対決!クロトVSミスト&ラビィ4
待たせたな!
「なんであいつ等仲良くなってんだ!?」
ダンジョン第60層簡易テントにてモニターでそれぞれの場所の様子を見ながら思わず叫ぶ。
一部始終見ていたのだが何処にそんな仲良くなるイベント要素が……ラビィか、ラビィを引き合いに出せばリビちゃんは上手く扱えるのか良くやったアトス君、君には後でご褒美をやろう。
今度赤ちゃんが産まれるらしいからな、出産祝いだ。涎掛けと洋服でもプレゼントしようか。
リビちゃんの扱い方は分かったし今度試して見よーっと。
「主、悪い顔をなされてますぞ」
「うん? あぁ、作戦考えてた」
「なんと、また新たな策略を!? やはり主は素晴らしいおかたですな!」
止せやい、褒めても撫でてあげるだけだぞ。魔導書いる?
いやしかし、ユキムラもそうだが十勇士はどうしてこんなに誉めちぎってくるのか不思議だな、これはもしや浮かれさせた俺を背後からブスりと行くつもりじゃあるまいな? 警戒しておこう。
それはさておき、今回の戦いだが、経過は良好だ。一部イレギュラーはありはしたものの問題はない、俺の計画は完璧である!
まず先行部隊となるアラミスとポルトスのパーティーだ。コイツらは鼻が利くからな、罠なんかは結構発見される恐れがある。
だがその鼻の良さを利用した作戦は成功した、所詮奴等は3パーティーの中でも最弱……ダンジョンの面汚しよ。俺より強いけどな。
そしてイレギュラーの1つ目、ウノーとサノー率いるパーティーだ。
サノーの行動は割りと読みやすい、アイツは化け物みたいな強さをしているが根は真面目だ。不規則な行動をしないレールをただひたすら忠実に走っていく堅実なタイプだ。
所謂テンプレな動きをするアイツはバレないように誘導しておけば戦闘をすること無く事を運べるのだが、逆に地頭が良いからバレないようにするのが難しい。
そして問題なのがウノーだ。そう、全くしゃべった記憶の無いサノーの付属品。
そんな酷い扱いを俺の心の中だけでされているウノーだが、あれは思考を読むことが出来ない。何を仕出かしてくるのかが予測出来ないのだ。
俺の見解ではあるが答えは出ている。奴は何も考えておらず直感で動いているに違いない。
その極めつけは、俺が仕掛けまくった罠を自滅覚悟で破壊しまくった事だ。あの野郎、これだから脳みそ筋肉は嫌いなんだ。
自分達の不死性を利用した特効だなんて対処しきれないって、勘弁してくれ。
これまだ可愛いイレギュラーだ、友人と遊ぶつもりが友人がそのまた友人を連れてきた程度だ、その時点で家に帰ればだれも傷つかなくて済むからな、賢明な判断だと手放しで絶賛したいくらいだ。
ウノーとサノーの対策など、半年前に終わっているのだよ。君らは戦う前から負けているのだ、そろそろ君らには彼我の実力と言うものを理解させなければならないだろう。
サイゾウとサスケに時間稼ぎをしてもらってはいるが倒しちゃダメとは言ってないからな、存分に暴れてほしい。
さて、最後だ。
当然大きなイレギュラーとしてはアトスとリビちゃんのパーティーだ。
俺としては雰囲気と士気が台無しになり戦線が瓦解することを望んでいた、実際その通りに最初は事を運べていたからなどうせミストとラビィはその辺りを考慮などしていないはず。
考えが間違っていなければ今回の戦い、ミストとラビィはお飾りだ。敵の動きからして脳内思考が「突撃」か「ATTACK」しかないミスト&ラビィに作戦の二文字は存在していない筈だ、さっき気がついた。
よって作戦を建てているのは頭の回るウノーかもしくはホブゴブリン族長であるアトスのどちらかが中心になっているだろう、リビちゃんはさっき唐突にデレてたけど作戦を建てる段階では話を聞いていない可能性がある。
なので付け狙うとしたらリビちゃんの所だ。協力もくそもないあのパーティーなら瓦解させる方法は幾つか思い付くし実際そうするつもりだった。
ここで協力体制をとるとは毛ほどにも思わなかったけどな!
本来なら奇襲でも仕掛けてリビちゃん意外を拘束した後に十勇士5、6人位仕掛けて倒す、倒せないにしても足止め位には留めておこうと思っていたんだけどな。
いや、協力したところで急造だろう、直ぐに連携が取れるとは思えない。この作戦は続行だな、それにまだ序盤だしもう少し様子見していくか。情報を集めよう。
サスケとサイゾウが既に仕掛けてはいるが頃合いを見て撤退させよう、このままだとアトス、リビちゃんパーティーと鉢合わせてしまうからな。
念話起動。
『サスケ、サイゾウ。頃合いを見て離脱してくれ、もうじきアトスとリビちゃんが来る』
『了解だ』
『も、もう少し、もう少しだけっ!』
『サイゾウ、旦那の命令に従えないのか?降格もあり得るが?』
『くっ、特権が無くなるのはもっと嫌です! ここは引きますっ!』
何の話だろうかさっぱり理解は出来んが撤退はしてくれるようだ、それなら安心だな。
『撤退したらサスケとサイゾウはアトス達を見張っててくれ、いつでも奇襲が仕掛けられるようにしたい。絶対とは言わないがなるべく気づかれない方が嬉しい』
『任せてくれ旦那、気付かれたとあっちゃ忍の名が廃るからな』
『気がつけば死んでいた状況にしてやりますよっ!』
『仲間なんだから殺すのは止めてくれ、半殺しなら……まぁ、許せる』
アトス達はダンジョン配下に収めてはいないので死んだらそこで終わりだ、いずれは配下にしたいとは思うけどそうするとDPがなぁ……これ以上仲間が増えるわけも無いだろうしこのままが無難だな。
よし、サスケとサイゾウは撤退したな。
ウノーとサノーはある程度は消費したようだし、先行しているポルトス達との距離も離れた。逆に後続と縮まったが大丈夫だろう。
これより計画は第2段階に移るとしようか。
◇◇◇
「おりゃりゃりゃりゃっ!」
「しつこいです……ね!」
「へっへーん、もう当たりませぇん!」
柔軟な体と何処にでも持てる武器を利用した上下左右縦横無尽に駆け回りながら攻撃しているのは桃色のスライム、サイゾウだ。
相手の攻撃を避けては少しずつ傷をつけていき、また離脱を幾度と無く繰り返す。
対するはその素早さに多少翻弄されたり煽られたりして頭に来るが何とか冷静に対処をし続けるサノーだ。
戦いは数十分にも及び、お互いの力関係は拮抗はしているもののサイゾウが僅かに速い。
「しっ!」
「残念でしたっ!」
空中に躍り出たサイゾウへ蹴りを繰り出す。貰ったと錯覚する瞬間、目の前のスライムの体は地面へと伸びる。
地面へと着いた粘体に引き寄せられる様に勢い良く蹴りの軌道上から一瞬で地面へと到達したサイゾウはその反動をも利用し軸足へと短刀で斬りつける。
「この程度、読んでないとでも?」
蹴りの威力をそのままに軸足も空中へと振り上げサノーの体は地面へと平行になる。
回転した体は自由落下の勢いを使い強烈な一撃を地面へと叩き込む。
咄嗟に回避を選択するサイゾウではあるが、サノーの拳が地面を砕き砕かれた土が散弾の様に彼女を襲う。
「いたたたたたたた!?」
「貰いましたよ!」
僅かに阻害された動きを見逃す筈もなく、地面を砕いた拳を軸に体を無理矢理捻らせ鞭のような蹴りを見舞う。
「あいたぁっ!?」
気の抜けるような声を出しながら一撃をまともに受けたサイゾウは茂みの中へと吹き飛び消えていく。
森に身を隠し奇襲を狙ってくるかと疑うサノーは周囲を警戒するが、その期待は裏切られる。
「良くもやってくれやがったな、ちくしょー!」
仮にも隠密に特化した筈の納期をかなぐり捨て、真正面から叫んで突貫するサイゾウへサノーは目を疑う。
「がはっ!?」
そしてそれはあまりにも速い一撃であり、お返しとばかりに懐へと重厚な威力が乗り、スライムに比べて遥かに大きなサノーの体は吹き飛ぶ。
「まだまだ行くぞぉおおお!!」
吹き飛ばした直後、相手が立ち上がることを許さず短刀を持ち再接近していく。
思わぬ攻撃を貰ったサノーは驚くものの体制を立て直そうとするが、既に接近を許していた。
既にお互いの距離は数メートル、勝ちの目はサイゾウにあった。
「甘いんですよ」
尻を地につけてはいるが迎撃が不可能なほどには陥ってはいない。サノーは足を勢い良く振り下ろし再び地面を踏み砕き、礫を飛ばす。
「甘いのはそっちいぃぃぃい!」
接近する礫に対しサイゾウが行ったのは回避ではなく突撃を続行することだった。
短刀を振り回し多少の傷は許容範囲とし、本当に邪魔な物だけを弾き飛ばす。
「時間が少し稼げれば充分です」
その間に立て直したサノーは近くの木を蹴りで抉ると、倒れる大木はサイゾウに向かう。
「まだまだぁぁぁ!」
体をゴムの様に伸び縮みさせ、跳弾。いとも容易く回避してみせたサイゾウは勢いを劣らせること無く攻撃を仕掛けようとする。
カウンター狙いであったサノーはそこまで予測し、タイミングを合わせるために動きを読んでいた。木すらも囮に使ったのだ。
迫り来る斬撃の嵐に呼吸を合わせ反撃する瞬間、サイゾウは見当外れの場所に移動し木の枝へと着地する。様子がおかしかった。
「えぇ!?」
驚愕の声をあげるサイゾウにサノーは顔を顰める。
「も、もう少し、もう少しだけ!」
何かを叫んでは嘆願しているが、断られたのか脱力したようにその体が潰れる。
「くっ、今回は見逃してあげますよっ」
そう言うや否や姿を消し、気配すらも断たれサノーは唖然とする。
「何だったんですか」
これ以上の襲撃は無いと見て構えを解き、呟く。
同じく見逃された様なウノーも合流し、二人は他と合流する為歩を進めた。




