対決!クロトVSミスト&ラビィ3
遅れました~、書くのって難しい
場所は変わり56層、そこでは重苦しい空気が流れていた。
「……」
「……」
互いに沈黙を破ることは叶わず、ただ黙々とその歩みを止めることなく進み続けている。
前者は非常に気まずそうにチラチラともう片方を見てはどう会話したものかと頭を唸らせ、後者はただ与えられた使命に従順にこなそうと考えており仲間意識と言うものは皆無であった。
「ど、どこまで探索は終えてるんだろうな?」
「私に分かる筈が無いだろう、貴様の脳は飾りか」
「辛辣……」
何とか場を和ませようとしたホブゴブリンの男……アトスは肩をがっくりと落とす。なんとか仲良くとはいかないがマシな雰囲気を作ろうと努力はしたものの、全て素っ気なく拒否されてしまいどうしたものかと隣を歩く鎧を横目に見る。
約半年前、自分のマスターである少年の嫁──と噂されているラビィが召喚したと言われている黒い鎧、リビングアーマーは名前はリビちゃんと言うらしいくアトスからでも分かる絶壁を張りながら先ほど紹介され今に至る。
「……噂では聞いてたが、本当に強そうだな」
そして噂に違わぬ冷たさだと感じる。「アイツの心は着ている鎧の表面温度より冷たい」とはマスターの言葉だ、意味がわからなかったがこうして相対すると納得はした。
その存在だけは確認してはいたが、直接会話をするのは今回が初めてだ。リビングアーマーのリビちゃんは普段は迷宮エリアでただ静かに佇んでおり、時折ラビィの側を歩いているのは目撃されてはいたが見た目からして近寄りがたく、アトス1人で話しかけるには勇気が必要であった。
実際問題、このリビちゃんと組むのは本音で言えば気は進まなかった、だって怖いんだもの。だがアトスには自分しかいないと嫌々ながらも理解はしていた。
万が一、アラミスやポルトスにでも任せようものならお調子者である彼らの行動が神経を逆撫でしてしまい血祭りに挙げられると察したからだ。
アトスは思う、リビちゃんは強い。それもこのダンジョンで確実にトップクラスほどの実力を備えていると理解できている。
己もホブゴブリンの中では随一の実力を備えてはいるがウノーやサノー、ましてやミストやユキムラと言う化け物には根本的には勝てないと自覚している。と言うのも種族の格の違いがあるからだ。
アトスは所詮はホブゴブリンから1段階進化しただけの存在であることに対し、リッチであるミストは3段階程の進化と言う過程を通り抜けている、どんなに鍛えようともその差は覆ることはない。
あるいは己自信も進化を繰り返せば迫れるとは思うが、その進化先は完全にお伽噺であり種族の伝説に通ずるものだ。実現は不可能だと見ても良い。
種族の格の差と言うものがありながらもリッチであるミストやワイトへと進化を果たしたウノーサノーに実力が拮抗しているユキムラや十勇士がおかしいのであると内心愚痴る。
とは言え、リビちゃんが他のダンジョンの魔物を信用していないように、アトスもリビちゃの事は信用はしていない。
何かとラビィと共にいるこのリビングアーマーはマスターであるクロトを見かけるな否や兜に隠れて見えないが何処かしら監視をしている様に見えるのだ。
クロトの事を仕えるべきか見極めているのかも知れないが、それはつまり仕えるべきではないと判断すれば敵対する可能性も大いにある。
それはなんとしてでも許してはならないのだ。
実力が敵わないことは重々承知している、幾ら鍛えようともホブゴブリンであるアトスでは逆立ちしても勝てない相手だ。
それでもほんの少しでも情報を残せればと、まだ頭の回る自分が渋々ではあるが組んだのだ。
「俺達は後方からゆっくり探索、そして前の味方の加勢で戦線の押し上げって感じだな」
「そんなことは分かっている、貴様は喋ってないと死ぬのか」
相も変わらず突き放すような言い方を変えないリビちゃんに少し頭にくるアトスであるが堪えて見せるマスターの為と頭で連呼し顔を笑顔に、そうスマイルは心をハッピーにするのだから。
「なぁ、少し位気楽にやらないか? 別に仲良くしようって訳じゃねぇよ。だが今は組んでるんだ、ギスギスしてちゃ士気に関わる」
そう言いながら、アトスは周りに引き連れている他の魔物たちに視線を巡らし再びリビちゃんを見る。
士気が落ちているし雰囲気も良くないのは本当の話だ。実際、他のホブゴブリンやオーク達はこの雰囲気で気が気ではない。
このまま奇襲でもされようものなら直ぐにやられてしまうだろう。
「引き合いにだすのは卑怯かもと思うが敢えて言わせて貰うが、ラビィの嬢ちゃんも仲良くするよう言ってたろ?」
思い出すのは先刻の出発前、リビちゃんの唯一の主と認めている少女の言葉だ。
『ふふん、良い機会だから皆と仲良くしなよ!』
その言葉を胸の内で反芻するリビちゃんは心の中で溜め息を吐く。
自分の使命は召喚主であるラビィの護衛であり、他の魔物と仲を縮めるつもりは毛頭なく仲を深めようが深めまいがどうでも良いと感じている。
それに今回の戦いは無理矢理連れ出された気の進まないものだったのだ、確かに自分のいる場所はダンジョンでありやって来る冒険者と言うのも自分に辿り着く前にやられるか逃げるかで退屈はしていた。
それにラビィの護衛と名を打ってはいるが特に機能した記憶は全くと言って良いほどないのだ、それを見かねて自分の主は連れ出したのだろうと理解している。
こんな遊びのような事に真剣になるつもりなどない。しかし、主の命に背くわけにも行かなかった。
「……良いでしょう。今回は協力位ならしてやろう」
「お、そうこなくっちゃな!勝ってマスターにギャフンって言わせてやろうぜ」
「私はこの程度の事に真剣にやるつもりなどない」
「へぇ、ラビィの嬢ちゃんの顔に泥塗るのか?」
「……言ってくれますね」
見え透いたの煽り、明らかに自分を挑発してきていると分かるその台詞でありその形振り構わない様な意地汚いやり方は何処かのダンジョンマスターに既視感を覚える。
容易く受け流す事など造作もないのだが黙って言われるのも癪だ。リビちゃんは受け入れることにした。
「足を引っ張れば飛ぶのは貴様の首だ」
「おおぅ、そいつは厳しいな……ま、協力してくれんなら何でも良いか」
アトス達が歩いている道はあくまでも獣道であり、村エリアの様に歩きやすく作られているものではない。
そしてリビちゃんの体格はかなりのものであり、縦一直線でない限りは誰かしらが必ず獣道から外れてしまうのだ。
そんな陣形から予測していた不安がついに実現してしまう。
道を少しそれたコボルトの魔物に木に仕掛けられた矢が作動してしまう。
思わぬ襲撃に体を硬直させるコボルトは咄嗟には動けなかった。
当たれば小さくはない傷を負ってしまうことを理解した所で矢は完全に当たる手前で黒い影によってはじき落とされる。
「何をぼーっとしている。貴様の目は節穴か」
「す、すんません……ありがとう」
「私が前では視界が狭まるだろう。殿を勤めよう」
そうしてパーティーの後方へと歩いていくリビちゃんを唖然として魔物達は見ると「何だ?さっさと進め」とリビちゃんから促され、何とも言えない空気で一行は進んでく。
後方から聳えるように佇むその鎧の圧迫感を背中に感じながら。
戦闘すると思ったら大間違いだからね!




