。
コンクリートは固まるまで、ドロドロとした液体状をしている。そのためコンクリートが硬化するまでの間、その形を保持してあげる必要がある。その時に活用するのが型枠であった。
型枠には一般に木の板が使われることが多いが、この世界では木を板状に加工するにも手間が掛かる。
そこで、今回は鉄平石を竹の籠の周りに積み上げて型枠代わりにすることにした。
高さとしては川の水位よりも1メートルほど高くなる程度まで積み上げていく。
木の板を利用した場合には、コンクリートが硬化した後に型枠を取り外すのであるが、鉄平石であればそのまま存知可能であり、美観およびコンクリートの保護も兼ねることが出来るため、中々に適した材料である。
そして鉄平石同士はセメントと砂、そして水を混ぜ合わせたモルタルを使って積み上げていく。要領としては粘土を使った積み上げと一緒だ。
今回は相当な高さまで積み上げる必要があるため、数日掛けて積み上げることとなった。
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