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魔法の鏡は知っている 〜やられっぱなしの気弱令嬢、毒親と不実な婚約者をガラス越しに公開処刑いたします〜  作者: しの


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第29話 新しい朝

事件から一ヶ月後。

アンバーク子爵邸のサロンには、心地よい朝の光が差し込んでいた。


かつて薄暗く淀んでいた屋敷は、徹底的に清掃され、磨き上げられた窓ガラスから光が満ち溢れていた。

贅沢三昧の家具はすべて競売にかけられ、代わりに機能的で美しい調度品が整然と並んでいる。


「当主様、領地の開墾計画書でございます」


新しく雇い入れた真面目な家令が、書類を差し出してくる。


「ありがとう。……うん、治水工事の予算配分、完璧ね」


私は真新しい執務机でサインをした。

身に纏っているのは、仕立ての良い上質な若草色のシルクドレス。

胸元には、あの日と同じ銀の手鏡。しかし、その鏡面はもう二度と、他人の醜悪な嘘を映す必要はなかった。


コンコン、とノックの音がして、扉が開いた。

公務の合間を縫って訪れたヴィンセントが、花束を抱えて立っていた。


「おはよう、我が麗しき子爵」


「おはようございます、ヴィンセント。今日も裁判所はお忙しいのではなくて?」


「君の顔を見るためなら、どんな激務も二十分で片付けられる」


男は当然のように私の背後に回り込み、細い肩を抱き寄せて額にキスを落とした。

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