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リビちゃんの話

遅れました。

決して配管工や電気鼠、天使や狐が闊歩する場所で戦いに明け暮れていた訳ではありません。


魂集めは疲れる……


 私がこのダンジョンへやって来たのは半年ほど前の事だ。



「おーい、リビちゃーん!」


 私を呼ぶ声に反応し声のする方向を確認すると私の主であるラビィ様がやって来る。


「どうかされましたか?」

「ん? 特にはないよ?」


 ラビィ様はこう、失礼ながら頭の出来があまり良いとは思わない。

 だからと言って見下す様な事など決してないが。


「あ、そうそう。聞いてよークロトったらさー──」


 ラビィ様は時たまと言うか殆ど毎日のように私へと愚痴を溢しにやって来る。

 それを私はただ黙って聞いているだけで特に何かをすることもない。


 今もこうしてラビィ様の一応主でありダンジョンマスターと呼ばれる存在である黒髪の少年──クロトと呼ばれる男への愚痴を溢している。


 私はあの男がはっきり言って嫌いだ。

 ラビィ様から聞いた話でもそれほど悪い人物像では無いのは分かってはいる。

 そしてこの目で直接見て話しても悪意のある人間ではないと理解もしている。

 性格は少し悪いが、誤差の範囲だろう。


 だがそれでも私の中での本能とも言えるべきものが警戒の鐘の音を鳴らすのだ。

 アイツの存在は異質であり、危険な存在であるだろうと言うことを直感で感じる。


 そもそも私はこれまでダンジョンマスターと言う者の話を聞いたことがない。

 私が魔物として生を受けて200年程経つがダンジョンの存在こそあれどダンジョンマスターと言うものは見たこともなれば文献にも乗っていないのだ。


 当然ダンジョンも1つや2つ破壊したことがある。

 その時もダンジョンマスターなどと言う存在は見たことが無かった。

 

 それだけでも警戒するのは当然の事だろう。

 あの男以外もだ。

 このダンジョン自体おかしいと言わざるを得ない。


 まずスライムだ。

 私のいた場所では存在することすら許されず絶滅していた。

 所詮は下等な種族だ、そもそもあの魔境では竜種よりも存在の確認が珍しいくらいだ。


 そんな劣等種であるスライムだが、このダンジョンでは強者の部類に存在している。

 私の知っている動きではない、スライムはそもそもあのような速度が出せる生き物でもなければ知性も伴わないのだ。


 それが個体差はあるが素早く、そして賢い。 武器を使いこなし、本来魔物が所有する種族スキル以外の持つはずのないスキルを多用してくる。


 異常と言わざるを得ないだろう。


 名前も持っていると言うことはそれだけ実力を持っていると言うことだ。


 そもそも名前などと言うものは誰が付けようともその効果は殆どない。

 多少その能力が上がりはするがそれだけであり、区別を付けるためだけの物だ。


 それは名を付けるだけならの話だが。


 その名を付けた者へ何を犠牲にしてでも守るためや勝利を約束するなどと言うものが魂レベルにまで達してこそ名付けは真の意味を発揮する。


 名を付けるから強くなるのではない。

 名に意味を持たせるから強くなるのだ。


 あの11匹のスライム達は全員があの男を信頼し、全てを捨てでも守り抜き勝利を疑っていないからこそあの強さを手にしたのだろう。


 でなければスライムはあそこまで強くなることはないだろう。


 あのミストとか言うアンデッドもラビィ様から聞いた話では進化をしていると言っていだが、それは元々の進化基準を満たし、その後の名付けがきっかけになっただけだろう。


 ミストとアイツは友人関係であり主従関係では無いのだから名付けにもそれほど効果は出ていない。


 他のホブゴブリンやオーク、コボルトなどはもう少しと言ったところか。

 奴に救われたり憧れたりしてダンジョンにいるもののまだ足りていない様に思える。


 私はこの目で名付けされた魔物と言うものを見てきたのだ信仰とも言えるほど妄信的に名付け親を崇拝する事にでもなれば彼らもまた強くなるもしれない。


 今一確信が無いのは必ずしも崇拝や忠誠によって名付けの効果は出てこない訳じゃないと私なりの考えがあるのだが。

 

 他にもきっかけは存在する可能性は否定できないのだ。


 崇拝や忠誠は分かりやすく実行は難しいが確証されている結果であることに間違いはない。


 忠誠……私はこのダンジョンでは名を持っているが強くなどはなっていない。

 ラビィ様へ忠誠を送ってなどいないのだから。


 ラビィ様は根は真っ直ぐな共にいて不快に思わない明るい少女だ。

 一緒にいることで微笑ましく思うこともある、だがそれでは私の主足り得ない。 


「ねぇリビちゃん聞いてるー?」

「聞いております」

「それでさ、クロトったらゴミを散らかすなー! とか言ってすぐおやつ抜きにするんだよね、全く私は悪くないから!」


 それは全面的に貴女が悪いと言いたい所だ。

 あの男も苦労をしているのだな。

 その苦労だけなら買ってやらんでもない。


 かく言う私もこのダンジョンに来るまでに幾度となく同じような事を繰り返していたのだから。


 ラビィ様もあの御方に似ている所がある。


 確かに突然召喚され驚きはしたし、目の前にいた明らかに人間のような姿形をしているラビィ様を斬りかかることもしたがそれは叶わなかった。


 私が振り下ろした剣は私の意に反しその切っ先を止めどんなに力を入れようともピクリともしなかった。


 ラビィ様のことを放っておいて急いで魔境まで戻ろうともしたがいつの間にか戻ってきていた。


 私の見立てでは召喚されたことによる強制支配の様な物だろう。それ

 元の主の元へすぐに駆けつけることは出来なくなったが好都合であった。


 私の主に対する脅威となり得るのなら情報を集めておいて損は無いと踏んで今は大人しくラビィ様へと忠誠を誓ったふりをしておこう。


 そしてこの支配から逃れ、私はあの方の元へ舞い戻るのだ。


 その為にも心苦しくはあるがこの娘、ラビィ様を利用させてもらうとしよう。


 我が真の主たる、魔王様の為に。

 

宜しければ評価、ブックマークにレビューをよろしくお願いします!


そして次章のプロット作成のため、1週間を目安にお休みさせていただきます!


その間暇な時はレビューを書いてみると良いと思います。経験って大事よ……。

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