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答えは手の中に

黒馬車の横で幌を広げて、タケシはまた木を削っている。

「タケシさん、今度は何ですか?」商会職員だ。

「おう、行商どうや。キッチンカーうまいこといっとるか?」

「はい。作戦成功ですよ。やっぱり試食って人集まりますね」

タケシは木くずを寄せて、木箱にポイッとほおる。ソージキのスライム箱は、結局ゴミ箱になって、中でスライムが木くずをモニョっと食べた。

「カツミさんのスパイス塩も、露天商が興味持ってくれてて。タレが出来たらそれも欲しいって言ってるから、クレスに今作ってもらってます」

「そっかー」

「曜日決めて回ることにしたんで」

「他のもんは?」

「籠とかミニカートとかは出てますよ。クッションもいいみたいですね。日用品が強いですね、おもちゃ系はイマイチ」

「あー。しゃあないわな、使い方わからんやろし」

「あ、保冷箱もね、評判いいんです。使ってるの見せてるからかな。納豆用のサイズ、工房に増やしてもらってます」

「やっぱスライム最強か.......」

「まあエサがゴミですからね」

「もう1隊作ってもええで」

「そうですね、もうちょい足伸ばして1泊するのもありかな」

「うん。計画立てて」


カリカリカリカリ......木を削っていると、ボイルがやって来た。

「タケシさん。ライトこんなんです」

手に取ってみる。

「お。出来たか。ええやん。テストはしたな」

「はい。バッチリですよ」

「量産できるか?」

「そうですね......1日3個....慣れたらうんと早くなると思います」

「じゃあ選任ライン作ってやらせて。必ず動作確認はお前がやれよ」

「わかりました」


カリカリカリカリ

「タケシさん。もらったリボンで、デザイン通りに編み込んで見たんですけど......」

「おー。可愛いやん」

「ちょっとのことで、こんなに可愛くなるなんて、驚きました」

「うん。ええな。そや、クーハン作ってよ」

「クーハン?」

「これっくらいのさ........」

手で大きさを示して、簡単な絵を地面に書いた。

「赤ん坊入れるねん」

「赤ん坊のベッドですか?」

「これから増えるやろしな」

「ちょっと崩れないようにしないといけませんねー。3日あれば」

「重さかかっても持ち手外れんようにできる?」

「はい。底から繋げて....大丈夫です」

「うん。頼むわ」


カリカリカリカリ

「タケシさん。試食してください」

クレスの職員だ。

「これ、森になってる実で作ったジャムと干したやつです」

「うん」ジャムをさじで取ってペロンと舐める。

「お、甘酸っぱい。香りええなぁ」

「スライムゼリーのソースにもいいでしょ」

「絶対密よりこっちやな」

干したのを口に放り込む。

「あ、甘味増してる。これめっちゃええ」

「でしょ。ただ水分多くて乾きにくいんですよ」

「網に広げて干してるんやろ」

「はい。時間かかるとカビるんでね。薄くしてます」

「ん?ちょい待ってや.......」

「.......」

「ええの思いついた。待っとって、そや......ペータ呼んできて」


カリカリカリカリ

「タケシさん、何ですか?」

「あ、ペータ。ちょっと紙とペン取ってくれ」

スライム箱に蓋をして紙を広げる。

「こんな感じのな.......」

ペンでサラサラ書いていく。

「んで、かるーに風で回るようにして。ほんでここにピンチぶら下げて」

「何になるんですか?」

「風力乾燥機」

「??」

「ほれ、サッサと作れ」


カリカリカリカリ

ーー全然進まん。まあええか。

ボチボチで。

結局のとこ、魔法いらんやんけ。



数日後、タケシはまたミナセに帰った。

クーハンとジャムを持って。

クレスの工房の外には、干し果物の細い帯がクルクル風に吹かれて、甘い香りを振りまいていた。





「カツミー。これに合うクッション作ってくれー」

「あ、クーハン出来てるやん。リボン入れてるん。可愛いわ」

「ヒューイ、図面の続きしよかー」

「あ。だいぶ出来てます」

「え?」

「わからないとこは、職人さんに聞きました」

「どれどれ、見せてみ」

紙を差し出すヒューイ。

「お。よう書けてる。けどー、ここと...ここな.......」

「わかりました。直してきます」

「うん。あと日除けも付けるから。畳めるやつ」

「畳める?」

「教えたるから」

「はい!」


馬車工房に行くと、着々と寝台馬車の作業が進んでいた。

「あ、タケシさん」デザイン担当の職人だ。

「ちょっと待っててくださいね」と持ってきた数枚の絵。

「お貴族様なら、飾り金具とかの種類、選べる方がいいでしょ」

屋根飾りや車体の彩色など、数種類ずつ描いてある。

「お。これええやん。サンプルこの絵で出せるな」

「はい。組み合わせ次第でいくらでも見た目かわりますよ」

「さすがガッポガッポやな」

ニヤッとする2人。

「今、内装の方も作ってますから」

「やるなー」

後ろでは、ガッポガッポとつぶやきながら、作業が進んでいた。



「タケシ、いいかい」

「ルークか、どないした」

「サラディアで捕まえた奴ね。貴族との繋がりが確認されたから。農民のフリをして火をつけようとしたみたいだ。よく防いだね」

「あそこに火?ありえん」

「ああ、父もカンカンだ。人として狂ってるって」

「あの焼け跡.......俺は忘れん」

「自分でトラブルまくんだよ、ああいう奴って。もう我慢ならないって父が言ってるから、かなりの厳罰になる」

「そっか」

「攻撃魔法の使用制限はしてるんだけどね」

「魔法って、便利なようでそうでもないな」

「うん。魔道士じゃないとうまく生かせない。だから父は君を大事にしてるんだ。魔法に頼らずに新しい物を作るから。それってすごく平等でしょ」

「あーでも、あの赤石は助かってるで」

「守りはね。だってそれも、攻撃されなけりゃ必要ないんだよ」

「ミナセは神様おるから、魔法なんて考えることなかったんよなー」

「うん。どこも、ここみたいになったらいいんだけどね」

「そうやな。スライムボールの配備だけは先にやろ。防災防災」




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