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第四十一話 料理の腕前

 翌日、俺達は王都への街道を再び進んでいく。


 グリズリーは可食部分を綺麗にそぎ落とし、残された骨や皮、そして爪といった部位はクウネルに引き取られた。

 これだけの大物であればそれ相応の値段で販売が出来るのであろう、その時のクウネルの顔はいつにも増して不気味な笑みが浮かべられていた。


 そしてアイリスとはあの森で一度別れることとなった。ミズイガハラへ行き、薬の販売をすると言う。

 アイリスが言うには各街を転々としながら薬の販売をしているらしいので、またそのうち会う機会もあるであろう。


 森から離れ、しばらく進んでいると俺達の先に大きな川があるのがみえてきた。

「大きな川ですね」

「うむ。この川はクレール川といってのう。下流にはこの国で最大の湖につながっておるのだ。もう少し進めば見えてくるはずだが……」

「──あっ! あれですか!?」

 地平線の彼方にぼんやりと湖のようなものが見え始めた。


「うむ。あれだな。──時間も時間だ、あそこで一度休憩を取るのはどうかのう?」

 アイネル達も荷を引き続け、少し疲れている様子であった。

「そうですね、ちょうど昼食の時間ですし、あそこで休憩を挟みましょう」


 そしてしばらく進むと俺達の眼前にはミズイガハラの街が何個も入ってしまうほどの大きな湖がその姿を現した。

 その湖は上流と下流に川がそれぞれつながっており、天然のダム湖として成り立っているようであった。


 俺達の一団は湖岸にベースキャンプを簡易的に設営し、昼食の準備を始める。

 手の空いているものは湖に入り、魚を獲り始める。皆、魚獲りに慣れているようで、槍などの有り合わせの道具を使っていとも簡単に魚を採っていく。


「今日は新鮮な魚が使い放題だね!」

 いつにも増してレイミには気合が入っていた。

 それもそうだろう、生ものの保存方法に乏しいこの世界では新鮮な魚は貴重品なのだ。それも獲れ立てともなれば、今日のように自分で獲るしか方法がないのだから。


 そして俺は皆に昼食の準備を任せ、湖の周りを散策することにした。

 湖にはいくつもの湖岸が形成されており、上流側の湖岸は砂利や石のようなものが多い砂利浜であった。

 その砂利は川の流れによって山から運ばれてきたのであろうか、その多くは角が取れ丸みを帯びていた。


 これなら下流側にはもしかすると……。


 俺はそう考えると、急いでベースキャンプへと戻った。

 そして荷車を引かずに元気が有り余っていた俺のアイネルに跨り、下流側へと走らせた。


 下流側へと進むに連れて、砂利浜の砂利は小粒になっていく。

 徐々に徐々に小粒になる砂利浜には、次第に砂の存在も目立つようになっていった。


 その時俺はさらに下流側の湖岸へと目を向けた。

 そこには灰褐色の砂浜が形成されていたのであった。


 そしてふとベースキャンプの方へと目を向けると、レイミ達が随分と小さく見えた。

 大分遠くまで来てしまったようだ。


 昼食に遅れてしまっては怒られてしまうな……。

 俺はそう思い、急ぎベースキャンプへと戻るのであった。


 --------


 ベースキャンプへと戻ると、レイミが魚を捌き始めていた。

 その手際は見事なもので、大量に獲られた魚たちはみるみるうちに三枚おろしにされていった。


 次にレイミはニンニクをみじん切りにし、大きな鍋へと投入した。

 火にくべられた鍋は十分に熱せられており、ニンニクからは湯気とともに特有のにおいが発せられる。


 みじん切りを少々炒めたのち、白ぶどうの果実酒をその鍋へと注ぎ込んだ。

 一瞬、水分が蒸発する音がしたのち、鍋は静かになる。


 そして捌いた魚に塩コショウを振り下味をつけ、そのまま鍋へと投入した。

 鍋が温まっていくにつれ、果実酒がぐつぐつと音を立て始める。

 そこで火力を少し落とし、煮立たない程度の火力で煮込んでいく。


 魚の身までしっかりと火が通ったころを見計らい、煮込んだ煮汁の一部を小さな鍋へと移し、ソース作りを始めた。

 煮汁にバターと塩を加え、しっかりと溶けるまでゆっくりと加熱する。

 このソースを煮込んだ魚にかければ料理は完成だ。


 そしてレイミは一人分ずつ皿へと取り分け、順々に配膳を進めていく。


「はい、どうぞ召し上がれ! 絶対に美味しいから!!」

 レイミはそう言いながら俺に料理を手渡した。


 俺は早速その料理に口をつける。

「おお! おいしい!!」

 それは淡水魚ならではの臭みなどもなく、うま味がしっかりと染み込んだ濃厚な味であった。


「えへへ! 頑張ったんだから!! カズトくんに喜んでもらえてうれしいな!」

「ふん。何やら含みのある言い方ではあるが、確かにうまいのう」

 ファティマも文句を言いながらもレイミの料理を褒めていた。

 旅団の面々も皆笑顔で食べ進めている。


「私を連れてきて正解でしょー??」

 レイミは誇らしげな顔をしながらそう言った。


 ──レイミの料理の腕前は、その言葉もその顔も納得できるほどのものであった。

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