第四十三話 王都
「--久しぶりの海だな」
俺は独り言のようにボソッと呟いた。
断崖にほど近い街道を行く俺達の左側には大海原が広がっていた。断崖へと打ち付けられた荒波はその言葉通り荒々しく立ち昇っている。
風にのせられて運ばれる潮の香りもどこか心地いいものであった。
「カズトよ、あれが王都だ」
そして街道の先にはついに王都がその姿を現した。
王都は遠目で見ただけでも相当な広さであることがわかり、この国の力を感じさせられる。
俺達は王都に向けて歩みを進めていくと、次第にその全貌がみえてきた。
石が積み上げられた城壁が設けられ、王都の入り口には大きく重厚な扉も設けられている。
開放された扉からは王都の内部の様子も確認できた。
そこは大勢の人が行きかい、非常に活気のある街だ。ミズイガハラも活気のある良い街ではあるが、王都のそれは規模がはるかに異なるものであった。
そして崖の下には港のようなものも見え、数隻の船舶も停泊している。
そこから王都へは数百段はありそうな階段でつながっており、沢山の人が荷物を抱えてその階段を登っていた。
停泊している船舶はこの世界の建設技術とは似つかわしくないほど立派な帆船で、この世界は海上輸送の技術が想像以上に発展していることがうかがえた。
「--これが王都」
俺達はついに王都へと到着した。入り口脇の駐機場に荷車やアイネルを置き、改めて王都の内部を見回した。
建物のつくりにミズイガハラとの大きな差は感じられないが、王都の道はそのほとんどが石畳で整備されている。城壁も含め、多くの時間と労力が使われているのがわかる。
この国にはそれほどまでの国力があるということなのであろう。
「ではぁ、私はここで一度失礼しますねぇ。別件がありますのでぇ」
クウネルはそう言うと、一人王都の街へと姿を消していった。
「では俺達も行きましょう。他の方たちはここに残り、帰路に備えて補給を行っておいてください」
俺はファティマに加え、事前に同行を依頼しておいた副隊長と警備隊員2人と共に王宮に向かうことにしていた。
とは言え、ミズイガハラよりもはるかに大きい王都だ。歩きでは日が暮れてしまう。
各自アイネルに跨り、王都の中央に鎮座する王宮を目指した。
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ファティマが事前に送っていた使者のおかげか、俺達はすんなりと王宮へと入ることができた。謁見にはもうしばらく時間がかかるということで、客間にて待機しているところであった。
しかし、改めてみるとこの王宮の力の入れようには目を見張るものがあった。
この王宮こそが王都の力の象徴と言わんばかりに、想像以上に煌びやかで豪華なものであった。屋根も高く開放的な空間であることに加え、建物の至る所に装飾が施されている。
建物の規模としても規格外のもので、それこそミズイガハラの領主の館が5つは入ってしまうのではなかろうかというほどの規模であった。
俺はそんなことを考えながら、客間をじっくりと観察していた。
すると客間の外より、案内人らしき人物の声がする。
「失礼いたします。国王陛下の謁見の準備が整いました。謁見の間へとご案内いたします。カズト様、ファティマ様のみこちらへお越しください」
そうして俺達は警備隊員を客間に残し、謁見の間へと通されたのであった。
謁見の間には入り口から玉座までつながる赤絨毯が敷かれており、その両脇には多数の衛兵が列していた。
謁見の間は物々しい雰囲気で包まれている。
俺達は玉座を前にひざまずくように片膝をつき、その頭を垂らした。
そして謁見の間の玉座に鎮座する国王へと領主交代の報告を行う。
「──ミズイガハラ領主カズト。本日は領主交代のご報告に参りました」
「うむ。既にその件は報告を受けておる。わざわざご苦労であった」
「はっ! ありがたきお言葉」
この時、俺にはある違和感があった。この声は……女性……??
「まあ、そう固くなるな。どれ面を上げてその顔をよく見せてみよ」
その言葉に従い、俺たちは顔をあげた。
すると俺の目には玉座に鎮座する女性の姿が飛び込んできた。その姿は煌びやかな衣装に包まれ、その顔も美麗で高貴な雰囲気を醸し出している。腰ほどの長さまである金色の髪もその高貴さを助長していた。
しかしそんな高貴さの裏に、どことなくあどけなさを感じるものもあった。
あ、あれ……? 謁見の間に入った時は、空間の仰々しさに押されて周りがよく見えていなかったが、まさか国王が女性であるとは全く気付いていなかった。
と言うよりも、『国王』という言葉の固定概念によって男だと決めつけてしまっていたのであった。
「ほほう。中々に良い面構えをしている。して、カズトよ。お主は知識と新しい発想でミズイガハラの街を守り、そして変革を与えたと聞いているがそれに間違いはないか?」
「はっ。恐縮ながら陛下の仰るとおりでございます」
「そうか。ではカズトよ。お主の目から見てこの王都はどう見える? ──我はまだまだ満足してはおらん。もっともっと優れた街にできるはずじゃ。お主の率直な意見を申してみよ」




