対決!クロトVSミスト&ラビィ12
無理矢理は禁句
「別に十勇士でも良くないか?」
俺は言った。
ユキムラの決意的な発言を踏みにじる様な直球で他の案を出してやった。
そんな俺の言葉を聞いたユキムラは一瞬固まったものの、その柔らかい体をプルプルと震わせて気を取り直す。
「いえ、先程も言いましたがミスト殿が引き起こす事態はダンジョンに損害を与えるもので、そこにやりたい放題の十勇士の内4人が参戦すれば最悪階層が1つ崩壊すると思いますぞ」
なるほど確かにそれは一理あるな。
ロクロウ、コスケ、モチ、ジンパチはこの戦いの最中お留守番の様なものだった。
まず間違いなくコスケには相当なストレスが溜まっていそうだ。
性格から考えるに活発に動きたいタイプだろうし。
他の3人がどうかは分からないがロクロウはその辺慎重にやってくれる筈だ。
モチとジンパチは良く分からないので考えないでおこう。
そして4人がかりでミストと戦うともなればミストもそれなりに本気を出すだろう。
それはつまり被害を考えずに暴れまわる事になる。
結果的にダンジョンにはメリットは存在しない。
ユキムラと言う最高勢力で迎え撃つのは得策かもしれない。
たぶんユキムラが戦いたくてウズウズしているだけだと思うけどな。
俺はユキムラの戦闘能力は高いとは思っているがミストと比べると勝てるかは怪しいと見ている。
と言っても戦闘を見た事はあまりないし、ユキムラとミストって戦ったことあるのだろうか。
……戦力の把握は大事だな。
今度皆の訓練見学しよう。
「よし、ユキムラがそう言うなら任せても良いか?」
「お任せを! 某がミスト殿を完膚なきまでに叩きのめしてやりましょう。今こそ主の素晴らしさを教え込む絶好の機会ですからな!」
俺は何も聞かなかった事にした。
何だよ俺の素晴らしさって。
ただの引きこもりだよ?
何処かの天然系俺TUEEEEEEEキャラと一緒にしないで欲しい。
そう言うキャラは得てして何か大きな事をやり遂げて「凄いこと?」とか言うけどな、俺は違う。
俺は何かをやり遂げている訳でもないし現代知識チートなんざ持っていないんだ。
そんな期待されても困るって言うかさ、君ら俺がそこまで有能じゃないって分かってるよね? 何かやけくそになってない?
このままだと日頃の突っ込みどころを吐き出して1日が終わりそうなので蓋をしておこう。
そして権限解放! ユキムラをいつの間にか57層にまで進出しているミストの真上に転送だ!
「頑張ってこい!」
「必ずやり遂げて見せましょう!」
そのあと意気揚々とミストの元に向かっていたコスケ達にユキムラに任せる旨を伝えると怒られた。
◇◇◇
簡単に説明してしまえばユキムラとミストの戦いは壮絶だった。
その規模は57階層を半壊させ余波のせいで57階層に設置した罠やオブジェクトが軒並み破壊されて経費は赤字を切った。
俺は血の涙を流した。
戦いの様子は俺の一般的な1.5の視力じゃ見ることは難しく、録画しておいて後日スーパースローで再生しようと思っている。
「お疲れ!」
「「……」」
そんな俺は清々しい顔で村エリアにある切り株の上に立ち、地面に正座しているラビィとミストを見下ろす。
結論から言えば俺率いるスライム軍団の勝ちだ。
コアは守りきったし、何よりコイツらは不正行為で敗けなのだ悔しそうな顔が気持ちいいなぁ!
「どうよ、すっきりとした敗北ではなく失格で負けるって。どんな気分?」
「む、ムカつくのさ……」
「クロトも権限使ったじゃん! お相子だよ!」
異議を申し立て俺を指差すラビィに対して俺はふんぞり返る。
バカめ、貴様らはミストが参戦し始めた時点で失格負けになっているんだ、その後で俺が権限を使おうと勝負には関係ない。
俺はルールにのっとって勝負したまでだ。
その様に内容を伝えるとラビィ達は押し黙る。
論破気持ちェェ。
冗談はさておき実際はギリギリの戦いではあったな。
何が起きてたのか良く分からなかったがミストとユキムラの戦いはユキムラが敗北寸前だった。
本来スライムには打撃とかは殆ど効果は無いのだが、ミストの攻撃は通っていた様だ。
「ミスト殿は拳に魔力を纏わせておりました」
との事らしい。
俺にはさっぱりだ。
とはいえ、ユキムラもスキルや武器を駆使し何とかやりあえてはいた。
だが階層が1つ半壊した辺りでどうでも良くなってきた俺は十勇士を全員強制配置しミストをフルボッコにして事なきを得た。
修理が面倒だなぁ。
なお、突然目の前から十勇士が消え、相手をしていたラビィチームの面々は唖然としていたが俺には関係ないことだ。
「さて、じゃあ色々と戦況の確認でもするか?」
「そうそう! クロトわざと十勇士全員とったでしょ!」
「お、流石に気がついた?」
「当たり前じゃん! 念話使えなかったんですけど!」
十勇士を全員引き入れたのは当然念話を円滑に流すためだ。
1人が聞いて次の奴に伝言すると色々と間違えて伝わったりタイムラグが生じるからな。
あとはラビィ達の連絡手段を断つと言う目的もあった。
これはあからさまにやったことだしバレても問題は無いけどね。
「ワテらが奇襲をされたのはどういう訳でごわすか?」
次に質問してきたのは割りとあっさりと捕まったアラミスとポルトスだ。
彼らは配下スライムによる奇襲を受け、抵抗できずにやられました。
これはスライムの特性を最大限に活かせた結果なので、一概に言えばアラミス達の方が強い。
ただ、奇襲の類いならば他の追随を許さないのがスライムだ。
「あぁ、それに関しては序盤で仕込んでいた。お前ら1回だけスライムに警戒しただろ?」
「た、確かに警戒しやしたね」
スライムの臭いがするだの何だの言って立ち止まった時があった。
それが既に布石だ。
そもそもスライムに臭いなんて無いんだよなぁ。
「一緒に動いていたサイゾウ達に臭いのする袋を持って貰っていてな、わざと存在感をアピールしたんだ」
「そうしなくてもすぐにやれたのではないでごわすか?」
俺を見くびってもらっては困る。
俺は族長トリオをそこまで弱く見積もった事はない。
「1度意識させることが重要だったんだよ」
何も無いところからスライムに奇襲をされれば確かに成功する確率は普通にある。
だが、そういう戦法があると言うのは周知されている。
見られていて、離れていったと思わせることが大事だったんだ。
1度存在を意識させその後で何も無くなれば相手が何処かへ行ったと気が緩む。
そこから暫くした後で奇襲をすれば成功率は上がるのだ!
「とは言ってもこれはただの実験だけどな」
「へ?」
ぶっちゃけ普通に奇襲をした方が早いんだが、それ一辺倒だと進歩しないからな。
色々と試してみようと思ってやってみたのだ。
「人が悪いでごわすな」
「あっしらは掌で踊ってただけですかい」
脱帽したアラミスとポルトスは地面に寝転がった。
「俺としてはリビちゃんがアトスと手を組むとは思ってなかったけどな」
切り株から降りてラビィの傍らに佇むリビちゃんへと視線を向ける。
「私の視界に入るな」
酷い言われようだ。
「こらリビちゃん! 皆と仲良くしなって言ったじゃん!」
「聞けぬ命令もございます」
まぁそこは追々だろうな。
「俺もまさか協力してくれるとは思わなかったな」
地面に座っているアトスも感慨深そうに呟く。
良い傾向かもしれないな。
実際リビちゃんの戦闘力は目を見張る物がある、ミストと共に暴れられると手の着けようがないから敵に回したくはないな。
「クロト、君は僕との遊びを利用したね?」
あの暴れようを『遊び』と簡単に言う辺り、ミストの頭はおかしいと見た。
残念ながらこの世界に精神病院はないので不治の病だろうな。
「利用か、ミスト。お前は俺が友人との遊びを無下にする訳がないだろう? はぁ、俺は心の友だと思っていたがミストは違ったんだな……」
俺はあからさまに落ち込んだように溜め息を吐く。
勿論戦いは利用した、俺にはまだまだ沢山試したいことがあるのだ。
貴重な時間や機会を逃すほどアホではない。
「じょ、冗談なのさ! 僕は友達を疑うなんて真似はしないのさ!」
「さっき思いっきり疑って……むげっ」
「ラビィは黙ってるのさ」
「貴様、その汚い手を放せ!」
取り乱したミストにラビィが追い討ちをかけようとするがミストに口を抑えられる。
それを見かねたラビィスキーのリビちゃんが喚いた。
「五月蝿いのさ! 僕はまだ暴れ足りないから喧嘩を売るなら買ってやるのさ!」
「良いだろう、いい加減実力を思い知るが良い」
何やら怪しい雰囲気だ……。
「クロト……不味くない?」
「あぁ、かなり不味いな」
「マスターどうすんだ!? 暴れられちゃヤバイぞ」
「ワテら死ぬでごわすよ!?」
「あっしら志し半ばですぜ!?」
「ぶっ潰してやるのさ!」
「アンデッド風情が土に還るが良い」
「ぜ、全員にげろーー!!!」
この後、階層が1つ消えた。
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