第13話 仕組まれた招待状
大夜会の当日の朝。
アンバーク邸の食堂に、思いがけない「闖入者」が現れた。
王室の紋章が入った豪奢な封筒を携えた、近衛の伝令官だった。
「アンバーク子爵家、クララ令嬢へ。王宮大夜会へのご臨席を賜りたく、王太子殿下より直々の招待状をお届けに上がりました」
食堂が静まり返った。
パンを口に運ぼうとしていたガートルードの手が止まり、エリスはフォークを取り落とした。
「な……王太子殿下から、直々に……!? クララに!?」
ガートルードが立ち上がり、引き攣った声を上げる。
伝令官は冷ややかに一瞥した。
「先代アンバーク子爵の遺徳を偲び、正統なる後継者であるクララ令嬢の出席を求めるとのことです。……欠席は許されません」
伝令官が去った後、サロンは修羅場と化した。
「なぜよ! なぜあの愚図に直々の招待状が来るのよ!」
エリスが足を踏み鳴らし、泣き叫ぶ。
しかし、ガートルードの目は、すぐに別の邪悪な光を帯びて細められた。
「……いいえ、エリス。好都合よ」
「え……?」
「あの娘が会場にいれば、その場で現行犯として告発できるじゃないの。王太子殿下の御前で毒殺未遂を暴かれれば、あいつは修道院どころか、一生地下牢から出られない大罪人よ。……私たちの計画は、さらに完璧になるわ」
エリスの顔に、下品な笑みが戻った。
「そうね! あのみすぼらしい格好で、大勢の貴族の前で恥をかかせて、衛兵に引きずり出させてやるわ!」
私は二人の後ろで、怯えたように肩を丸め、招待状を抱きしめていた。
(ヴィンセント閣下、手回しが早すぎますわ)
伏せた睫毛の奥で、私の唇が歓喜に震えていた。
舞台の幕は、すでに上がり始めていた。




