↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の鏡は知っている 〜やられっぱなしの気弱令嬢、毒親と不実な婚約者をガラス越しに公開処刑いたします〜  作者: しの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/30

第7話 冷徹なる共犯者

証拠は集まりつつあった。

しかし、これらをただ公表するだけでは足りない。

相手は現職の貴族と、その息のかかった悪徳商人。地方の裁判所に持ち込んでも、握りつぶされる恐れがある。


必要なのは、教会の権威にも、地方貴族の圧力にも屈しない、中央の絶対的な「法の執行者」。


翌日、私は「実母の墓参り」と称して、一人で王都の中央神殿へと足を運んだ。

みすぼらしい平民のようなフード付きの外套を羽織り、向かったのは神殿の奥にある貴族専用の法務記録所。


そこに、男がいた。


黒い法官服に身を包み、書類の山に向き合っていた青年。

ヴィンセント・フォン・ラドクリフ侯爵。

若くして王立最高裁判所の首席判事代行を務め、「情実を一切挟まぬ冷血の天秤」と恐れられる男。


「……何の用だ。ここは一般の陳情を受け付ける場所ではない」


ヴィンセントは顔も上げず、冷ややかに告げた。

銀髪を後ろで撫で付け、銀縁の眼鏡の奥から覗く藍色の瞳は、刃物のように鋭い。


私はフードを外し、静かに一歩前へ進み出た。

気弱な令嬢の声音は、どこにもなかった。


「陳情ではありません、ラドクリフ閣下。……極上の告発案件を、持ち込みに参りました」


ヴィンセントの眉が、わずかにピクリと動いた。

彼が顔を上げた瞬間、私は懐から取り出した一枚の硝子板を、彼の机の上に静かに滑らせた。


そこには、「真実の反射鏡」から転写した、義母と闇金業者の裏契約書、そして偽造委任状の全容が、鮮明な光の文字となって浮かび上がっていた。


「……これは?」


ヴィンセントの藍色の瞳が、驚愕で見開かれた。


「アンバーク子爵家の財産横領、ならびにランカスター伯爵家による殺人予備・冤罪工作の証拠です」


私は冷徹に、寸分の狂いもない論理で告げた。


「来週の王宮大夜会にて、彼らは私を毒殺未遂の罪で断罪する予定です。……閣下。法の手続きに従って、彼らを一網打尽にする罠に、一枚噛んでいただけませんか?」


冷血の裁判官が、初めて眼鏡の位置を直し、私を値踏みするように見つめた。

その薄い唇に、獲物を見出した獣のような、残酷で美しい笑みが浮かんだ。


「……面白い。詳しく聞かせてもらおうか、アンバーク令嬢」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。