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星詠みの調律師(アストラル・チューナー)  作者: じょんどぅ


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### 第2巻 第五章:先代の譜面

### 第2巻 第五章:先代の譜面


言い争ったままの僕たちに、地下の冷え切った静寂が訪れる。


シノは澱の奥へと消え、僕はただその場に立ち尽くしていた。彼女の言葉が棘のように胸に突き刺さる。僕の音楽は、ただの逃げ場に過ぎないのか。彼女の命を燃やす歌声の横で、僕は何もできない傍観者なのか。


苛立ちに任せて壁を蹴ると、脆くなっていた石壁が音を立てて崩れ落ちた。

その先には、驚くほど整然とした小部屋があった。かつてこの街で結晶を研究し、音楽で浄化を試みた『先代の調律師』が遺した隠し書庫だ。


部屋の中には、数千枚に及ぶ譜面が散乱していた。

僕は震える手でそれらを拾い上げる。そこに記されていたのは、音楽理論を超越した『術式』だった。結晶の雨を物理的に打ち砕くための旋律、人々の心に深く刻まれたトラウマを解凍するための和音……。


手記の最後には、震えるような文字でこうあった。


『調律とは、奪うことではない。二つの異なる波長を、ひとつの旋律として共鳴させること。演奏者の命を削る必要はない。二人の鼓動が同期したとき、世界は調和を取り戻す』


「同期……?」


僕は譜面に釘付けになった。

そこに記されていたのは、僕がシノを媒体として使い、彼女を消費するだけの音楽とは全く別の理論だった。僕の心臓の鼓動をメトロノームとして、街全体の感情と、シノの歌声を強制的に『同期』させる手法。


これなら、シノの記憶を削り取る必要はない。

二人の心が、魂のレベルで重なり合えばいいのだ。


「これなら……これなら、君を消さずに済む」


僕は譜面を抱きしめた。

僕たちの溝を埋める答えは、数十年前に既にここに遺されていたのだ。僕はすぐさま通信端末を開き、シノが去った暗闇に向かって、メッセージを送信した。


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