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闇の聖女は愛を囁く  作者: 藍沢ユメ
38/93

38 ナルージア

不定期投稿です。

宜しくお願いします。

何処もここも死体だらけで血だらけで、屋外だというのに生温くこもった血の匂い。


あーつまらねぇな。


いつも俺達魔族を見下すエルフは何処にいった?

魔王様を手伝え?

何で俺が?

俺と戦えって言ったのにあいつは逃げたからな。

あー面白くねぇ。

あの魔法でも使うか。

暫く寝て起きたら世界もそれなりに変わっているだろう。

じゃあお休みー!

俺が目覚めた時、魔王、お前が生きていたら、倒しにいってやる。

せいぜい人間を殺して遊んでろ。





『·····起きろ·····起きろ·····起きろ·····』


何だよ、うるせぇな。


『·····起きろ·····起きろ·····起きて全てを破壊しろ·····。』


全てを破壊?

何が起こった?


目覚めてみれば、魔族の気配はほとんどしない。

あれっ?魔王の奴はどうした?

奴の気配が全くしない。


遭遇する人間を食べながら、たどり着いた大きな屋敷。

おそらくこの辺りを治めている領主のものだろう。

あれ?ここも人間か?

人間が滅びるどころか、魔族が滅びてないか?

まあ、俺が生きているから滅びはしていないが。

捕まえた人間から、喰らう前に話を聞く。

何だって?大昔に魔王は倒された?

ということは人間が世界を支配しているのか?

バカだなぁ、あの魔王、人間に負けたのか?

しかし、多くの魔族を葬るとは、人間も馬鹿にできないな。

だが、皆平和ボケしている。

俺はまだろくな魔力を回復した訳でもないのに、対抗できる奴がまるで見当たらない。


そうやって、魔力を持っている奴を探しては喰べた。

ふぅ·····大分回復したかな。

ああ、寝過ぎたな。

誰が俺を起こしたか分からないが、こんな世界、俺が本気になれば、あっという間に破壊できる。

あの頃よりも、もっとつまらない世界になってしまったな。

さぁどうしようか·····。

取り敢えず人間の治める国全て破壊しよう。

それからまた考えればいいか。


そう思っていた矢先。

その日現れた人間の軍隊。

魔力持ちが多くいるようなのに、何でここまで来るまで気付かなかった?

ああ、認識阻害の魔法を使っていたか。

面白い、少し頭がキレて骨のある奴がいそうだな。


こうして戦闘が始まった。

結果·····魔力を身体に纏わせ斬りかかる者が2人。俺に斬撃を次々と繰り出す。なかなかの速さと魔力を乗せた剣の重み。

そして魔法で俺を拘束する黒い仮面を着けた黒いローブの魔導師·····声を聞くに、女なのか?

マジで?!

長く生きた魔導師の様に緻密に計算し展開された魔法陣。

おまけにこの魔導師、竜の魔力が混じっている。

この女本来の魔力と竜の魔力が混じり合って1つになっている。

強力で解除出来ない。

すげぇ·····強いな。····いや、感動している場合じゃない····くそッ···って俺死ぬのか?それは嫌だ!

ちょっとちょっとちょっと待てぇぇぇぇ!

え?血の契約?ってあれかぁ·····うわぁ、人間のくせにエグい事を。

それに闇の魔法か····。

身体が崩壊していく。

こうなると再生させるのに相当時間がかかる。

くそぅ·····負けだよ、負け。

はぁ······俺を隷属させるんだ。面白い奴ならいいな······。





いい香りがする·····。


『おはよう、起きて。』

『·····誰だ?』


手足を動かそうとするが·····動かないか····。

取り敢えず目を開ける。


目の前には透き通るような水色の瞳。

流れる様な銀色の髪。

美しい·····。

一瞬言葉を失った·····。

身体は銀色の魔力で充ちていて·····いや、何か違う。何かいるな。


『あんた誰?』


そう問い掛ければ、女は手元にあった仮面を見せる。


『え?お前、俺を倒した魔導師?』

『ええ。』

『俺、隸属させられたよな?』

『そうね。』

『ふ~ん····。これからお前の一生、俺は仕える事になるのか?』

『そうね、今のところは。あなたは殺戮が大好きみたいだから、放っておくと人間を喰べてしまうでしょう?』

『·····そうだな。』

『古文書には、「魔族は息をするように嘘をつく」と書いてあったわ。だからごめんなさい、余程の事がない限り、血の契約の魔法は解けないと思っておいて。』

『あんたの考えは概ね正しいな。それじゃあ、あんたが死ぬまで一緒だな。結婚でもするか?』

『ふふ、私を口説いているの?』

『顔は悪くないだろう?それにお前は知らないだろうが、俺はかつての魔王の腹違いの弟だぞ。実力は奴より上だった。奴が俺との戦いを逃げたんだ。』

『そうなのね。聞くことが沢山ありそうね。でもあなたと結婚はしないわ。』

『何で?』

『私には婚約者がいるの。それに今のあなたの状態は分かってる?』

『俺の状態?』

『そう、身体は半分無いから。』

『え?』


そう言われて頭を少し持ち上げ下半身に目をやると、心臓から下と片手が消失していた。


『なんじゃこりゃああああああ!』


そういえば、意識がなくなる前、身体の一部が灰になってたな····。


『私にプロポーズどころじゃないのよ。まず身体を元に戻さなければ。魔族は魔力が回復すると、身体も再生できるのかしら?』

『そうだな·····おい、聞きたいことだ聞いて、後で灰にするなんて事しないよな?』

『魔族ならしそうよね。』

『·····。お前は魔族じゃないよな。こっちはもう隸属してるんだ。そんな事しないでくれよ。お前に協力するからさ。俺が傍にいれば、楽しい人生間違いなしだ。』

『まあ、協力はしてもらうわ。では、時間が勿体ないから始めるわね。』


そう言って女は俺の額に手を置いた。

俺の額が暖かくなる。

そして女の魔力が流れ込んでくる。

うわ·····何だこれ·····気持ちいいな·····。


女の銀色の魔力が俺の身体を巡る。

失われていた身体が徐々に再生していくのが分かる。


この気持ち良さは初めてだ。たまんねぇ····。


どのくらいそうしていただろうか。

女の手が、俺の額から離れていった。

目を開けると俺の身体は元通りになっていた。


凄い魔力量だな。

俺が完全回復していたとしても負けていたかもしれない。


『立てるかしら?』

『ああ。それでどうするんだ?』

『まずはお風呂に入りましょう。それから食事ね。人間を喰べるのではないわよ。人間と同じ食事を取ってもらうわ。それからでも魔力は回復出来るはずよ。』

『·····分かった。それで、あんたの名前は何ていうんだ?』

『私の名前はグレイス。あなたは何と呼ばれているの?』

『ナルージアと呼んでくれ。』

『分かったわ、ナルージア。これから宜しくね。』


そう言って、グレイスは手を差し出した。

ナルージアはその手を握り立ち上がる。


何だか····悪い気はしないな。


こうしてナルージアと人間との生活が始まった。


◇◇◇


「グレイス様。」

「なあにロシェル?」

「あの魔族、グレイス様にずっとついてくるんですか?」

「そうね、私の護衛だもの。」


ナルージアは浅黒い肌に金色の短髪につり上がり気味の目元。

そこから覗く深紅の瞳はどこか挑戦的だ。

頭にある2本の角は魔法で隠した。

元着ていた服はほぼ消失したので、騎士服を着ている。

ナルージアは回復してからというもの、ほぼグレイスと行動を共にしていた。

グレイスには護衛としてドイナーが付いていたが、その代わりをナルージアにさせて、ドイナーをヴァーバルの騎士団長に任じる事にした。


『なぁ、そこのエルフ。お前本当に転生したんじゃないのか?』

『エルフと呼ぶのは止めて下さい。僕の名前はロシェル。グレイス様の婚約者です。』

『お前が婚約者?顔は整っているが、それだけだろう?』

『僕は聖属性の魔力を持っている。失われた古代の魔法でグレイス様を守ります。』

『ふーん·····。』

『ロシェル、古語を話すのが上手になったわね。この短期間で凄いわ。』

『まだ防御魔法だけなので。早く色々な魔法を使える様になりたいんです。それでもし今練習している治癒魔法が会得出来たら、フェアノーレ王国での魔族の討伐に連れていってもらえませんか?』

『フェアノーレに?』

『ええ。あの国にグレイス様を1人で行かせたくないから。』

『ロシェル?』

『イリナ皇女殿下が、グレイス様の過去を色々教えてくれました。グレイス様には誰にも手出しはさせない。』

『ロシェル·····。』


ああ、ロシェルは私とダリウスの話をしっているのね。

知っているからついてくるなんて ·····。


ロシェルの真っ直ぐな気持ちに嬉しくなるグレイスだった。


『ああ、やっぱり似てるよな、お前。本当に転生したんじゃないのか?』

『先ほどから何?ロシェルがどうしたの?』


何か探るように、グレイスとロシェルの会話を見つめていたナルージアが、そう問い掛ける。


『こいつ、1000年前のエルフの王にそっくりだぞ。』


『『はい?』』


ナルージアの突然の発言に、一瞬固まるグレイスとロシェルだった。


数ある作品の中から見つけて、読んで下さり有難うございます。

もし宜しければ、暇潰しに、現在連載中の「貴方のためにできること~ヒロインには負けません~

https://ncode.syosetu.com/n0868hi/

も読んで頂ければと思います。宜しくお願いします。

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