表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星詠みの調律師(アストラル・チューナー)  作者: じょんどぅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/8

### 第四章:増殖する澱(おり)

### 第四章:増殖するおり


街の異変は、急激に加速していた。

『沈黙の管理官』による監視網が敷かれた影響か、それとも僕たちの音楽が世界を刺激したせいか、空から降る結晶の量が異常な速度で増え始めた。


街のあちこちで結晶が重なり合い、大きな塊となって地上の建物を圧迫する。人々の意識は結晶の重みに耐えきれず、半昏睡状態で街を彷徨う者が急増した。


『レイ、もう限界だよ。私の家の方まで、結晶の壁が迫ってる』


シノからのチャットには、震えが混じっていた。

僕の端末に送られてくる彼女の歌声も、以前のような透明さを失い、ノイズに削られて断片化している。


僕は焦燥に駆られながら、次なる楽曲のプロットを構築していた。

今必要なのは、ただの旋律ではない。結晶の増殖を食い止め、停滞した街の空気を震わせるための「衝動」だ。


僕は自分の指先が擦り切れるまで、複雑な拍子を刻み続けた。だが、音が上手く繋がらない。

シノの声が、僕の書いた譜面の端で途切れる。彼女が発するはずの「救いのメロディ」が、管理官たちが仕掛けたノイズの壁に弾き返されているのだ。


「足りない。……まだ、何も足りていない」


作曲の限界が、僕の脳裏を過る。

自分ひとりの感情だけでは、この増殖する灰色の壁を壊すことはできない。


僕は決意した。

この街の結晶すべてを、僕の脳内にダイレクトに引き受ける覚悟で、シノの「歌」の器となるための、禁断の調律を始めることを。


モニターの向こう側で、シノもまた、死を覚悟したような静かな呼吸を繰り返しているのがわかった。

僕たちは、この崩壊する街で、互いを失う恐怖と戦いながら、最後の一音を紡ごうとしていた。


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ