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四十五話 デリック

 滑車を完成させた俺達は、港直上の崖へと移動していた。荷物を引き揚げるための機構をつくっていくためだ。


 今回は幅2メートル、奥行き1メートルの長方形型の木製の荷台を楊重させる。幅方向の両端部にそれぞれ、楊重機構を設けることとしたため、二つの骨組みが必要となる。


 まずは崖の端から2メートルほど離れた地面に穴を掘り、3メートルほどの柱を埋め込む。その柱の海側の根元部分に対して、海側陸側の前後方向に可動となるように長さ4メートルほどの支柱を取り付ける。支柱が傾斜することで支柱の先端が崖から飛び出すような仕組みだ。


 そして柱には海側を向くように1個の滑車を、支柱には海側を向くように上下に1個ずつ、陸側には先端に1個の滑車を取り付けておく。


 柱と支柱の根元にはそれぞれ一つずつの手動ロープ巻取り装置を設置した。ホースの巻取り装置の大型版のようなものだ。

 一つは支柱を上下に可動させるためのもの、もう一つは荷台を引き揚げるためのものである。


 続いてはそれぞれの滑車に対し、ロープを二本通していく。


 まずは支柱を可動させるためのロープを通していく。

 柱先端の滑車の真下にロープの先端を縛り付ける。

 そしてそのロープを支柱先端の陸側の滑車に下から回すように通し、そのまま柱の滑車へも上から回すように通す。

 柱に沿うようにして柱の根元に設置した手動ロープ巻取り装置にロープを縛り付けた。


 これで支柱の前後方向への傾斜機構は完成である。


 手動ロープ巻取り装置の取っ手をくるくると回してあげると、柱に通されたロープが巻き取られ、支柱が起こされるように引き上げられた。


「「「おお!!」」」

 従者達はこのように可動するような機構を初めてみたのであろう、揃って驚きの声をあげていた。


 そして次は荷台を引き揚げるためのロープを通していく。


 先ほど同様に、支柱先端の滑車の真下にロープの先端を縛り付ける。

 そのロープを支柱先端の滑車に上側から回すようにして通していく。

 この時、ロープをU字型に垂らし、崖下の地面まで届くほどの長さの余裕をロープに持たせておく。


 そしてそのまま支柱に沿うようにして支柱の下部に取り付けた滑車に通し、支柱の根元に設置した手動ロープ巻取り装置にロープを縛り付けた。


 これで荷台の楊重機構の完成となる。

 支柱の手動ロープ巻取り装置の取っ手をくるくると回してあげると、支柱に通されたロープが巻き取られ、U字型に垂らされたロープが引き上げられた。


 そしてもう一台の骨組みも、これと同様にして作成した。


 最後に荷台と楊重機構をフック付きの滑車を使い接続する。

 荷台には奥行き方向の両端部からおおよそ正三角形となるなるような角度で、上方向が頂点となるようにロープを張った。


 ロープをU字型に垂らした部分にはフック付きの滑車をフックが下側へくるように取り付け、そのフックには荷台の正三角形に張ったロープを引っかける。


 これにより支柱の手動ロープ巻取り装置を回せば荷台を上下させることが出来るようになった。


 そして早速荷役の方たちに使ってもらうことにした。

 最初は初めて見る装置に不信感を抱いていたものの、使い方を説明し実際に使ってもらうことでその不信感はすぐさま払拭されていった。


「「「これはすごい!」」」


 皆口を揃えてそう言った。

 それもそうであろう。機構こそ簡易的なものであるが、やっていることは元の世界の港湾で行われていることとほぼ同じまで昇華させたのだから。


 とは言え、この装置により港からの荷の運搬は以前とは比べ物にならないほどに楽になった。

 効率としては十倍はくだらないのではないであろうか。

 この装置はそれほどまでに効果的なものであったのだった──。


 --------


 この装置のことがグレースを通し国王へと報告され、俺は再び謁見の間へと呼び出されていた。

 前回と同様に、謁見の間は物々しい雰囲気に包まれている。


 ひざまずく俺に対し、国王が言葉を発する。

「お主の変革、見事であった! 荷役からも良い話ばかりが上がってきておる。--まさかあのような装置を数日のうちに作ってしまうとは、我の想像以上じゃ」

「はっ。ありがたきお言葉」

「して、あの装置の名は何というのだ?」


 俺は少し考えたのち、こう答えた。

「──あれの名はデリックと申します」

 あの装置は元の世界にも存在していたデリックと呼ばれるクレーンを基にして作成したのだった。今回はそれをそのまま名前として国王へと報告した。


「そうか。デリックと言うか。──我はお主の事が気に入ったぞ! お主がミズイガハラで何をするのか、じっくりと見させてもらおう」

 国王はそう言うとグレースに目配せをした。


「本当ならば我が直接お主の変革を見てみたいところではあるが、立場上そう簡単にここを離れることが出来ん。故に、お主にはグレースをつける。──グレースよ。我の目、我の耳となりてお主の変革を我に届けよ!」

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