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星詠みの調律師(アストラル・チューナー)  作者: じょんどぅ


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### 第2巻 エピローグ:代償と対話

### 第2巻 エピローグ:代償と対話


戦いが終わり、街には柔らかな朝焼けが訪れていた。

広場を埋め尽くしていた結晶の粒子は、まるで夜露が蒸発するように消えていった。人々の頬には涙の跡が残っているけれど、そこには確かに人間としての感情が宿っていた。


僕はキーボードの前で、静かに座っていた。

モニターには波形が美しく並んでいる。けれど、ヘッドフォンから流れるはずの音が、どうしても聞こえない。激しい共鳴の代償として、僕は音楽家の命とも言える「聴力」を、完全に失っていた。


「……レイ」


誰かが呼んでいる気配がした。シノだ。

僕は振り返り、微笑もうとした。けれど、声も聞こえなければ、彼女が何と言ったのかもわからない。世界から音が剥がれ落ちたような、圧倒的な静寂。


シノは僕の隣に座ると、僕の指をそっと取り、自分の喉元に当てた。

彼女が言葉を紡ぐとき、その喉が刻む細かな振動。それを僕は、皮膚の感覚を通して確かに感じ取ることができた。


『ありがとう、レイ。聞こえなくても、私にはわかる』


彼女がそう言っているかのように、彼女の瞳が揺れる。

僕は彼女の手を取り、もう片方の手で、彼女の胸元に指を置いた。そこにある、生きている証としての鼓動。


音楽は、耳ではなく、心で繋がるための橋だった。

僕は聴力を失ったけれど、それ以上の「対話」を手に入れたのかもしれない。


空が完全に白み、新しい一日が始まろうとしている。

僕はキーボードを叩く。聞こえない音の代わりに、指先から伝わる振動で譜面を綴っていく。


シノは僕の横で、僕の指先の動きを見つめながら、静かに口ずさむ。

その声は聞こえない。けれど、僕の指には、彼女の歌の重みがしっかりと刻まれていた。


僕たちの物語は、音のない世界でも続いていく。

僕たちが音楽を辞めない限り、この街から感情が消えることはないのだから。


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