45 謁見の間にて ④
不定期投稿です。
宜しくお願いします。
「アーレン!!」
「陛下!!」
アーレンは血を吐き、崩れるようにして倒れた。
「ロシェル、フィーネの魔力を拘束して!」
「分かった!」
グレイスの指示で、ロシェルはフィーネをドーム状の聖属性の魔力で包む。
そしてフィーネの魔力は遮断された。
「な、何これ?!」
フィーネは慌てるが、そこから出られない。
グレイスはアーレンの元へ駆け寄る。
「グレイスっ、お願い、アーレンを助けて、お願いっ·····。」
マリアは涙を流しながら訴える。
「治療をします!離れて!」
グレイスの指示で、近くの騎士がマリアを抱えるようにしてその場を離れる。
グレイスはアーレンを膝に抱き抱える。
アーレンの顔は蒼白で、今にも息を引き取りそうだ。
「アーレン、しっかりして!私の魔力に集中して!」
グレイスはそう言うと詠唱を始める。
2人の下に銀色の魔法陣が現れる。
やがてその中に黒く輝く粒子が交ざり合い、アーレンの身体を包んでいく。
「アーレン、私の魔力を受け入れて。」
グレイスはそう言うと、アーレンの身体の中に少しずつ魔力を流し始める。
グレイスは謁見の間に入ってアーレンを見た時から、透視の魔法でアーレンの病巣を把握していた。
アーレン自身も、グレイスから見られている事は気づいていた。
謁見が終われば、直ぐ様別室で治療を行うはずだった。
しかし、フィーネが思いもよらず、アーレンの治療と称して魔法を使い始め、それが一気にアーレンの症状を悪化させていくのを見た。
フィーネ、あの子の魔法は治癒ではなかった。
それを追及するのは、アーレンを助けた後だ。
グレイスは意識を集中し、身体に巣くう病巣を闇の魔法で消失させようとする。
アーレンの病巣はフィーネの魔法により肥大化し破裂した為、アーレンは吐血した。
その箇所をゆっくり魔力を流しながら補修する。
そして魔力を身体中に巡らせ他にも病巣がないか確認し、見つければ消失させる。
大量に失った血液を補うべく、グレイスの魔力でアーレンを満たす。
「真実の愛を選んだのだから、マリア様を1人にしては駄目。あなたは責任を持って彼女よりも長生きしなければならないわ。」
グレイスがそう言うと、アーレンは表情を少し緩めた気がした。
1時間程経っただろうか。
グレイスによるアーレンの治療は続き、グレイスが魔法を解いた事で終了したと理解する。
その間、謁見の間にいた者達は、誰も退場しなかった。
国王陛下が心配だったからという事もあるが、一番の理由は、グレイスの展開する魔法があまりにも美しかったからである。
そして魔法陣の外に漏れだすグレイスの魔力を、その室内に居た誰もが感じており、それが心地よかったという事もある。
ナルージアは魔法陣のギリギリ近くに寄って、漏れだす魔力を堪能していた。
「グレイス。」
そう声を掛けたのは、玉座近く、アーレンの傍に控えていた、グレイスの兄のルダン·タンドゥーラ次期公爵だった。
タンドゥーラ家はルダリスタン帝国からの監視役でもある。
よってこのような場でも静観するだけで、求められない限り発言はしない。
故にグレイスがこの謁見の間に入って来てからも、その動向を見守っていた。
「お兄様·····何とか一命は取り留めました。ただ、出血量が多かった事と、身体の中数ヵ所に病巣があったので、見つけられた限りは、全て消滅させました。」
「そうか。では別室に移動させよう。王妃陛下、一旦治療は終了した様です。このままお付き添いを。」
ルダンはそう言い、マリアを同行させるべくアーレンの元へ案内する。
「グレイス、アーレンは助かったの?」
「マリア様、取りあえず確認できた病巣は消失させました。ですが吐血した分、血が足りていません。今、それを補う為に私の魔力で身体を保持させています。もう数日、様子を見させて戴ければと。それとこれを。」
グレイスは自身が着けていた魔石付きのペンダントをアーレンの首にかける。
「このペンダントの魔石には、私の魔力が込められています。これを暫く着けたままにしていて下さい。身体が回復するのに役立つでしょう。」
「分かったわ。私の魔力量が多かったら、役に立てたのに。何も出来なくてごめんなさい。」
そう言って、マリアは涙ぐむ。
「マリア様は、国王陛下の精神的な支えです。昔約束しましたでしょう?何があっても逃げ出さず、支えると。真実の愛の力をしっかり見せて下さい。」
グレイスはマリアを鼓舞する。
マリアは無言で何度も頷いた。
「どうして陛下は倒れたの?私はちゃんと治るように祈ったのに?」
ロシェルの聖属性の魔力の壁に閉じ込められ、魔力を封じられたフィーネが声を震わせ呟く。
「私を陥れるためにグレイスさんが何かしたのでしょう?酷い·····本気で治そうとしているのに。」
フィーネは泣きながらグレイスに訴える。
「フィーネ、あなたの魔法は再生でも治癒でもありません。」
「何ですって?」
「神殿は聖女と彼女を持ち上げただけで、彼女の能力を検証しなかったのですか?」
「ど、どういう事でしょう?」
謁見の間に来ていた神官長がグレイスに問う。
「そもそも何故フィーネに魔法を学ばせないのですか?手足の再生が、彼女の『祈り』という特殊な方法での発動とは言え、魔力があることに変わりはないのですから、魔法を学ばせるべきでしょう?そうすれば多くの事を会得出来たでしょうに。」
「それは····聖女様が文字も書けず、思うように教養も身に付かず。魔導師への道は早々に諦めました。それでも、身体の欠損部分を再生させる魔法は使えたのです。問題はありませんでした。」
神官長は刑に処せられるかの瀬戸際だと思っているのだろう。
言葉を選びながら、慎重に話している。
「再生の魔法という認識がありながら、病の治療をさせているのは何故です?」
「身体の再生の魔法がなかなか発動しなくなり、仕方なく病が治るように祈りを捧げてもらったのです。するとはじめは病が治癒したのです。」
「しかし治癒せず、先ほどの陛下の様に、逆に体調を崩した者もいたでしょう?」
「そ、それは確かに····。しかし聖女のせいだとは決まっていません。偶然、治療が間に合わなかったと判断しました。」
「ではヴァーバル公爵は、聖女フィーネの力は何だとお考えですか?」
神官長とグレイスの間に入る様に聖女擁護派のラルス伯爵が問い掛ける。
「先ほどのアーレン国王陛下に向けて、魔法を放ったのを見ましたが、聖女の魔法は『増幅』の能力だと思います。」
「『増幅』?」
謁見の間がざわつく。
「闇の魔力が減少や消滅の能力を有しているのに対し、聖女の使う魔力は増加、増幅の能力を有しています。ですから、陛下の身体の中にあった病巣が、聖女の魔法により肥大化し、破裂しました。あの魔力は使い方を間違えれば、死を招くでしょう。まあ、魔力を持つ者、全てに言える事ではありますが。」
「·····で、では今まで聖女が治療し、体調を悪化させた者は·····。」
「ええ、陛下と同じ現象が身体に起こったのでしょう。」
「····な、何という事か····。」
神官長ほか、傍で聖女の治療を見てきた聖騎士も顔を青くしている。
「ただ単に、魔法使いと言わず、魔導師と言うのは、自身の魔力の可能性とそれを生かす魔法を研究する者の総称です。魔力を持つ者を国が保護するのは、学びを与え、魔力暴走を起こさず、その魔力をコントロールさせる為。学ばせず、秘匿し隠すは、周りの者達を危険に晒す行為だという事を知るべきです。」
グレイスの言葉を聞いて、皆息をのむ。
下手したら自分達が、フィーネの魔法でアーレンの様な状態に追い込まれたかもしれないからだ。
「で、では今後はそのように聖女を教育致します。」
「無理です。神殿の者達にその様な事は出来ないでしょう。全て神の祝福などと言って、持ち上げる事しか出来ない組織に任せる事は出来ません。まあ、それ以前に最早罪人ですが。」
「貴重な魔力である事に変わりはありません!極刑はやり過ぎです!まだ利用価値はある!」
聖騎士のマルスが叫ぶ。
「もう魔法で再生は出来ていないのでしょう?それこそ神が見放したのでは?それに代わりはいます。まあ、フェアノーレには居なくなるかもしれませんが。」
「公爵は本気で聖女の極刑をお望みか?」
「それこそ愚問です、ラルス伯爵。私は目の前で家族の様な従者や騎士達の命を奪われたのですよ。その中にあなたの家族が居たのなら、同じ様に聖女に対して寛大な気持ちで居られるでしょうか?」
ラルス伯爵も押し黙る。
「罪人に対して減刑を言えるのは、被害者自身かその家族だけです。周りが強要する事ではないと私は考えています。」
「ルダリスタン帝国はヴァーバル公爵の意見を尊重する。フェアノーレ王国側がどう判断するかで、我々の今後の対応も変わると思われよ。」
静まり返った謁見の間に、スルーガ卿の声が響く。
「また、先程の聖女の魔法で国王陛下の命が危険に晒された事も、罪として上乗せせねばならないだろう。」
兄のルダンも付け加える。
「·····確かに聖女には今までの功績もあるだろう。しかし、それ以上にその罪も重い。」
その声に気がつけば、アーレンが護衛騎士とマリアに支えられながら身体を起こしていた。
「「陛下!」」
「ああ、多少ふらつきはあるが大事ない。ヴァーバル公爵のお陰で身体が楽になった。公爵に命を救われた、礼を言う。」
グレイスは微笑み頭を下げる。
「今の公爵の魔法で、闇の魔法が病気の治癒に有用だと証明された。国内の闇の魔力を持つ者達を集め、病気の治癒魔法を確立させよ。一部の者はルダリスタン帝国への留学を進めよ。また聖女の魔法で病気が悪化した者を神殿に集め、治癒に力を尽くせ。それから、聖女フィーネ、聖騎士団隊長マルス·スタード、そして神官長の3名は極刑を言い渡す。公爵、他に希望はあるだろうか?」
アーレンの問いに、グレイスは暫し考える。
「その者達の刑の執行ですが、勇者ダリウス·ノーラ卿にお願いします。」
グレイスのその言葉に更に場は静まり返り、視線はダリウスに向かった。
言われたダリウスは目を見開く。
そして、そう言ったグレイスの表情は、一切の感情を読み取れない程、冷たいものだった。
数ある作品の中から見つけて、読んで下さり有難うございます。
もし宜しければ、暇潰しに、現在連載中の「貴方のためにできること~ヒロインには負けません~
https://ncode.syosetu.com/n0868hi/
も読んで頂ければと思います。宜しくお願いします。




