[第四章:さぁ。奇妙なる災いを祓いましょう]その5
[災獣]たちは巨鳥を、その背の者達を見る。
あたりに浮かぶ数十に及ぶ[災獣]の目に映るその姿に、それらは一つのことを思う。
(排除する…!)
[災塊]の災いの力によって生まれた自分達。
生きる者への不幸をもたらす自分達。
ただそのためだけに存在する自分達。
だからこそ、彼らは死に損ないの邪魔者に敵意を向ける。
…その中、巨鳥に乗る男が、光纏う剣を掲げる。
『!』
剣が纏っていた光があたりに拡散する。
同時、一瞬空間が切り裂かれたかのように裂け目を生じさせて歪む。
その、直後だ。
『オォ…』
『オオ!!』
頭上、遥かな天空に、一つの存在が現れる。まるで、隠れ場所を強制的に暴かれたように、それはいきなり出現する。
『オオ!!!』
多数の漆黒の球体によって形成されたそれは、この地に満ちる災いの源だ。
そこだけ地震でも起きているのかと錯覚するほどに震え、浮いているそれの姿が、完全に晒されてしまっている。
[災獣]達は、それに激怒する。
視線の先、この災いを祓い、平穏を蘇らせようとする者を許しはしないと、一つの悪意は強く思う。
…そうして。
『オォォォォォ!!』
多数の咆哮が、災いの渦中にある街に、響き渡る。
その直後、災いと、災い祓う者達の、最後の戦いが始まった。
▽―▽
「アレが、ここの[奇災]を起こす、[災塊]…!」
ミコはツバサの上で、空を見る。
[トーソ]内の一番高い、三十階建ての建物すら超える高高度に、活性化した[災塊]は存在している。
決して、近くはない。だが、いけないことはない。
なにより、行かない選択肢などない。
彼女らは空へと昇り、全ての原因を叩く。それ以外、選択する気などないのだ。
故に。
「二人とも」
眼下では[災獣]達が咆哮し、ミコ達を目指し、一気に移動を開始する。
多数の漆黒が蠢くその光景を視界に入れながら、ミコは言う。
「伯父さんの言う通りに、[災獣]の相手はせず、ひたすらに」
宣言する。
「頑張ってあそこへ、行くなのですね…!」
「ああ」
『じゃな…!』
ミルとイルカネが言い、巨鳥が嘶く。
「必ず、解決を成すなのですね!」
瞬間、ツバサが大きく翼を動かす。
それにより、彼女らは遥かな空へ向かっての移動を開始する。
『させるかぁ!!』
ミコ達が選んだのは、坂を上るような動きでの、高速の上昇だ。
そのために、ツバサはまず、速度を上げるために前方へ向かって飛び始める。
[災獣]達はそれを妨害し、墜とすため、彼女らへと高速で接近してくる。
『落ちなさァァァァイイ!!』
多数の獣が、ミコ達に迫る。
「…全力回避、なのですね!!」
『のじゃー!』
ツバサは再度嘶き、速度を上げる。
[災獣]達は、ミコ達をかみ砕こうと大口を開けて迫りくる。
それをツバサは、二度目であるが故に多少慣れたミルの手によって、避けていく。
決して、正面からぶつかることないよう、また決して速度が落ちぬよう、ほぼ一直線に進む。最低限の回避動作と、ミコとイルカネの迎撃で以て[災獣]の攻撃を避け、そのままそれらを引き離す。
巨大な翼がはためくたびに、その飛行速度は上がり、同時にその巨体は上へと向かい始める。
『させるかぁぁぁ!!』
それを見た[災獣]達は叫び、避けられる場所がないように壁をつくり、そのまま突っ込んでくる。
ミコはそれを見、
「イルカネ、吹っ飛ばしてなのですね!」
「いいだろう!いつもの棒が使えないのは残念だがな!」
ミータの発言からして、先の拠点内にありはしたようだが、状況的に持ってこれなかった棒のことを、イルカネは言う。
だが、だからと言って弱気になることはない。
その手には、ミルに由来するもう一つの武器がある。
故に、彼はそれを構え、近づく獣たちの壁を見据える。
「倒すのは難しくてもな…吹っ飛ばすことなら、十分にできる…!」
偽市役所のときにやれたのだから、可能なのだとイルカネは叫ぶ。
瞬間、壁が来る。
「そりゃぁぁ!!」
イルカネが剣を斜めに振りかぶった。
それは壁の一部を担っていた[災獣]を複数叩き飛ばし、壁に穴を開ける。
そこを、ツバサは高速で突き抜ける。
『きしゃま…!ぐわ!』
直後、叩き飛ばされたうち、一番近かった一体の[災獣]が、ツバサに食らいつこうとしてくる。
だがそれを、フライパンを両手に持ったミコが殴って怯ませる。その隙にツバサは完全にその個体を突き放し、徐々に先端を上にすることで、さらに高度を上げていく。
『きしゃぁぁぁ!!』
『死ねぇぇ!』
壁に参加していなかった[災獣]達は、それを邪魔しようとする。
だが、一秒経つごとに飛躍的に加速していくツバサに、それらは徐々に対応できなくなっていく。
ミコ達が一切相手にせず飛んでいくことで、獣たちは食らいつく術を失っていく。
「このままなら…!」
邪魔をする[災獣]が徐々に減り、高度も順調に上がり始めたことで、ミコは思わずそう言う。
…だが。
「!?なんか、来るぞ…!?」
を警戒する中、下の街並みを一瞬目に映したイルカネは、目を見開いてそう言う。
それにミコが反応し、下を見た瞬間だ。
「これは…!」
彼女らは見る。
[トーソ]という都市のありとあらゆる建物から、何かが飛び立ちつつあるのを。
そしてそれは…、
『生首じゃと!?』
「[奇災]による…!」
壁や窓を破壊し、飛び立つのは、住民の[マガヒー]の生首だ。
首の半ばよりジェット噴射をする無数のそれらが、街中から一斉に空へと向かって登っていく。
しかも、その行く先は明らかに、上昇するミコ達であった。
「[災獣]の意思か…!」
イルカネの言葉に、ミコはジージとミータが伝えた、[災獣]の意志が[奇災]を制御できるということを思い出す。
「[災獣]の意思が制御して、私達を…!」
ミコは引き離しつつある[災獣]達を見る。
もはやその身で追うことを諦めたらしいそれらは、不気味な笑みのようなものを浮かべ、頭を空へと向ける。
それに呼応するように、生首たちは軌道を調整しつつ、速度を上げ、一気に昇っていく。
『キシャァ!!』
[奇災]を制御し、住民に対し一斉に、災いを振りまくことで、彼らの首から上を離陸させる。そして、それらをミサイルとして使うことで、ミコ達を撃墜しようと、[災獣]はしている。
ミコ達はそのことを悟る。
「速い、なのですね…!」
ミコ達の眼下、多数の生首は高速で空へと上がっていく。
腐ってもジェット噴射だ。
既に十分な速度を得つつあるミコ達に、生首たちはその軽さと加速力に由来する速度で以て、確実に近づいてくる。
…もちろん、そこには[マガヒー]達の意志などは関係ない。
[災獣]の都合によって、彼らは唐突かつ勝手に武器にされ、彼らを救おうとする者への攻撃手段にされてしまっている。
それに、胸の内で軽い嫌悪感を抱きつつ、ミコはイルカネ達とさらに上昇する。
『速度を上げておるのに…!』
ミルは悔し気にそう言う。
だが、無数の生首との距離は一秒ごとに確実に近づく。
最も先に飛び立った、百に達する第一陣がミコ達を撃ち落とそうと迫る。
「ミル来るぞ!なんとか避けて見せろぉぉぉぉ!」
『くぅぅぅぅぅ!!やってやるのじゃぁぁぁ!!』
「っ!」
来る。
悲鳴を上げる生首が下方より飛来、その意思とは関係なく、ミコ達へ一斉に襲い掛かる。
『しっかり掴まっておれぇぇぇ!!』
ツバサは行く。
ミルが必死に操ることで、出来る限りの加速をし、上を目指す。
同時に、その巨体は何度も宙で回転し、ときには宙返りもすることで、生首の弾幕を何とか回避しようとする。
だが、それだけでは足りない。
圧倒的な弾数が、彼女らを地に墜とそうと、次々と襲い掛かってくる。
「…なの、ですね…!」
ミコは迫る幾らかをフライパンで跳ねのけることで退ける。
しかしそれも、今持っているフライパンがすぐにダメになることですぐにできなくなる。
『のじゃぁぁぁぁぁ!!』
「くぅぅぅぅぅ!」
「くそがぁぁぁぁぁぁ!!」
ツバサは飛ぶ。飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ。
必死に、空の[災塊]へ至るため、全力で生首の弾幕を回避し、時には掠りつつも、墜落だけはせぬよう、上を目指して飛んでいく。
「っぅぅ!!」
『ぎゃはははは!!』
墜とされずに上昇はしつつも、生首が幾つも掠っていくことで、ミコ達は徐々に傷ついていく。
服は裂け、顔を庇う腕には打撲が生じ、ときには出来た傷口から血が流れすらもする。
それに対し、[災獣]が嘲笑うかのような声を上げるのが聞こえてくる。
(痛い…苦しい…辛い…)
中々終わらない生首の弾幕は、ミコ達の体を傷つけるだけでなく、心すらも傷つけ折ろうとしてくる。
すぐにこれから解放されたい。
そういった思いが、ミコの中で生まれもしてしまう。
…が。
(でも、私は…私は…!)
ずっと。ずっと彼女は免れてきた。
今ミサイルと化した住民たちが感じるような痛みも、苦しみも、辛さも、自分だけは免れてきた。
だからこそ。だからこそ、彼女はやると決めたのだ。
(だから…この程度のこと、耐えて見せる…!ことを成すまで…!)
ミコがそう思ったときだ。
回避のため旋回したツバサへ、三つの生首が迫る。
(避けられない…!)
別のものを避けたツバサは、それを操るミルは、直撃コースのそれに反応できない。
そして、消耗してきている今、超加速が加わっているそれらをまともに受ければ、撃墜は必至。
彼女らの全ては終わってしまう。
それを直感的に理解し、同時、ミコは思う。
(…そんなの、受け入れられるわけが、ないなのですね…!)
彼女は動く。
ことを成すため、[奇災]を解決するため、必死に行動する。
「こん、のぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ミコは勢い良く、袴から別のフライパンを引き抜き、迎撃しようとする。
が、
(間に合わない…!?)
相手の接近が速い。
ギリギリで、迎撃は間に合わない。
それを悟りながらも、ミコは。
(…それでも、なんとしても…してもぉぉぉ!)
そう、強く思った瞬間だ。
「…!」
胸の内で、何かが膨れが上がるような感覚が生じる。
(これは…!)
危機的状況に、思考が加速する中、ミコは感じる。
自身の胸の内側、そこに存在する[幸塊]が力を発揮することを、理解する。
瞬間、
「…!」
三つの生首は、それぞれの主の意志によって、軌道を僅かに変える。
そしてそれらは、ミコのフライパンに吸い込まれるように斜めにあたり、そのまま弾かれ、あらぬところへ飛んでいく。
ミコはその光景を、さらに上へと飛ぶツバサの背で見、自身の胸に手を当てる。
(助けになってくれる…!)
伯父の言葉通りに、[幸塊]が働いてくれることに、ミコは喜ぶ。
同時、幸いの力と共にあることをはっきり認識したことで、その心は少し軽くなる。
(私たちが必死に頑張る限りは…!だから、頑張るなのですね…!)
「うおぉぉぉぉ!!」
『のじゃぁぁぁぁ!』
そうして、短いのか長いのか分からない時間が経ち、
「ミコ、ミル!生首は、これで終わりだ…!」
イルカネは地上を見、叫ぶ。
既に、そこから飛んできた生首は全て、その力を失い、そのまま墜落していっている。
新たに来るものは、ない。
『やっと、か…!』
「…随分、高くまで来たなのですね。だから…」
([災塊]はそう遠くない)
思い、ミコは空を見上げる。
その視線の先、決して遠くないところに、活性化した[災塊]はある。
後ほんの少し飛べば、辿り着ける。
そう認識し、三人が一瞬、ほっとした時だ。
『無駄に、やたらと、しぶといですねぇ、皆さんは…!』
『!?』
三人の前方、[災塊]との間のところに突如、漆黒の不定形の塊が立ち上る。巨大に過ぎるそれは、多数の[災獣]の集合体だ。
おぞましく蠢くそれらはすぐにある程度まとまった形を得、苛立ち共に、再度言葉を放つ。
『いい加減、死んでください…』
[災獣]の集合体が作り出したのは、巨大な、蛇の如き胴体と三つの頭を持つ、竜とも呼称すべきものだ。
頭部に、元の頭部の形の面影を残すそれは、ここまでのことで息を粗くするミコ達を、鋭い視線で見下ろす。
『災いを巻き、苦しめる邪魔をしないでください。ただちに諦め、死になさい…!』
竜は吠える。
その声量と、巨大に過ぎる体の威圧感で以て、彼女らの心をくじこうとする。
しかし、だ。
「私たちが…、諦めるとでも?」
ミコは竜を真っ向から見据え、力強い声で言う。
「私たちは必ず[奇災]を解決する!絶対に、絶対に、なのですね!」
『のじゃ!』
「ああ、金のためにな!」
一度の敗北の後、わざわざここまで来ておいて、威圧一つであっさり諦める彼女らではない。
故に、竜の声にも、威容にも怯えることなく、叫ぶ。
『ならば…死ぬがいい!!』
「行くなのですね!」
ツバサが、今まで一番力強く羽ばたく。
そして、[災塊]へ向けて突き進む。
『させるかぁぁぁぁぁぁ!!』
竜は吠え、三つの顎を以てミコ達をかみ砕こうと迫る。
「…っ!」
そのとき、ミコの胸の内の[幸塊]が力を発する。
災いの化身たる[災獣]の集合体という、強い災いの力の存在に、その源であり、今なお力を発し続ける頭上の[災塊]に対抗し、その力を解き放つ。
『避けて、見せるのじゃぁぁぁぁ!』
ミルが叫び、ツバサは旋回、回転を駆使して竜の三連続攻撃を紙一重で回避する。
幸いの力が、必死に頑張る彼女らに幸運を与え、その結果を引き寄せる。
『グガァァァァァァァァ!!』
竜は吠え、再度三つの顎による攻撃を繰り出す。
それをまた、ツバサは回避。同時、ミコは物を投げて竜の妨害をし、イルカネは回避の瞬間に剣で挑発するように切りつける。
それが何度も繰り返され、そして一向に攻撃が当たらないことに竜は激怒する。
『なぜ、何故、ナゼなんですかぁぁぁ!!何故、なぜぇぇぇぇ!!』
竜は咆哮する。
ミコはそれに、言う。
「それは、私が不幸中の幸いの特性を持つから。私たちが、幸いの力と共にあるからなのですね!」
ミコの胸にある[幸塊]。
皆が不幸の中、自分だけは幸いにしてくれるそれは今、[トーソ]中の住民が不幸な中、その原因を叩きに行くミコ達を、幸いにしてくれる。
必死に頑張る彼女らを、祝福する。
『だからどうしたっていうのですかぁぁぁぁぁ!!』
竜は絶叫し、ツバサへと無茶苦茶な体当たりを仕掛ける。
しかし、激情に駆られ、動きが大雑把になったことで、ツバサは容易にそれを容易に回避し、そのまま[災塊]を目指して一直線に飛んでいく。
『っ、死ね、いい加減、死ねぇぇぇぇ!!』
竜は急旋回。
ツバサの後を追い、竜は大口を開けて、ミコ達をかみ砕こうと全力で加速する。
それを背に、ツバサは進む。突き進む。
竜はそれに迫る。突き進む。
『のじゃぁぁぁ!!』
『グガァァァァァァァァ!!』
進んで、進んで、進んで。
進んで、進んで、進んで。
進んで、進んで、進んで。
進んで、進んで、進んで。
…僅かな時間。その経過後、完全に相手を捉えた竜は吠えた。
『終わりですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
その巨大な顎が来る。
背を向けるミコ達を砕きに、来る。
そして、彼女らが粉々になる、その直前だった。
『はぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『!!!!!』
叫び。
二つの叫びが、ミコとイルカネが発したそれが空に響き渡る。
同時、己の得物を構えた彼女らは………[災塊]に到達した。
瞬間。
『ぁぁぁぁぁぁぁ!!』
漆黒の集合体は、とてつもない力で、殴られた。
轟音が、鳴り響く。
『な…!』
これまでの加速で得た力と、地震の如き[災塊]の振動に対し、ミコとイルカネが全会場の全力を込めたこと。
それによって尋常ではない威力の一撃を受けた[災塊]は、驚いたかのように、一瞬沈黙する。
…
…
…
…
そして。
『や、やめ…!』
竜が思わず呟く中、[災塊]の地震の如き振動は急速に収まり始める。
活性化状態から沈静化状態へ。漆黒の球体群の状態変化は、一瞬にして進む。
それに呼応するように、竜の、[災獣]の体は急速に空け、形を失っていく。
『ダメ…わたしはもっと、…苦しみを…苦痛を…与えなければ…』
[災獣]の意識は、一気に消えていく。
『与えなければ…ならないのに…!』
世界に溶けるように、消える。
『全…に災…を…え…』
次の瞬間、[災獣]の姿は完全に掻き消える。
まるで、始めから何も、そこにいなかったかのように、獣たちは跡形もなく消滅した。
「…なの、ですね」
ミコはそれを尻目に、ツバサの上で息をつく。
「…やった、なのですよね…?」
ミコは[災塊]を見る。
先ほどまで、あれほど揺れていた漆黒の球体群は、嘘のように静まり返っている。
それに対抗していた胸の内の[幸塊]も静まり、その存在感は、元のように消えている。
「…」
消耗から言葉も出ない中、徐々に高度を下げ始めるツバサの上で、ミコは脱力する。
そんな時だ。
「…あれは…」
「お…」
『んじゃ…』
三人は、突如現れた光に反応する。
その光の源は空…それまで[トーソ]を覆っていた黒雲からだ。
徐々に消えていくそれらの隙間から、多少淡い色ながら、日の光が眩しく差し込んでくる。
空が、晴れ渡っていく。
「…」
まるで、災いが消えたことを示すように黒雲が消える光景に、ミコはふと、笑う。
「…やったなのですね。今度もまた」
「ああ。きっと…そうだろう。[災塊]も沈静化してるし」
『[災獣]も…消えたしの』
イルカネとミルは、疲れた声で答える。
ミコはそれに言う。
「…はい。やったなのですね。私たちはやった…」
「[奇災]を、また一つ解決したなのですね…!」
ミコの歓喜の声は、空に響く。
そして彼女らを、日の光が照らす。
「…ん、やったようだな」
傷だらけのジージは、空の姪たちの様子を、天井が壊れた建物から見る。
「無事にだな、ん…。よくやってくれた、ミコ」
そんな彼の見る先で、点のように小さいツバサは、少しずつ高度を下げていく。
光と共に、穏やかな動作と共に。
そうして、この都市を災いから救った者達は、地上へ帰還していった。




