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対決!クロトVSミスト&ラビィ9

「オラァッ!」

「……面倒っ」

「足元がお留守ですよ!」


 叩きつけられる度に破壊され飛び散る瓦礫を遮蔽物に使いその伸縮自在の体を使い死角から攻撃を繰り出す。

 ウノーは悪態をつきながらもギリギリを見極めて捌いていく。


「これでも倒れませんか」

「当然だろ兄者、俺らとは種族の格がちげぇよ」


 思ったよりも攻撃が通らないことにセイカイは残念そうな声を洩らす。


「分かってますよ、まだまだ鍛練が必要ですね」

「がっはっは! でもまぁ、ここで負けるつもりもねぇけどな!」

「当然ですとも」


 二人は武器を構え再度突撃をする。

 度重なる十勇士との戦闘を繰り返していたウノーは体力こそ無尽蔵に近いが精神的疲労が大きく、疲労感が漂う。


「……頭が痛い」

「おや? 攻撃を緩めてあげましょうか?」

「兄者、性格悪すぎだろ」

「……舐めるな」


 明らかなセイカイの挑発により不快に思ったウノーの攻撃速度が上がる。

 突然の緩急により驚き硬直したセイカイとイサはウノーの連撃に吹き飛ばされる。


「流石はあのミスト殿の配下、一筋縄じゃ行きませんね」

「まぁ、負けるつもりは毛頭ねぇけどな!」

「……叩き潰す」


 戦いは加速する。

 動きが武器の関係もありそれほど早くはないイサを最小限に警戒しながらウノーは素早いセイカイの方に対峙する。


 速度はあるがセイカイの方は攻撃が重くはない。所持している棍はリーチこそあるものの体の小さなスライムにしては不釣り合いであり、ウノーの中での評価はどちらも驚異では無かった。


「今です!」

「任せろ、オラァッ!」


 後ろへと大きく跳躍し戦斧から繰り出される一撃を余裕をもって回避、すぐに次の攻撃に備える。


「ふっ!」


 破壊され、飛び散る瓦礫をその棍にて弾丸の様に打ちだす。


「……何回も見た」


 危な気なく瓦礫をも対処していく。

 ウノーはアンデットであり、その肉体に痛覚は存在していない。

 ゆえに無茶な攻撃も出来る上に人の枠組みから外れた動きも可能だ。


 だがそれでも腕や足が切断されれば動きが悪くなるし思うように動けなくなる。

 なのである程度の防御は必須だった。


 そして目の前にいる2人のスライムは己を時間稼ぎと名を打ってはいるが殺る気が見え見えだった。

 瓦礫に紛れて移動していたイサの一撃を避け反撃し、警戒する。


 何故向こうがそんなに殺る気を見せているのかその理由は定かではないが、向こうがその気ならばとウノーも少しずつ攻撃性をあげていく。


 この2人の動き、攻撃の展開は単純ではあるが兄弟によるコンビネーションは圧巻であり、流れに1つでも対処し損ねればその身に受ける傷は生易しいものではない。


 そう感じているからこそ、ウノーは油断だけはしていなかった。

 言うほど心に余裕があるわけではない。


「参りましたね、中々に当たってくれません」

「だからもっと増やそうって言ったんじゃねぇか兄者」

「何もかもに手を出しても良いことはないと言っているでしょう。中途半端になると戦いは上手く行かないのですよ」

「それは誰に向けて言ってんだよ」


 この場には居ない橙色の生き物がどこかでくしゃみをする。


「当たるまで、何度でもやりますよ」

「根比べは大得意だからな!」

「……面倒」


 鬼に金棒とでも言うべきか、実力のある十勇士達に武器の類いを与えた少年にウノーは悪態をついた。





◇◇◇







「あらあら、そこじゃ無いわよ?」

「う、後ろです!」

「厄介な力ですね……」


 どこから途もなく無数に飛んでくる炎の塊をわざと触れるか触れないかの所で避けていく。

 そうしなければ無数に迫ってくる炎の塊を避けきることが出来ないからだ。


 それは際限なく続き、サノーは集中を維持しなければならず、ウノーと同じように精神的疲労が溜まっていく。


 すると1つの火球がサノーの背中へと着弾するものの、背中に少しの焼け跡もダメージも残らなかった。


「ふぅ、幻覚の方でしたか」

「あら? のんびりしてる暇は無いわよ?」

「……行きます!」


 少しの呼吸を終え、再びサノーへと火球が迫る。

 その正体は対した物では無かった。


 何十年も前からサノーはこの攻撃を知っている。


 村へとちょっかいを出しにやってくる憎き人間の魔法。

 下級火魔法【ファイアボール】だ。

 ただの火の球であり、火攻撃魔法ならばその威力は最弱の部類だがアンデットであるサノーには有効な攻撃であった。


 それを放つのは紫の杖を構えたこれまた紫色のスライムだ。

 そしてそれを補助するかのように短刀を構えるのは黄色。


 サノーは【ファイアボール】に関しては痛手ではないと感じている。

 真っ直ぐにしか飛ばず、アンデットには有効ではあるものの当たらなければ意味はない。

 そしてその攻撃は何年も何十年も前から己を、同胞を焼いてきたその魔法を避ける。


「確かに厄介ではありますが、当たらなければ意味はないですね」

「わ、私の幻覚があまり効いてないです……」


 火球を放つのはカケイだが、火球が増えているように見せているのはユリのスキルであった。


「落ち着きなさい、見極めているのは【ファイアボール】の方だけよ。幻覚は続いているわ」

「は、はい!」


 カケイの言葉にすぐに落ち着きを取り戻すユリ、その態度にサノーは内心で舌打ちをする。

 

 事実、見極めきれているのは【ファイアボール】だけである。

 幻覚の方はあまり使うものがおらず、対処も難しい。


 このスキルも食らったことはあるがサノーが導きだした答えは術者その者を幻覚を使う前に叩くと言うことであり、戦闘能力の乏しい術者は意図も容易く捩じ伏せる事が出来ていた。


 だが十勇士は違う。

 各々の得意分野こそ違うがその戦闘能力自体はかなり高く、接近戦も難なくこなす。

 多少の誤差はあれどそれなりに対処してくるので厄介だった。


 それに加えスキルの獲得により大幅に実力、戦略共に強化されより手がつけられなくなっていた。


 サノーは火球を掻い潜りつつ幻覚を出している張本人であるユリへと蹴りを繰り出す。

 

「うわっ!」


 すっとんきょうな声を上げながらもサノーの蹴りに合わせて後退、衝撃を和らげさらに粘体であるが故に衝撃を吸収し切り、なんとも無いように幻覚を産み出していく。


 サノーは何度目かの舌打ちをする。

 十分と言っても良いほどの実力を持つスライムに燃料をぶち込んでくれた自分の主の唯一の友人という立場にいる男へ嫌がらせ位ならしてやろうと考えた。


「カケイちゃん、全然当たらないよ……」

「正直悔しいわね、時間稼ぎは言い付け通り出来てるけど。この展開は面白くはないわ」


 火球の対処に追われるサノーを横目に2人は話す。


「少し暴れちゃいましょうか」

「えっ? だ、ダメだよご主人さんの指示だよ?」

「それはそうかもだけど、私達って格付けが済んで無いのよね」


 このダンジョンを派閥として分けるならばクロト派とミスト派と言った所か。

 この2名はいがみ合っている訳ではないし仲もかなり良好だ。

 お互いを敵とは全く見なしていない。


 だがそれは頭だけに限った話だ。

 ウノーとサノーはミストの言い付けだからこそクロトにも従ってはいるものの、敬う気持ちは一切持っていない。


 それはクロト本人が聞けば「気にしてない。自由で良いよね」と暢気に呟くだろうが、ユキムラ並びに十勇士はそれを許容しない。


「どちらの主が素晴らしいか、どちらの配下が優秀かは決めておくべきよね?」

「ご、ご主人さんは気にしないと思うよ?」

「あら、ユリは旦那様が舐められても良いのかしら?」

「それは嫌です」

「なら、ちゃんと躾ておかないとね?」

「うぅ、分かりました……頑張ります……」


 渋々と了承したユリを横目にカケイはスキルに更なる変化をもたらす。


「っ!?」


 飛んでくる【ファイアボール】は加速しサノーは咄嗟に大きく動いた。

 着弾した【ファイアボール】はその形を変え地面へと刺さる。


「【フレイムアロー】」

「ご名答よ」

「ここからは本気です!」



 殺意を滾らせ、火の矢が襲いかかる。 

 


 サノーは思う。


 これってそう言う戦いじゃない、と。


誤字脱字ありましたらお願いします!

普通に感想も待っております!

頑張れるのは皆様のお陰ですありがとう!


唐突の感謝。


ところで息抜きに他の小説書いてるんですけど読みたいですかねぇ?

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