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最高のデートその1

まず向かったのは水族館。

電車で向かうとちょうど開館時間につくことはリサーチ済みだ。


電車で移動中、私は終始浮ついていた。

大学に通い始めて少ししか経っていないような感覚なのだ。この場所の土地勘は失っていた。

乗ったことがあるはずの電車、見たことあるはずの景色、行ったことのあるはずの場所、全て今の私にとっては初めて同然だった。


「この駅だよ。」


「えあ、うん。」


しまった、考えすぎて乗り過ごすところだった。

今日は私がリードするんだ、しっかりしなきゃ。


駅から歩くこと十数分。大きな水族館が見えてきた。ガラス張りの屋根、イルカの飼育員の姿が遠目に見えた。


『ウミノマエ水族館』

近場で大きな水族館だ。

ゲートには大きなクジラが描かれており、まるで口の中に入っていくようなデザインになっている。

受付を済ませ建物の中に入ると、海を切り取ってきたような大きな水槽が出迎えてくれた。


「でっか。何万リットル入るんだろ。」


「え、そこ?」


魚の感想じゃなくて水槽の容量なのね。

…これはデート。今は、でーと。

今の私が彼と親密になるには、これしか思い浮かばない。


深海魚コーナーに向かう彼の裾を引く。


「手、繋ぎたい。」


時が止まる。

景は鳩が豆鉄砲を食らったようなポカンとした顔で立ち止まってこちらを見つめている。

しまった、やりすぎたか。


「うん。繋ごう。つむぎ。」


彼の右手に、私の左手が収まる。

同棲し始めて初めて彼に触れた。

胸の奥から幸せが滲むように多幸感が染み渡る。


薄暗い水族館の中。

彼の隣を歩く。同じ歩幅で。同じ所へ。


クラゲのブースに着いた。

たくさんの種類のクラゲがいる。

赤いクラゲに触手がプツプツと光っているクラゲ。


彼は吸い寄せられたように、ある水槽の前で立ち止まった。


展示されていたのはミズクラゲだ。

壁一面の大きな水槽の中を何十匹もぷかぷかと浮いている。海の月と書くだけある。ぽよぽよしていて可愛い。


「景さんクラゲ好きなの?」


「…うん。1番好き。」


そう言う彼の目は、どこか遠くを見ているように思えた。


「そろそろイルカショー始まるみたいだよ。行ってみる?」


「うん!」


スタッフから雨衣を借りたとはいえ、やはり最前列は濡れた。危なかった。


景は隣で楽しそうに笑っている。

ちゃんと楽しんでくれてるかな。


館内を見回り、気づけばお昼時。


「景さん、お腹すいてない?この近くに海の見えるカフェがあるんだけど、どうかな。」


「いいね。ちょうどお腹すいてきたとこ。」


水族館から徒歩十分ほど歩いた。

『ハマベマエCafe』


カフェの中は和モダンで統一されており、ほのかに木の香りがした。

暖色の灯りととてもよく合っていた。

リサーチどおり。さすが私。


2人がけのテーブル席に対面で座る。


景はオムライス。私はナポリタンと喫茶店のプリンを頼んだ。なんとなくプリンが食べたくなった。


料理が届くまでの間に、ひとつ質問をしてみることにした。


「ねぇ景さん。私のどんな所が好きになったの。」

ここまで読んでいただいてありがとうございます。


よければコメントやアドバイス、誤字の指摘など、評価や反応をいただけると泣いて喜びます。

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