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第26話 テラスの乾杯
夜会の喧騒を離れ、私は風の吹き抜けるテラスへ出ていた。
夜空には満天の星が瞬き、王都の街並みが眼下に広がっている。
冷たい夜風が火照った頬を撫でる。
カツ、カツと、迷いのない革靴の足音が近づいてきた。
振り返ると、グラスを二つ持ったヴィンセントが立っていた。
黒い法官服の襟元をわずかに緩め、その整った美貌に、見たこともないほど柔らかで穏やかな笑みを浮かべている。
「……見事な劇だったな、子爵」
「閣下のお膳立てがあってこそですわ」
私は差し出されたシャンパングラスを受け取った。
今度は、毒も濁りもない、澄み切った黄金の美酒。
チリン、と二つのグラスが澄んだ音を立てて触れ合った。
「胸がすくような勝利だ」
ヴィンセントは手すりに寄りかかり、夜景を見つめた。
「貴族院の腐敗した古狸どもが、君の鏡の前に手も足も出ずに震え上がる様は、ここ数年で最も痛快な見世物だったよ」
「私の我慢の対価としては、お釣りが来るほどでしたわ」
私が微笑むと、ヴィンセントの藍色の瞳が、夜風に揺れながら私をじっと見つめてきた。




