44 謁見の間にて ③
不定期投稿です。
宜しくお願いします。
「な、何という事だ····。まるで魔族だ。」
マルスはグレイスを見て動揺を隠せない。
「赤目だけならまだしも、古竜を宿しているのは、やはり危険なのではないでしょうか?聖騎士達がこの事を憂慮して、公爵を襲撃したのでしょう。公爵は然る場所で、行動を監視する必要があると存じます!」
マルスは強い口調で進言する。
「助ケラレテオキナガラ、随分身勝手ナ事ヲ言ウンダナ?」
気がつけば、ナルージアが音もなくマルスの傍に立っていた。
「なっ?!」
「グレイスヲ勝手ニ拘束スルナンテ許サナイカラ。」
ナルージアの目が赤く光る。
「しかし、最早魔族ではないか?古竜に自我を奪われたらどうするんです?魔族は生かしていてもろくなことがない。」
「オマエ達、ソノ魔族ニ助ケラレタンダヨ?」
ナルージアはそう言うと、自身の変化を解く。
たちまちナルージアの頭には角が現れた。
「ま、魔族だあああ!」
誰かが叫ぶ。
ダリウスや他の聖騎士がナルージアに構える。
謁見の間は悲鳴に包まれる。
恐怖で謁見の間を出ていこうとする者も現れる。
「静まれ!」
アーレンの声が、玉座から飛ぶ。
皆が動きを止める。
「ヴァーバル公爵、その者の説明を。」
「はい、国王陛下。」
アーレンとグレイスの落ち着いた声を聞き、皆静まり返る。
「この者は、先の戦いで、我らに従属する事になりました。彼と私は血の契約を結んでいます。彼を襲わない限り、彼が人間を襲う事はありませんのでご安心を。それに彼は魔族討伐に参加し、上級魔族も倒しています。」
「魔族を従属させたなど·····。」
謁見の間がざわつく。
「我らルダリスタン帝国は、ヴァーバル公爵の元、この者の監視を行っている。この者が言うように、魔族討伐にも問題なく参加している。そしてここ最近見られる、魔族復活の謎を共に解き明かしている所だ。」
「ソウソウ。俺トグレイスハ仲良シダカラ、チャント協力シテルヨ。タダ、グレイスニ危害ヲ与エルナラ容赦シナイカラ。」
ナルージアは、マルスや他の貴族を見渡して、不適な笑みを浮かべる。
「私や上層部の者は、あの者の事は承知済みだ。今は何故、滅んだとされる魔族が生きていて、眠りから覚めたのか、その謎を解かねばならない。魔族が従属しているなら、今後の討伐にも有用だろう。騒ぎ立てるのは得策ではないと心得よ。」
アーレンの言葉に皆了承の意を示す。
「今後については、明日ルダリスタン帝国の討伐隊を交え、情報交換と対応を協議したいと思う。今夜は討伐成功を祝おう。それから聖女、聖騎士、神殿関係者を牢へ連れていけ。追って刑を下す。」
アーレンはそう言うと、別室へ下がろうとする。
「待って下さい!まだこの子の呪いを解いてもらってないわ!」
騎士に連行されようとするフィーネがグレイスに向かって叫ぶ。
「先ほどスルーガ卿が言った言葉を聞いていなかったの?赤目は呪いじゃない。子供が似てないのは公爵には関係ない。本当に勇者との間の子なのかも含めて、何なら魔法でその子を鑑定してあげようか?血の繋がりの有無はすぐ確認出来るよ。」
今まで黙っていたロシェルがフィーネに言葉をかける。
言われたフィーネはロシェルの顔を見て一瞬その動きを止める。
「あなた·····エルフなの?初めて見た。何て綺麗な顔なの?」
「エルフかどうかは分からないけど、この耳は隔世遺伝だ。」
「あなたはどうしてここに居るの?あなたもグレイスさんに捕まったの?従属させられたの?」
ロシェルがグレイス共に立ち並ぶ姿に何故か悲しげな表情を向ける。
「聖女様って本当に失礼ですね。僕は魔導師として、公爵を師として仰いでいる。それに僕は公爵の夫でもある。」
「夫だと?」
夫という言葉に反応したのはダリウスだった。
「グレイスさんの夫ですって?似合わないわ。あなたはエルフの血を引いているのでしょう?もしかして聖属性の魔力を持ってるんじゃないの?私も調べられた事があるわ。」
自分は牢へ連れて行かれる所なのにも関わらず、フィーネは目を輝かせてロシェルを見つめる。
周りも、聖属性の魔力と聞きざわめく。
「ヴァーバル公爵、私共もその者には興味があります。エルフの血を引き、失われた聖属性の魔力を持っているのですか?」
エルファト侯爵が問いかける。
グレイスはスルーガと視線を交わした後、ロシェルに頷く。
「はい、僕は聖属性の魔力を持っています。発現して間もないので、多くの魔法を使える訳ではありませんが。」
「聖属性の魔力····失われた魔法。」
皆の視線がロシェルへ集中する。
「あなたもきっと私と同じで神様に愛されているのよ。あなたはそちら側の人間じゃないわ。私と一緒に居ましょう。」
フィーネは両手を前に突きだし、ロシェルを求める。
「一緒にしないで下さい。先ほども言いましたが、私はヴァーバル公爵の夫です。私の幸せはグレイスと共に居ること。邪魔しないで下さい。」
ロシェルは強い言葉でフィーネを牽制する。
「でも危険だわ。夫になったとしても無理矢理でしょう?そんなの離婚してしまえばいいのよ。私は聖女よ。あなたを私の夫の1人として迎えてあげる。私の夫となれば聖騎士があなたも守ってくれるわ。」
「·····聖女以前にあんたの様な女は嫌いだ。頭も悪いし性格も悪い。ノーラ公爵は一体この女の何処が気に入って選んだのか、理解に苦しむよ。悲惨な経験をした可哀想な女?そんなのこの世には五万といるよ。力を与えたのは本当に神様なのかな?神様でも邪神かもね。人を不幸に誘い込む。身体を再生したらしいけど、その人大丈夫かな?病を罹ってない?」
「な、何を言うの?皆元気よ。邪神じゃないわ。変な事言わないで。」
「変な事言ってるのは君でしょう?今から刑を言い渡されるのに、人に、離婚して自分の夫になれって言ったり。君の願いを叶えようとして死んだ仲間の事はどうしたの?もう忘れちゃった?普通なら、自分の軽率な言葉で聖騎士を死に追いやったと、反省して、死を悼んだりするんじゃないの?僕にプロポーズしてる時点で頭おかしいよね?」
「ギャハハハハハ!ロシェル、オマエ不敬罪デ殺サレルカモヨ。」
「え?だってこの女罪人でしょ?不敬なら、グレイスに散々無礼を働いている、この聖女とあの聖騎士が罰せられるべきだ。」
「同感だ。わがルダリスタン帝国は、討伐の功労者たるヴァーバル公爵に対する不敬罪で、この者達に極刑を望む。」
ロシェル、ナルージアに続き、スルーガも追い打ちをかける。
「極刑って何?処刑される事?どうして?貴重な聖女なのに?私はまだ聖女としてやれるわ。·····誰か、治してあげる。ここで、皆の目の前で私の能力がいかに貴重か見せてあげる。······そうだ、王様····。陛下、陛下、前は調子が悪かったから上手く出来なかったけれど、今ならやれます。」
フィーネはそう言って騎士を振り切り、玉座の前まで走り出ると、跪きアーレンに向かって祈りを捧げる。
アーレンの身体がほんのりと光を帯びる。
刹那、アーレンは咳き込み始め、胸を押さえた。
「フィーネ、やめなさい!!」
グレイスが叫ぶ。
しかしフィーネは聞く耳を持たず、更に強く祈りを捧げた。
するとアーレンはとうとう膝をつき、口から大量の血を吐いた。
「アーレン!!」
傍にいたマリアの叫び声が、謁見の間に響き渡った。
数ある作品の中から見つけて、読んで下さり有難うございます。
もし宜しければ、暇潰しに、現在連載中の「貴方のためにできること~ヒロインには負けません~
https://ncode.syosetu.com/n0868hi/
も読んで頂ければと思います。宜しくお願いします。




