最高のデートその2
「きっかけは…笑顔」
「笑顔?」
「うん。大学通いはじめて間もない頃、友達と笑ってる君を見て、意識するようになった」
写真フォルダに残っている私はいつになく幸せそうな笑顔だった。
でも私はそれを覚えていなかった。
「俺のことを分かろうと向き合ってくれるところ。どんなこともできないなりに頑張るところ。意外と負けず嫌いなところ。それに───」
「ま、まってまって」
「お待たせしました、こちらオムライスとナポリタンと、プリンです。ごゆっくりどうぞ」
予想外の追撃に私が顔を真っ赤にしていると、ウェイターさんが料理を運んできた。ナイスタイミングだ。ゆでダコになるところだった、もう遅いのかもしれないが。
「いただきますしよ。冷めちゃう」
強引に切り上げた。
景は言い足りなそうな顔をしている。少し嬉しい。
食事を済ませ向かったのは遊園地だ。午後からは景と遊び尽くす。
景も楽しんでくれると嬉しいな。
平日の昼間というのもあり、人は少なめだった。
待ち時間は少なくて済みそうだ。
「景さん、あれ乗ろうよ!」
「う゛っ」
……なんだ今の反応。
「景さん、あれ……」
「……うん」
私が指さしたのは絶叫系アトラクション。この遊園地の看板のジェットコースターだ。
名前はアルミコウモリ200。
度胸試しで使われるくらいには怖いらしいが、詳しいことは知らない。
「まさか……絶叫系苦手?」
「いや苦手というかどちらかと言うと得意なはずなんだけどいやでもあれはやばいよ……ほんとに乗るの?」
「たしかに怖そう。でも乗れないわけじゃないよね。せっかく来たんだし一緒に行ってみようよ!」
景と紬は渋々コウモリの列に並んだ。
すぐに私たちの番になった。
震えている彼の手を握る。
「大丈夫大丈夫!死にはしないって!」
「……うん」
数分後、景の笑顔が引きつっていた理由を知ることになる。この時の自分を殴りたい、切実に。大丈夫じゃない、ばか。
安全バーを下げ、スタッフが確認して回っている。
その間にジェットコースターの線路を目で辿ってみた。あれ……?
「ねぇ景さん。高いし、長くない?」
「高いし、長い。……めっちゃ怖い。」
それでは行ってらっしゃいませ!という元気な声と共にゆっくりと動き出した。
ガタン、ガタン。
「今何メートルくらいかな」
ガタン、ガタン。
「40とか、50とか……わかんない」
ガコン。
頂上で一時停止。一体どれほど高いのか。足元が浮つく。空気が少し冷たく感じる。浮遊感。身体中の筋肉が強ばっていくのを感じる。手を握る力が強くなる。
強い刺激で記憶が戻れば御の字だな。
1周回ってそんなことを考え始めた頃。
落ちた。
「きゃああああああああああああっ!!!!」
数分後、地上にて。
「し……しぬかと思った……」
乗る前の私を叩きたい。全然大丈夫じゃない、ばか。
「あはは。そうだね。……うん。怖かった。」
私も景も、生まれたての子鹿みたい。ちょっと可愛い。
「ちょっとあっちで休まない?チュロス食べようよ」
「チュロス!いいね!」
近くのベンチに座りチュロスを頬張る。
足元の浮遊感が抜けた頃、次に向かったのは観覧車。名前はアイン・ジャパン。高さが……忘れちゃったけどかなり大きい方らしい。見上げると頂上のゴンドラが色とりどりの豆粒に見える。
「ね、観覧車乗ろうよ話したいことあるし」
「……いいよ行こう」
少し並び、赤いゴンドラに乗り込んだ。
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