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魔法の鏡は知っている 〜やられっぱなしの気弱令嬢、毒親と不実な婚約者をガラス越しに公開処刑いたします〜  作者: しの


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12/30

第12話 鏡の間の設計図

大夜会の前日。

私は再び、王都の中央神殿の裏手でヴィンセントと合流していた。


停車した黒塗りの辻馬車の中。

ヴィンセントは、一枚の巨大な羊皮紙の図面を座席の上に広げていた。


「これが、明晩の舞台となる王宮『鏡の間』の平面図だ」


縦五十メートル、横二十メートル。

壁面には三十枚を超える長大なヴェネツィアン・ミラーが嵌め込まれ、天井からは無数のクリスタル・シャンデリアが吊り下げられている。光の屈折と反射を利用した、王宮で最も華麗で、最も豪奢な大広間。


「完璧な会場ね」


私の唇から、感嘆のため息が漏れた。


「ああ。これほどガラスと鏡が密集した空間は他にない」


ヴィンセントは眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。


「君の『真実の反射鏡』の出力で、この広間のすべての鏡に同時投影することは可能なのか?」


「手鏡の魔力核と、シャンデリアの主クリスタルを一度共鳴させれば、可能です。広間全体が、一つの巨大な幻灯機になります」


「結構だ」


ヴィンセントは冷酷に笑った。


「国王陛下ならびに王太子の臨席も確定した。さらに、ランカスター伯爵の不正融資に怒りを燃やす貴族院の重鎮たちも、最前列の席へ誘導してある。……逃げ場は一切ない」


「ありがとうございます、ヴィンセント閣下」


私が頭を下げると、ヴィンセントは不意に手を伸ばし、私の顎を指先で軽く持ち上げた。

手袋越しに伝わる、冷たくも確かな体温。


「明日は、君自身が泥を被る役回りで始まる。……耐えられるか?」


「泥を被るのは、十七年間ずっとやってきたことですわ」


私は男の藍色の瞳をまっすぐに見つめ返した。


「ですが明日被る泥は、敵を全員道連れにして地獄へ叩き落とすための化粧ですもの。一秒たりとも苦にはなりません」


ヴィンセントはわずかに目を見張り、それから低く、喉を鳴らして笑った。


「……恐ろしい令嬢だ。味方でよかったと、心から思うよ」

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