第三十七話 王都へ
「ど、どういうことですか??」
「どうもこうも言葉の通りだ。お主が領主になれ」
俺にはファティマが何を言いたいのか理解が出来なかった。
なぜ俺が? いや、そもそも俺は部外者どころか違う世界の人間だぞ? 大丈夫なのか??
そんな考えばかりが頭を駆け巡る。
「──なんだ? 何か不満でもあるのか??」
「不満と言いますか、領主を勝手に決めてしまって大丈夫なんですか?」
「無論だ。次期領主の決定権は現領主にある。そして現領主のいない今、その決定権は領主代行たる私にあるということだ」
「……国は口出ししてこないんですか? カンデデも悪政のせいで権力の一部を剥奪されていたと聞いています。──それであれば、どこの馬とも知れないようなヤツをそう易々と領主にはさせないのではないでしょうか」
「ああ、お主の言うことはもっともだ。先ほども話した通り、次期領主の決定権は現領主にあるが、当然国にも拒否権がある。次期領主がどんな人物であるかは国に報告する決まりとなっている」
「では、なおさら俺のような人間ではダメなのではないですか?」
「何を言っておる? もう国には報告してあるぞ。警備隊のヤクマからもカズトの活躍が報告されていたようでな、すんなりと話が通ったわ」
「…………すると、俺には最初から拒否権がなかった。と言うことですか?」
「ああ、その通りだ」
そう話すファティマの顔はどこかしたり顔のように思えた。
「それでな、領主の就任報告をせねばならんのだが、これがまた面倒でな。王都まで行き、国王に謁見しなくてはならないのだ」
「国王に……??」
「ああ、既に謁見の日程も決まっている。明後日の朝、王都へ向けて出発するぞ。よいな?」
こうして俺はミズイガハラの領主を押し付けられることとなった。
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そして翌々日。
俺は朝一番で集合場所へと向かった。
この日の集合場所は街の入り口であったが、そこには荷車10台からなる大集団が列をなしていた。
「カズトくん! おはよう!!」
俺の後方から大きな声が聞こえてくる。この声は──レイミだ。
声のする方へ振り向くと、そこには離れたところから一生懸命にこちらへ走ってくるレイミの姿があった。
俺もレイミのほうへと近づいていき、こう返答した。
「──おはようございます。レイミさん、こんな朝早くにどうしたんですか?」
「えへへ。カズトくん、領主になったから王都まで行くんでしょ?? 王都までの旅路の料理番として一緒に連れていってもらえることになったの!」
俺が領主になるという話は、すでに街中で噂になっているようであった。
しかしその時、物陰からファティマが現れレイミへ指摘した。
「──おい、嘘をつくな。私は許可した覚えはないぞ。お主が勝手につきまとっておるのだろう?」
「んー。でもこの旅団にちゃんとした料理人はいないんでしょ? そうしたら料理番は必須だよー!! 往復で二週間以上の長旅なんだから!」
確かにレイミの言うことには一理あるように思える。二週間もまともな料理が食べれないとなると、旅団の士気にも関わる。
「まあ、確かにそうではあるが……」
「じゃあ決定!! よろしくね、カズトくん、ファティマさん!」
こうして半ば強引にレイミが同行することとなった。
ファティマ自身も料理は苦手な口らしい。そんなファティマには反論のしようがなかったのだった。
そしてレイミの他、クウネルも同行することとなっていた。
今回は荷車や往復分の物資の調達をお願いしていたが、王都で商談もしたいと言うことであり本人も同行することに。
その他、警備隊からも警備の人員を派出してもらえた。
ヤクマは二週間以上もの間、警備隊を留守にすることはできないため、副隊長とサクハ、他10名が同行する。
サクハは今回も斥候として旅団に先行し、街道の安全を確認する役目を負ってくれている。今日も既に出発しているようであった。
「しかし、大事ですね」
俺は誰に言うでもなく、ボソッと呟いた。
しかし、その言葉はファティマに聞こえていたようだ。
「当たり前であろう。仮にもお主は領主だからな。これでも少数精鋭に絞ったほうだ」
「助かります。余計なところであまり経費を掛けたくもないので」
領主の実務に疎い俺のために、ファティマが補佐に回りそのほとんどを代行してくれていた。
正直、俺が領主である必要はないのではないかとも思うが、そんなことを言うと怒られてしまいそうなので黙っておくことにした。
「──よし。皆そろったようだのう。それでは出発するぞ」
そうしてファティマの合図により、アイネル達が動き出した。
ミズイガハラから南西に一週間ほど進んだところに王都はある。
そして王都までの道のりでは途中、大きな湖や活火山、そして海など、この世界に来てからまだ見たことのない景色がたくさん広がっていると聞く。
そしてこの国の王都はどんな場所であるのか。
まだ見ぬ景色に想いを馳せつつ、王都までの長旅が始まったのであった。




