権能
ドカーン!
「ふがっ!」
轟音と衝撃が家全体に響き俺は目を覚ます。
次に聞こえて来るのは、大天使ケフィリアとグリートの怒号である。
「朝です!起きなさい!」
「貴様、死にたいらしいな。外に出ろ!」
時刻は午前6時30分。
だいたいの人は起きてくる時間でもあり実害が無いかと思いきや、念の為とグリートの部屋を見に行くと壁にポッカリと大きな穴が空いていた。
「はぁ・・・・・・」
朝から憂鬱な気分でその場を後にして1階に降りる。
破壊したのはグリートであるが、発端はケフィリアでもある。
2人が外から戻って来ると床に正座させる。
「何が言いたいか分かるよね?」
「私は悪くない」
「貴女が起きないのが悪いのですよ」
「貴様は人それぞれに生活のリズムがあるのを知らないのか?迷惑だろうが」
邪神が天使に説教する姿は他で見られないだろう。
ただ、ケフィリアがやって来ての3日間でこれが毎日続いている。
「2人とも悪いから。ケフィリアさんには今言われた通り、各々自由な時間に起きても良いとウチではなってると説明しましたよね」
「うっ、ごめんなさい」
「で、グリートは一々壁を壊す必要は無いと思うんだけど?」
「コイツが直すから問題ない」
「そう言う問題じゃないんだよ」
「そう言う問題だろ」
「言う事聞かないなら、オヤツ抜きの刑にするよ?」
「はっ、それがどうした」
「1ヶ月」
「なっ!貴様、人の心が無いのか!」
オヤツ抜きにしただけでこの言われようである。
「分かったなら今日だけにしてあげる」
「チッ、分かった分かった」
「あの邪神グリートがこうも簡単に・・・・・・」
オヤツの時間はグリートが何気に楽しみにしている時間だからである。
「ケフィリアさんは壁をすぐに直して、明日からはやめて下さいね?」
「はい、ごめんなさいでした!」
説教を終えて壁を直すのを見にいく。
初日と同様にまるで時間が戻るかの様に壁が直っていく。
「1個聞いても良いですか?」
「はい?」
「ケフィリアさんのその力って何なんですか?魔法陣が無いので魔法では無いんですよね」
「これは権能の力で戻しているんですよ」
「権能ですか?」
「ご存知無いのですか?グリートが居るのでてっきり」
そんな話は聞いた事が無い気がする。
「権能とは天使1人1人に与えられる魔法とは別の力です。私に与えられたのは時の権能ですね」
「つまり壊れた所の時間を巻き戻しているんですか?」
「そう言う事です!」
それはかなりのチート能力ではないだろうか。
そう思い口にするが、彼女は首を横に振る。
「大天使の私に出来るのは1週間以内の物に限ります。それ以上経過した物は無理ですし、人や動物など生きた物には使えません」
「それでもなかなか凄い能力ですよ」
「えへへ、そうでしょうか」
「天使にそれぞれ与えられるのなら、グリートにも権能があるって事?」
「当然だろう」
「へぇ〜、どんな権能?」
「あれじゃないですか、破壊の権能!ピッタリです」
「なんだ貴様、バカにしているのか?」
正直な所一緒な事を考えたが、なだめて改めて聞く。
「癒しの権能だ」
「「えっ?」」
「まっ、地上に追放される時に剥奪されたがな」
「意外すぎる」
「癒しの権能って、天使の中では1番人気の力ですよ。それを貴女が?」
天界でもそんな俗な事をしているのかと思う。
「そもそもなんだけど、地上に降りられないのに権能っているの?」
「権能だけは地上に向けて使う事が出来る」
「人々の祈りを聞いて私達で対応出来るものは権能を使い、難しければ神が対応するのです」
「と言っても天界が地上の為にやる時は、世界が危機に瀕した時だけだ」
「グリートみたいな存在が現れたらって事?」
「そうだ」
「そんな誇らしげにしないで下さい」
「ふん、直したのならもう出て行け。お前が居たら部屋が臭くなる」
「はぁー?私臭くないんですけど!」
2人はまたケンカを始め、取っ組み合いになりそうだったが何とか止める。
この2人が仲良くなる日は来るのだろうかと、この先が思いやられるのであった。




