対決!クロトVSミスト&ラビィ7
おくれました
「ねぇ、暇なんだけど!」
「うるさいぞコスケ、陛下からのお達しだ。真剣に勤めろ」
ダンジョン第60層の丁度中央、遮蔽物が一切ない大きな広間となっている空間にそれらはいた。
「けどさー、僕らって出番無さすぎなんだよ? この機会に大暴れしようと思ってたのにさー」
「適材適所だと陛下は仰られている。それにサイゾウとサスケはこの戦いにおいて良い働きが出来るのだから仕方ないだろう」
「ちぇー、なーんで足の遅いロクロウなんかと一緒なのさ。文字通り足引っ張るだけじゃん」
「貴様、喧嘩を売ってるのか」
広間にあるのは4つの影。
広間中央に浮かぶ青々と輝く水晶を守るようにして配置されているのはスライム達だ。
「そもそもさ、ロクロウって騎士っぽいキャラじゃん。あまり喋った事ないけどリビちゃんって奴とキャラ被ってない?」
「私と彼女を一緒にするな、被ってない」
「ほら、主君とラビィちゃんに対する忠誠とかさ、しゃべり方とか。もう似てないところって固体か液体かって位じゃん」
「バカを言うな、私はその気になれば固体にすらなれる」
「張り合ってんじゃん、自覚してんじゃん!」
「してない」
無いったら無いのである。
「ねぇ、そっちで言い争ってないでこっちの五月蝿い奴黙らせて欲しい」
「ふははは! 我が君に与えられし使命、この我が美しく達成して見せよう!」
「オイラには荷が重い……」
「「確かに」」
青々と輝く水晶──ダミーダンジョンコアを守るべくその場に留まっているスライム達、その色は様々であり橙、緑、金、銀と様々だ。
彼らはこの場の最終防衛ラインとして配置されており、未だに影も形も見せない相手を今か今かと待ちわびていた。
「主君は主に時間を稼ぐって言ってたし、これもしかして僕ら出番無いと思うんだよ」
「オイラは別にそれでも良いかな、戦いたくないし。守れる自信とかないし」
「ジンパチ、貴様は卑屈になりすぎだ。私達はそう易々と負けるような訓練などしていない」
「そうだよジンパチ、それにその言い方だと訓練作ってくれた主君を陥れているのと一緒だよ」
「ごめん……」
「ふははは! さぁ3人とも、我と共に輝こうじゃないか!」
「脈絡もなく五月蝿いんだよ」
「同感だ」
「目にも耳にも痛い」
ここに配置されてから今までの間、延々とダミーダンジョンコアの周りを回り続けながら高笑いをしているモチの行動は如何に十勇士と言えど真意は図りかねない。
むしろ行動に意味はないと言う前提で接している始末だ。
「あいつに構っていたら時間が幾らあっても足りないな」
「何がしたいのかさっぱりだよ」
「同じ信者のロクロウなら分かると思ってたんだけど」
「私とあいつを一緒にするな、ただ陛下を敬うその心意気は認めている」
「狂信ってこう言うことを言うんだよ」
「だね、オイラ達とは方向性が違う気がする」
何時までも回り続ける金色と話題を振ったことで崇め奉る主に思考が旅に出てしまった緑色に呆れた声をあげる2色は無視することにした。
「それにしても良いよね、あっちの4人は出番貰っちゃってさ、僕だって戦いたいんだよ。活躍したいんだよ」
「うーんここで文句を言っても仕方ないと思うけど、オイラ達の能力はどっちかと言うと守りとかその辺向きだから難しいと思うよ」
「僕は守り特化じゃないんだよ」
ここにはいない他の者達の役割を不満に思い不満を隠すことなく出す橙色のスライムに丁度ダミーコアを一周し話を小耳に挟んだ金色が割り込む。
「それは我もだな、ふははは!」
「割り込んで無いで回ってなよ。五月蝿いな」
「そう固いことを言うでない。そこの緑と同類だぞ」
「いや僕らスライムだし、同類だし」
「それに忘れたか、我が君は次の機会には我々を出すと確約していることを」
不敵に笑っている様に見える金色のスライムの言葉に橙色は思い出したように体を弾ませる。
「確かに! よーし、守りきって次は活躍するんだよ!」
「ふははは! その意気である! さぁ、共に回ろうではないか!」
「それは遠慮するんだよ」
◇◇◇
59階層から58階層へと登っているのはまたもや4つの影。
姿形は同じだが、その身に纏っている色は多種多様だった。
「……そ、そろそろです!」
「イサ、もう少し早く走れませんか?」
「兄者、それは無理だな。これが限界だ」
「そんなに焦ることも無いわよ。向こうもやって来てくれるんですもの」
4色は当初、ダミーコアの防衛を勤めていたが、他ならぬ主からの伝達により階層を移動していた。
「は、はい、分かりました! へへ、あっ距離はあと100くらいですっ」
「ユリ、貴女今ちょっとにやけてたわよね?」
「に、にやけてないですっ」
「旦那様からかしら? 妬けちゃうわ」
「こ、怖いですよカケイちゃん」
お互いがくっつく位にまで接近してくる紫色のスライムに怯えたように離れようとする黄色、視線が怖い。
「お二人とも、そろそろ見えてきますよ。第一撃が肝心ですからね」
「がっはっは! 兄者ァ! 先制は任せろ!」
先程までの愚鈍さは何処へやら、藍色のスライム、イサは誰よりも早くそろそろ会うだろう敵の方へと1人突っ走る。
「じゃあ私とユリは回るわね?」
「イサさん、セイカイさん、お願いしますっ」
「お任せを」
合図を交わした殆ど普通のスライムに近い水色のセイカイは先行するイサに追い付くために速度をあげた。
「ほらユリ、逃がさないためにも回り込みましょう?」
「は、はいっ」
「……あとでじっくりお話も聞くわよ?」
「こ、怖いですよ……」
◇◇◇
「何か来る」
「また邪魔立てですか、今度は一体」
「もらったぁぁぁぁぁぁあ!!」
「「っ!?」」
壮大な掛け声と共に空中から躍り出てきた1つの影が重力と共に獲物を標的へと叩きつける。
だが惜しくも的を外れ、地面に叩きつけられた戦斧はその衝撃を以てして大地を抉る。
攻撃を回避したウノーとサノーが視線を飛ばした先には藍色がいた。
そのみの丈に一切見会うことない巨大な戦斧を携え姿を現す。
「十勇士!」
「また面倒ですね!」
「こっちにも居ますよ」
声の発せられた方を見るよりも早く衝撃がウノーへと叩きつけられ体が浮くが、咄嗟に反応できていたウノーは体勢を用意に建て直していた。
「やはりイサの様な威力は私には無理ですね」
「がっはっは! 兄者の力はそう言うのじゃ無いからな!」
途中乱入してきたセイカイはイサの元へ合流を果たす。
「また2人……」
「いえ、まだいますね」
「あら、気付かれてたのね」
「お、お覚悟ですっ」
視線を後ろへと向けると木陰から更に2人、紫と黄色が姿を隠す素振りもなく出てくる。
「あなた方よりも気配を消すのが上手いのと当たりましたからね」
「気配は慣れた」
背中合わせになるウノーとサノー、その目は本気で戦うつもりであった。
「ありゃ、主殿の作戦が裏目に出たってか」
「それでもやることに変わりはありませんよ」
「私達と少し遊んでもらおうかしらね?」
「と、止めますっ」
こちらも戦意を滾らせ、開戦はもう間もなくだった。
タイムアップまで残り1時間半。
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