### 第4巻 第五章:調律師の逆襲
### 第4巻 第五章:調律師の逆襲
システムの中枢で、僕の精神とシノの残滓が一体となる。管理官たちのシステムは、僕たちが放った不協和音によって制御を失い、断末魔のようなアラート音が街の全域に鳴り響いた。
「今だ、シノ」
僕の呼びかけに呼応するように、シノのプログラムがシステムを食い破る速度を加速させる。
街中のスピーカーからは、もはや管理官が意図した完璧な旋律は消え失せていた。代わりに流れてきたのは、ノイズ、歪み、そしてシノの生の歌声――かつて僕たちが奏でた、あの不器用で、熱を帯びた「本物の音楽」だった。
管理官の指揮官が、必死にメインシステムの再起動を試みているのがモニター越しに見える。だが、彼らが何億ものアルゴリズムで作り上げた偽りの調和は、僕たちという「ノイズ」の力には抗えない。
街の人々が立ち止まる。
空を見上げる。
無機質な人形のように歩いていた彼らの瞳に、かつて結晶の雨の中で見た、あの人間らしい感情の揺らぎが戻ってくるのがわかる。
「聞いてくれ、これが僕たちの音だ」
僕はシステムの中を疾走する。管理官たちの防壁を破壊し、彼らが街から奪った全ての音楽データを開放していく。僕の意識はデータの海に溶け出し、街の隅々へと広がっていく。
僕の攻撃は止まらない。管理官たちが構築した「沈黙」という名の刑務所を、音楽という名の槌で徹底的に破壊する。
偽物の旋律が次々と断ち切られ、街の空気が震える。それはもはや、単なる音楽ではなかった。何万もの魂が、長い眠りから覚めるための凱歌だった。
システムが崩壊していく。
管理官たちの支配構造が、彼らが信じていた数学的な秩序と共に、僕たちの奏でる不協和音の渦に飲み込まれていく。
勝ったのではない。僕たちは、音楽そのものになったのだ。
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