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第四十六話 セメント

 そうしてミズイガハラへと戻った俺は、領主としての任に追われてた。

 だが、ルッカの補佐のおかげもあり、慣れない仕事も滞りなく勤めることが出来た。


「カズト様、お願いされていたものが届きました。ご確認をお願いします」

 ルッカはそう言うと俺を館の外へと連れ出す。

 するとそこにはクウネルの荷車が灰色に近い白い岩石を積んで停車していた。


「カズトさん、これでよろしいですかぁ?」

 俺は荷車へと近付き、クウネルの運んできた岩石を確認する。

 そして荷車に積まれていたハンマーを使って岩石を叩いた。


 すると、岩石の一部が欠け落ちる。


「これならいけるかもしれませんね。それでは俺の家までこれを運んでおいて下さい」

 俺は領主になってもクウネルから購入した家を手放していなかった。と、言っても住まいは領主の館に移らざるを得なかったので、別荘のような扱いではあるが。


「わかりましたぁ。今度は何をするのか楽しみですねぇ」

 クウネルはねっとりとした笑みを浮かべながら、アイネルを走らせていった。


 --------


 クウネルに少し遅れて俺達も我が家へと到着する。

 領主になってからというもの、どこへ移動するにも従者達がついて来て少し億劫であった。そしてもちろん、グレースも俺に同行していた。


 そして俺の家にはこの日までに集めておいた粘土、砂漠の砂、鉄鉱石とともに石灰岩が置かれていた。

 鉄鉱石は錆びたような褐色を示したもので、出来るだけ脆いものを選定しておいた。


 早速俺は従者達にも手伝ってもらい、作業を開始する。


 まずは石灰岩、鉄鉱石をそれぞれ粉々になるまでしっかりと粉砕して粉状になるまですり潰す。

 そして粉砕したものと粘土および砂漠の砂を一定の割合で混ぜ合わせる。ここでしっかりと撹拌させることが大切だ。


 次に、混ぜ合わせて出来た粉状の材料を焼いていく。ここでは硝子作りで使用した窯を利用する。


 しかし本来であれば徐々に高温にして焼成していくものではあるが、この世界ではそんなことが出来る設備はない。

 そこで俺は、それを手動で行うことにした。


 焼成時間が進むに連れて火力を増していく。しかし、そのまま焼成を進めてしまうと、大きな塊となってしまうので、状況を見ながら炉を開けて中に敷いた原料を混ぜ合わせていった。


 その後焼成が最大温度になった頃を見計らい、炉から全ての原料を一気に取り出す。

 取り出された原料は白味がかった灰色で塊状となっており、塊からは熱気による陽炎が生じていた。


 そしてその熱気を吹き飛ばすかのように風を送った。大人数でひたすらに風を送った。

 それと同時に、全体が均一に冷やされるようにしっかりと撹拌していく。

 この時、塊状になっているのを崩しながら冷却させていった。


 熱がしっかりと取れたら、小さな塊となった焼成されたものをさらに粉々に砕き、粉状にすり潰す。


 これでセメントの完成だ。


 セメントは主に接着剤として利用されるもので、コンクリートやモルタルの主原料でもある。この原料があれば、さらに大きな構造物など多方面での発展が期待できる。


 そしてセメントを使って最初に取り組もうと思うのは、上水道の整備だ。


 現在ミズイガハラでは街の外れを流れる川に水を汲みにいく、もしくは井戸を掘って地下水を汲み上げて使っていた。

 これがなかなかに重労働である上に、かなりの時間を使ってしまう。水を大量に利用しようとなると水汲みだけで日が暮れてしまうほどだ。


 しかし、この街のさらなる発展を考えた場合、水の確保は最優先事項となる。

 人口が増えた場合もそうであるが、これから何かを作っていくとなると必ずと言っていいほど水が必要となる。


 そして水を確保する仕組みとしては実はそう難しくはない。今回作ったセメントにファティマやクウネル、そして領民の協力があれば問題なく上水道の整備が出来るだろう──。


 俺はそんなことを考えながらセメントを見つめていた。

 するとその姿を不審に思ったルッカが俺に声をかけた。


「カズト様? どうされましたか??」

「あ、いえ。すみません。少し考え込んでしまって」


「それでぇ、これは何なのですかぁ??」

 クウネルが俺に食い気味に問いかけてくる。


 そして俺はクウネル達にセメントのことやその利用方法について説明した。今後の計画についても簡単に説明したが、その話を聞くクウネルの瞳はいつになく輝いていたのであった。

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