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[第四章:さぁ。奇妙なる災いを祓いましょう]その2

 ジージは言う。

「ミコと同じだな、ん。[幸いの外界]のエゴによって発生することになった、[奇災]から皆を救うため、吾輩たちは活動している」

「…この[マガツイキ]が出来上がり、[奇災]が発生し始めてまもなくの頃…二十年近く前から、ね」

「そ、そんなに前から?」

 驚く三人に、ジージは続ける。

「そうだ。そしてミコ。吾輩があちこち飛び回っていたのも、その目的のためだ。[奇災]解決に活かすための、情報の収集をやっていたんだな、ん…」

「情報の収集?」

 ミコの言葉にジージとミータは頷く。

「ん、そうだ…。吾輩たちは各地の[奇災]の現場に行き、それについて情報を集めて続けた。ここでやっているのもそれだ。…かつてと同じように、[災塊]の密集によって起きた災い達をじっくりと見てきていた」

 そこで、ミコ達は眉をひそめる。

「…かつて?」

「だと?」

「んじゃ?」

(どういうことなのですね…?)

 ミコは、ジージがここにいることへの疑問が溶けると同時、そのの言葉に別の疑問を覚える。

 彼は今、かつてと同じように、と言った。

 それが意味するところは、以前にも[災塊]が集められ、何か災いがあったと言うことだろう。

 だが、ミコはそんな話を聞いたことはない。またそもそも、[災塊]の発見もつい二十年と少し前のことであり、それより前に今の[マガツイキ]のようなものが出来上がり、災いが多発することなど、まずありえないはずだ。

 そう思い、ミコはジージに言う。

「伯父さん。同じって、どういうことなのですね。まるで過去に、今と同じようなことがあったような…」

 その言葉に、ジージ達は当然と言わんばかりに答えた。

「そう。あったんだな、ん」

「まぁ、様々な面で規模は小さかったようだから、同じというよりは、近いものと言った方が正しいでしょうけどね」

『…』

 ジージたちの発言に、ミコ達は驚きから一時的に言葉を失う。

 そんな彼女らに、ジージは言う。

「…正確なところは不明だがな、ん…今から数百年前。[災塊]と[幸塊]が、ある者たちによって見つかった」

(…数百年前?二十年前じゃなく?)

 そう疑問に思ったことが顔に現れたのか、ミコの顔を見たミータは言う。

「…そう。数百年前よ。災いと幸い。この二つを司るこれらの塊が初めて見つかったのは、本当は数百年前。そしてその発見が、全ての始まりだった」

『…』

 ジージ達は話をする。

 自分達の行動に関わる、全ての始まりの話を。

「数百年前。今は名も残っていない者達によって[災塊]と[幸塊]…まぁ当時は別の名前だったみたいだけど…とにかくそれらは、今と似たように、偶然見つけられたわ。そして、それら存在の情報を握っていた少数の発見者たちは、あることを行った」

「あること…?」

 それに、ミータは答える。

「[災塊]の移動…一か所への集約よ」

(それって…)

 現代のある者達の存在をミコ達が連想する中、ミータ達は言う。

「…二十年前の、[幸いの外界]。今の[マガツイキ]ができる原因を作ったもの達と同じことを、かつての発見者たちは、これまた同じように、自分達が幸いであるために行った」

「そうしてだな、ん。この地では今の[奇災]とはまた違うものではあったらしいが、災いが多発するようになった」

「…そう。今ほどの規模ではなかったけれど、この地はかつての発見者たちによって」


 禍つ地となった。


「…」

 その言葉に、ミコは反応する。

(禍つ地。どこかで聞いたか…見たような…)

思うと同時、ミコの脳裏にある物体が思い浮かぶ。それは数日前、ミルをつくりだすときにミコが使った…、

(あの巻物。あそこには、確かに禍つ地と書かれていた。…しかも、あの巻物はかなり昔から伝わっているもの。そして、数百年前にここは禍つ地となっていたらしい…)

 昔からの巻物の存在、その記載内容と、伯父たちが言うかつての災い。そこには奇妙な繋がりが、一致がある。

(…一体、どういうことなのですね?)

 不思議に思う中、伯父たちの話は続く。

「でだな、ん…。そうして[災塊]の密度の上がったこの地では、災いが多発するようになっていったわけだが。そこで、動いた者がいた」

「動いた者、なのですね?」

「そうよ。発見者達だけが握っていた、[災塊]と[幸塊]の情報を何とか手に入れていたその人は、その状況を変える…災いを解決するため、この地を元に戻すために動き出した。そしてその人と言うのが」

「吾輩の、そして、ミコ。お前の先祖だな、ん」

「……え?」

 ミコは驚きで、目を見開く。

「ど、どういうことなのですね。先祖って…」

「そのままの意味よ。数百年前の[災塊]集中、それに伴う災いに対峙した人はジージやあなたの父親、それにあなたの先祖なのよ」

「……」

「そして。その名も残らない先祖の存在が、今の状況の全てに繋がっているわ」

「…今の状況の全て、だと?どういうことだ、それは」

 驚きですぐに言葉を出せなかったミコに代わり、イルカネが問いを放つ。

 ジージが、それに答える。

「…吾輩たちの先祖。その人はかつての、閉鎖が発生するほどは[災塊]が持ち込まれなかったこの地で、災いの解決のため、色々なことをした。[災塊]を叩いて災いを鎮静化させたり、な。そして最後には、事態の原因の発見者達を相手取って戦い、勝利したんだな、ん。その後、その人は僅かな仲間と共に移動させられた[災塊]を元の場所へ戻し、それから…」

「[災塊]と[幸塊]の情報と、その発見に繋がった[リーチュ]の情報が書かれた全てを、地下に埋めて封印したのよ。二度と同じ、あるいはもっと酷いことが起こらないように、かつての発見者たちが眠る地に、ね」

 だが、とジージは言う。

「…今から二十年と少し前だな、ん…。それらが眠る小さな遺跡が、運悪く掘り起こされてしまった。そして、そこに封じられていた[災塊]と[幸塊]を露わにする[リーチュ]が、内容を確かめる調査のために実行された…」

 その言葉に、ミコとイルカネは目を見開く。

 そして、二人は言う。

「まさかそれで…」

「そうよ。それらによって、[災塊]と[幸塊]の存在は再び知られることになってしまった。そして、後は誰もが知る通り、[災塊]の大規模な移動が行われ、[マガツイキ]が出来上がってしまったのよ」

「…そんな、経緯が」

(今の世界の状況に私の先祖が関わっていたとは。正直、驚きなのですね…)

 中々に壮大な話に、ミコは混乱しつつも、徐々に頭の中を整理して、情報を飲み込んでいく。

 それを、ミータの最後の言葉の後、二十秒ほどかけて行い、ミコはほっと息をつく。

 ジージは姪のその様子を見つつ一呼吸置く。それから、彼は言う。

「さて、だな、ん。ここまで、吾輩たちの先祖がやった、一つのことについて話したわけだが」

「はい、それは分かったなのですね」

 情報を飲み込み切ったミコに、ジージは笑って言う。

「実はだな、ん。先祖が勝った後にやったのはそれだけじゃなかった」

「なのですね?」

 首を傾げるミコに、ジージは続ける。

「吾輩たちの先祖は、ただ情報を封印しただけじゃない。そもそも[災塊]と[幸塊]は世界の一部である以上、いつかはまた、別の形で見つかり、同じようなことになる可能性がある」

 ジージが続く。

「だからこそ、先祖は吾輩たちにあるものを残した。いつか同じか、より酷いことが起こった時、災いに、その原因である存在に触れられるようにし、それらを中心に起こる事態に相対するためのものを」

「原因に触れられる…。っ、それってもしかして…」

 ミコは、先も思い出したものを再度思い出す。

 それに、ジージとミータは頷き、言う。

「そうだ。吾輩たちの神社に伝わる、あの巻物。あそこに書かれた[災塊]、さらには[幸塊]の存在も暴く道具をつくりだすあの[リーチュ]は、今のようなときのため、用意されたものだ」

「そしてそれによって、[災塊]に触れられる道具たる存在を作り出し、その力を使うことこそが、唯一の、[奇災]解決の手段よ」

「だな、ん…。そして、ミコはその[リーチュ]を実行し、見事と[奇災]解決の手段を得た。だからこそ、この都市に来たんだろう?」

「確かに、なのですね。解決の手段を手に入れたからこそ、私たちはここに来た」

「でしょうね。あなたは…いえ、あなた達は手段を間違いなく持っている。誰がどの役割かは分からないけれど、あなた達と言う一単位が、私たちの希望を持っていることは、疑いようがなかった」

「だからこそ、吾輩たちはお前たちを助けたりと、色々とやったわけだな」

「…なるほど、なのですね」

 ジージ達は、ミコ達が[奇災]解決の手段を持っていると確信し、非常に重要な存在と認識していた。故に、このままではやられる彼女らを纏めて助け、食事を振る舞って元気づけもした、ということだろう。

「なるほどの。儂と言う道具と、使い手のイルカネの存在…解決の手段ありきで、ミコがここに来たからこそ、か」

 基本知らない情報ばかりだったためか、それまで黙って話を聞いていたミルは、自分達がされたことを振り返りながらか、そう言う。

 ミータはそんなミルの言葉を聞き、言う。

「あら。やっぱり、あなたが[リーチュ]による道具ね。ミコは当然違うし、男の子の方は、自前で武器持ってたり、色々違う感じだったしね」

「んじゃ。儂が道具で、こっちの外界出身のイルカネが儂の力を使うもの、使い手じゃよ。使い手の話、分かるか?」

「ええ。それはジージ経由で把握しているわ。なるほどね、役割は分かったわ」

 初対面故に、ミコ以外の役割をはっきりとは知らなかったらしいジージ達は納得の様子を見せる。 

 そこで、ふと疑問を抱いたミコは、二人に言う。

「ちょっと、いいなのですね?」

「なんだ、ん…?」

「何故伯父さん達がミル達を助けたのか、それに、家のあの巻物がどうしてあったのか、あんな前書きがあったのかも、わかりました」

 ただ、とミコは言う。 

「…どうして伯父さんたちはあの巻物でミルみたいな存在をつくらなかったなのですね?そうすれば、確実に、早く[奇災]の解決ができたのに。わざわざ私たちを待つなんて必要は…」

「ん、あ、それか。それはまぁ、簡単な話だ」

 ジージは言う。

「その[リーチュ]、内の家系でかつ若い少女が自らの意思でやらないと成功しないんだな、これが」

「え?」

 初耳の情報である。

「…そういうこと、巻物には一切書いていなかったなのですけど」

「それはそうね。なにせ、今ジージが言った条件は悪用を防ぐための、秘密のものだもの」

「悪用防止?」

「そうだ。ほら、これもまた[災塊]の存在を暴くものである以上、悪用すれば、昔や二十年前と同じようなことが実現できしてしまうんだな、ん。だから、それを防ぐため、今言った条件を追加し」

「代々家の長…今代はジージにのみ、過去の出来事全ての情報含め、伝えられてきた。だからこそ、今まで悪用はなかったわけね」

「なるほど?…じゃぁ、私が前に[奇災]の解決を望んでいる時、勧めたのは…」

「吾輩たちの家系の、若い少女が自らやる意思を見せていたからな、ん。だからその背を押した。そうしないと、吾輩たちは[奇災]解決の手段を手に入れられなかったからな。正直、嬉しかったぞ、自分からそう言う方へ言ってくれて」

「そういうことだったなのですね。分かりました」

 ミコは以前の伯父の様子に納得する。

 そこで、イルカネが言う。

「一つ聞きたいんだが」

「ん、なんだ?」

 イルカネはミルを指さして言う。

「こいつは[リーチュ]でできたらしいが。ならこいつが変態に出来ているのはなんでだ。[リーチュ]に変態にできあがる内容でもないとそうはならんだろ」

「ああ。それは勿論、変態が出来上がるようになっているからだ」

「…は?」

 イルカネはあんぐりと口を開ける。

「伝わっている範囲の話だが、例の先祖、どうやらなかなかの変態でもあったらしくてな。だからこそ、[リーチュ]でできるものが変態になるよう下ネタを仕込んだらしいな、ん…。後神ということになっているのは遊び心とか」

「…。…なんちゅう、迷惑なことを…」

 イルカネは頭を抱える。

 そんな彼の手に、ミルはニヤつきながら二の腕を押し当てる。

 イルカネは一瞬で赤面した。

「ちなみに、悪用防止の条件が若干変なことになっているのも、先祖の趣味だとかいう話もあったわね、ジージ?」

「そうだな、ん。まぁそういうわけだ。おかげで今まで吾輩たちができたのは、いずれ巻物の[リーチュ]を、ミコがやってくれるようにことが運ぶのを祈りつつ、いざそうなったとき、その助けとなる情報を集めるだったわけだが」

 ジージはにやりと笑う。

「今、こうして、ミコは例の[リーチュ]成功させ、道具は作り出され、そしてその使い手も、[奇災]解決を望むミコについている。…だからこそだな、ん…」

 ジージとミータは頷きあう。

 そして、三人を見て言う。

「今こそ。吾輩たちが集めた、[奇災]に関する情報を、お前たちに与えよう。唯一[奇災]を解決できる力を持つ、お前たちに」

「…[奇災]解決のため、再び挑むと言うのなら、ね」

「再び」

 あの、謎の“漆黒”がついた[奇災]に挑む。

「…勿論、そのつもりなのですね。二人は?」

「そうじゃな。このままやられっぱなしではおられまい」

「当然だ。でなければ、金が手に入らん」

「…ふふ。どうやら、全員やる気のようだな、ん」

 ならば、とジージは言う。

「与えよう。…さぁ、始めようじゃないか、ん。この都市に渦巻く災いを祓うため

の話を、な…」

 その言葉に、ミコが力強く頷いた時であった。

『やらせ、るとでも…?』

 エコーのかかったその言葉に、全員が身を固くする。

 同時、ジージ達がいるのと反対側の扉が粉砕される。

 その直後、現れたのは。

『…邪魔者は、排除する…』

 ジージ達の存在を察知し、その場所を探っていた“漆黒”であった。

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