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第三十四話 決戦①

 ヤクマから報告を受けた四日後、ついにその時が訪れた。

「報告します。"ゴブリン"および"オーク"の連合軍を補足しました。およそ三十分ほどででこちらに到達するものと思われます」


 斥候として連合軍の動向を探っていたサクハからの報告であった。

「そうか、ご苦労であった。引き続き連合軍の動向を注視してくれ」

「はっ!」


 そしてヤクマは城壁内でその時を待つ警備隊へ向けて檄を飛ばした。

「この戦いは500年ぶりとなる人と魔物との戦である! ここまで大きな戦いに参戦したことのあるものは我々の中に一人とていないであろう。どんな激戦となるのかは私にも想像はつかぬ。──しかし! 我々は負けることが出来ぬ! 我々の撤退は、即ち、街の消滅を意味すると心得よ! 我々の肩にはこの街の、いやこの国の行く末が掛かっているのだ!! "異世界からの旅人"の教えを今一度思い出せ! そして我らが今日、新たな英雄となろうぞ!!」


「「「「うおおおぉおおぉぉおおお!!」」」

 ヤクマの檄により、警備隊の士気は大幅に向上していた。

 初めての大戦を前にすればどんな屈強な警備隊員であろうとも、少なからず萎縮してしまう。

 それを知ってか知らずが、ヤクマは見事な檄でそれを取り払ったのであった。


「警備隊の士気も整った。あとは君達の働きにかかっているぞ」

 ヤクマは俺達に向かいそう告げた。


「はい、こちらも準備万端です。街を、領民達を必ずや守ってみせます」

「--その言葉、信じているぞ。戦闘開始のタイミングは君に任せる。最善だと思うタイミングで始めてくれて構わない」


 するとその時、街の正面にある森の中からまるで行軍歌でも歌っているかのような魔物の掛け声が響き出した。

「ウォオッ! ウォオッ!」


 その声は徐々に徐々にとミズイガハラへと近付いてくる。

 そしてついに俺達の前に"ゴブリン"、"オーク"の魔物連合軍がミズイガハラの前方へ広がる平地へと姿を現した。


「「「「ウォオオオォオオオォオォォォ!」」」」


「「「「ウォオォオオォォォ!」」」」

 各所から上がる鬨の声(トキノコエ)。それと同時に立ち上がる砂煙。


 魔物連合軍の士気と勢いは振動となり、城壁の上の俺達にまで伝わっていた。


「カズト、相手の数は1万はくだらないぞ」

 ファティマが俺にそう伝えた。しかしその言葉とは裏腹に、その顔はどこか愉しげなものであった。


「ええ。聞いていたより少し多いですね……」


 こちらの軍勢は相手に対して半分の5千。しかも個の力で圧倒的に優位に立つのは魔物達である……。俺達の置かれている状況は正しく絶対絶命とも言えるだろう。


 そして一体の"ゴブリン"が集団から飛び出すと、それを追うように集団も駆け出した。

"ゴブリン"が先行し、そのあとを"オーク"が追従していく。

 人間という獲物を目の前にした魔物達はその統制がとれなくなっていたのだ。


 こちらも弓矢で反撃に出るも、圧倒的な数の前では撃退が追いつかず、じりじりと押される展開となった。


 間も無くして"ゴブリン"が城壁に到達した。"ゴブリン"達は腰に忍ばせたカギ縄を取り出し、城壁の上部に向けて投げ放った。


「ファティマさん、例のものは準備できてますか?」

 俺はファティマに物見櫓の前に穴を掘って水を貯めておくよう、依頼していたのであった。


「ああ。無論だ」


 そしてファティマが火矢を構える。そしてそれに呼応するように弓矢部隊も火矢を構えた。


 瞬間、俺は合図を送る。

「今です!」

 俺の合図を切っ掛けにし、ファティマ達は火矢を放つ。

 しかしその火矢は"ゴブリン""オーク"に当たることはなかった。


「ウギギッゥギィ!!」

"ゴブリン"達はこちらをバカにしたような声を上げている。

 しかしその直後、彼らの背後の物見櫓から炎が上がる。事前に油をたっぷりと吸わせた物見櫓の柱は瞬く間に業火に包まれた。


「ウギギッ?」

"ゴブリン"達は後ろを振り返る。何やら不思議そうに首を傾げながら。

 しかし問題ないと判断したのか、すぐさま城壁の方を向き直し、カギ縄を登り始めた。


"ゴブリン"達の攻城を阻止するため、ファティマ達は城壁から身を乗り出し、直下へ向けて矢を放つ。

 それと同時に多数の風切り音があたりに響く。


 硝子製の(ヤジリ)は効果覿面のようだ。放たれた矢は"ゴブリン"の肉を深くまで抉っていった。


 そしてその時、物見櫓から軋み音が聞こえてくる。

「ギィー」という音と共に、櫓部分が微かに揺れ始めた。

 元々華奢につくっておいた街側の柱は、火矢による業火によってその強度を大きく損ない、強度のバランスが崩れてしまったのだ。


 そしてついには櫓に貯められたアルミニウム粉の重さに耐えきれずに、轟音をとどろかせながら倒壊した。


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